WMAP 衛星による観測を始めとする宇宙マイクロ波背景輻射の観測結果から、宇宙のエネルギー組成が明らかになってきた。
驚くべきことに、私たちの宇宙は、その約 73% が暗黒エネルギーと呼ばれる真空のエネルギー、約 23% が暗黒物質で、知られている通常の物質によるエネルギーは、わずか 4% に過ぎないことが判明したのだ。
真空がゼロでない正のエネルギーをもつと宇宙は加速膨張する。これは遠方の超新星爆発の観測で確かめられており、その観測値は宇宙マイクロ波背景輻射の観測結果と一致する(2011 年のノーベル物理学賞)。
宇宙のエネルギーの約 73% をしめると言うととんでもなく大きな量だと思うだろうが、実は理論値と比較すると桁違いに小さい。
実際、真空を満たすとされるヒッグス場による真空のエネルギー密度の推定値は、観測値の実に 1060 倍にもなる。全く理論と観測が合わないのだ。
暗黒エネルギーの謎は、未だ全く手がかりのない状態にあると言える。
一方、暗黒物質の存在には、銀河の回転運動や銀河クラスターの衝突の観測から、その存在の確かな証拠が見つかっている。
暗黒物質の密度の観測値(23%)をもとに、かなり一般的な仮定のもとに暗黒物質の質量を推定すると、ILC で対生成可能なエネルギー領域にある可能性が高いとの結果が得られるのだ。
暗黒物質の候補はいろいろ考えられているが、その正体は未だ謎のベールに包まれている。最有力候補は一番軽い超対称粒子だ。
予言どおり ILC で生成できれば、その性質を詳細に調べ上げ、暗黒物質の正体を突き止めるられるだろう。
暗黒物質は一番軽い超対称粒子か? ILC で調べる!