標準理論はこれまでの高エネルギー物理学の集大成である。標準理論では、
標準理論のゲージ対称性:SU(3) x SU(2) x U(1)
によって、物質粒子のあり方と力のあり方が決まっている。
物質粒子
物質を構成する基本物質粒子は3世代からなるクォークとレプトン。これらの物質粒子には、それぞれ量子場が対応する。電子には電子場、uクォークには uクォーク場と言った具合だ。
物質粒子 = クォークとレプトン(3世代):J=1/2
力の粒子
物質粒子の間に働く強い力、電磁気力と弱い力をまとめた電弱力は、いずれもゲージ理論の枠組みで正確に記述できる。強い力は SU(3)、電弱力は SU(2) × U(1) ゲージ対称性から導かれるゲージ力だ。
強い力の力の粒子はグルーオン、弱い力は W 粒子と Z 粒子、電磁気力は光子が力の粒子だ。
これらの力の粒子は、全てスピン 1 を持つゲージ粒子。力の粒子にも各々量子場が対応する。標準理論の世界像は、この宇宙は物質粒子であるクォークとレプトン、そしてそれらの間に働くゲージ粒子から出来上がっており、そこで起こる知られている全ての現象がこれらの基本粒子の間の相互作用で説明できるというものだ。
力の粒子 = ゲージ粒子:グルーオン (g)、W、Z、光子 (γ):J=1
ヒッグス粒子
しかし、物質粒子とゲージ粒子だけでは世界は説明できない。実際、ゲージ理論によればゲージ粒子は質量がゼロでなければならないが、これは W と Z が陽子の 100倍もの質量を持つという実験事実と大きく矛盾する。
実は、標準模型のゲージ対称性は、物質粒子の質量も禁止している。ゲージ対称性と実験事実の矛盾を解消するために導入されたのが新しい場、ヒッグス場だ。
標準理論ではヒッグス場が真空に充満することで質量が生み出されると考える。これは未だ全く検証されておらず仮説に過ぎない。実際、ヒッグス粒子はスピンがゼロ (J=0) だが、J=0 の基本粒子は一つも発見されていない。この仮説を検証するのが現在の高エネルギー物理学の最重要課題である。
質量を生む粒子=ヒッグス粒子:H(LHC で発見か?):J=0
標準理論にこっそり導入された新たな力
実は、標準理論は、先に述べた四つの力以外の新しい力をこっそりと導入している。
そもそもヒッグス場が凝縮して真空がヒッグスの海になるためには凝縮力が必要。その凝縮力がヒッグス粒子同士の間に働くヒッグス力 である。
また、ヒッグスの海と物質粒子がぶつかって質量が生まれるためには物質粒子とヒッグス場の間に力が働かなくてはいけない。この力は、湯川博士が核力を説明するために導入した中間子による力と同じ数学的な性質をもっているので湯川力と呼んでいる。
これらの新しい力は、ゲージ力と違ってその存在の理論的必然性が全く理解されておらず、また、実験的にも全く検証されていない。これらの力の解明なくして質量生成の謎を解くことはできない。
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