2009,9/3のLXeTPC (TXePET) 打ち合わせのメモ原稿

日時:9月3日、木曜日、午前10時より
場所:先端計測開発棟会議室
出席者:宮島、東、田中(秀)、三原、田内

以下、メモ(敬称略)です。ここで、Q(質問)、A(答え)、C(コメント)です。

今回、レビュワーの宮島さんに出席を頂いた。

TPCプロトタイプ試験の進捗状況、田内

ファイル: パッドの配置図( pdf ) PMTシグナル (pdf) ; TPC -PAD シグナル(α線トリガー, pdf) (宇宙線トリガー, pdf)

先ず、今回の液化・精製循環過程からシンチレーション光量の飽和、そして、α線の波高の飽和までの経過を下のように簡単に示した。

4/24 15:04 チェンバー内真空引き開始
4/27-30 3回の真空build up試験、最終到達真空度=1.4E-04 Pa
5/2 12:15 ガス相循環精製開始(流量4L/min)
5/10 16:52 宇宙線電荷シグナル見える
5/20 17:40 液相循環精製開始(流量1L/min, PMT1&2 シグナル波高飽和確認後)
5/22 14:44 α線電荷シグナル見える; 20mV程度(Post amp=OKEN 704-3B, E=2kV/cm )
6/29 17:15 α線電荷シグナル 100mV w/o LPF
7/21 16:34 α線電荷シグナル w/o LPF, 100mV@ch1, 120mV@ch2 (ORTEC 571,572, peaking time=6us)

上のように、ガス相循環精製をシンチレーション光量が飽和するまで続けて、それを確認後に液相循環精製に切り替えた。その2日後にα線シグナルを確認し、さらに、約40日後にα線シグナルの波高が飽和したと思われる。α線シグナルが安定に見えるようになる前に、3回、その波高の減少が見られた。1回目は全く見えなくなり二日後に再び現れた。

TPCは、グリッド無し、1cmギャップ(ドリフト)、添付図のように4つのパッドを読み出している。ch1とch2は、JFET, feedback用のコンデンサー(1pF)と抵抗(100MΩ)をパッド用のプリントボード近くに設置してあり、ch3とch4は直接ケーブルでフィードスルーに接続されている。また、ch1にはテストパルス入力用のコンデンサー(2pF)と抵抗(50Ω)がプリントボード近くに設置されている。この組み合わせはJFET等のノイズへの影響/効果を調べるために決められた。α線ソース(直径5mm、200Bq)は、4つのパッドにシグナルが届くように、カソードのほぼ真中に接着されている。プリントボードからフィードスルーまでのケーブル長はどれも50cm程度である。

4chのPreamp (A250)はチェンバー外のフィードスルー近く(30cm以内)に設置した。Post (shaping) ampは、OKEN 704-3B、ORTEC 571, 572, 570, 575 である。宇宙線データはORTEC製4台が用いられた。 そのpeaking timeは575以外は6usであり、575は最大値の3usであった。1cmドリフトに約5usecかかるので、575は60%程度電荷量(α線シグナル)が少なくなると予想される。

ガス相循環精製開始からシンチ光量の時間変動測定による液体キセノンの純化過程での減衰係数の決定等は5月21日のmeetingで東により報告されている。また、α線による電荷シグナルとシンチ光量のドリフト電場強度依存性の測定は7月9日のmeetingで藤井により報告されている。 したがって、ここでは、宇宙線データを主に説明する。

宇宙線用のトリガーはPMT1と2のシグナルのdiscriminatorの閾値をα線より大きく設定して行った。ch3とch4でのPMTシグナルからのクロストークを小さくするために、それぞれのHVを出来る限り小さくした(550Vと500V)。その時のdiscriminatorへの入力シグナルをここ(jpeg)に示した。同時に、200nsecのケーブルディレイを通したADC(2249W)への入力シグナルもここ(jpeg)に示した。後者は前者の約半分である。閾値は-61.7mVとした。また、α線トリガーには閾値を最小の-25mVとした。宇宙線とα線のトリガーレイトはそれぞれ1/分、140-190/秒であった。

添付のPMTシグナルにはそれぞれのトリガーでの二つのシグナルのADC カウント分布(ADC1/PM1, ADC2/PMT2)を示した。1ページはそれぞれの一次元分布で明確な分離がわかる。2と3ページはそれぞれのトリガーでの相関プロットを示している。ともに線形相関を見ることが出来る。

TPC-PADシグナルのスコープ写真をここに(jpeg)示した。 ch1とch2ははっきりとα線シグナル(波高100mV程度)が見えるが、ch3とch4では大きなノイズ(±100mV程度)に埋もれてしまっている。  これより、明らかに、JFET, feedback CとRはパッド近くに設置した方がよいことがわかった。

次に、α線トリガーによるTPC-PADシグナル分布を添付ファイルに示した。1ページ目はPADのch1から4のそれぞれの波高の一次元分布である。2と3ページに、ch1と2、そして、ch3と4の波高の相関分布をプロットした。ch1と2ではα線による分布とペデスタルとのよい分離が見られる。また、α線シグナルの相関はなく、これら二つのpadをまたぐものはほとんどない。ペデスタル分布のσはノイズの大きさを示している。ch3と4ではスコープ写真から予想されるようにノイズにα線シグナルが埋もれているが、数100カウント以上の波高領域にはノイズがひじょうに少ないことがわかる。

宇宙線トリガーによるTPC-PADシグナル分布も添付ファイルに示した。1ページのPAD4chそれぞれの波高分布を見ると、宇宙線は数100カウント以上の大きな電荷をもたすことがわかる。また、ch4 (pad4)と他の分布を比較すると、シグナルの大きさが半分程度となっているもわかる。これは3usのpeaking timeからの予想と一致しているように見える。2〜4ページに、2つのpadの相関プロットをすべての組み合わせで示した。pad配置から、それらは天頂角度の0°(pad1-3、pad2-4)と 45°(pad1と4、pad2と3)そして90°(pad1と2、pad3と4)に対応している。宇宙線では天頂角度の0°が最も多く、それらがpad1と3そしてpad2と4の線形相関(特に、4ページの上の図)をもたらしていることがわかる。また、このことより、ノイズの大きなch3(pad3)とch4(pad4)でも宇宙線シグナルを検出していることがわかる。5と6ページにヒットしたpadパターンのいろいろ、順に、ヒット数分布、2PAD事象のパターン分布、3PAD事象のパターン分布、4PAD事象のそれぞれのPADごとの波高の和、1PAD事象のヒットしたPAD分布、1PAD事象のそれぞれのPADごとの波高の和、そして、すべての事象のPADごとの波高の和を示した。ここでは、100カウント以上のものをもつpadをヒットしたものとした。これらより、2つのPADをヒットした事象が一番多いこと、それらの上に示した6つのパターン分布は宇宙線の天頂角分布を示しているように見える。

さらに、詳細な解析は藤井が行っており、学会発表用にまとめられる予定である。

ASICチップ(学会発表のため)、東

ファイル:帰還部バイアス電流のシミュレーション結果 (pdf )

フロントエンドASICチップ試験について発表練習を行った。学会発表としては春に続いて2回目である。今回は、専用のテストボードを製作し行ったノイズ(ENC, Equivalent Noise Charge)の測定結果と低温試験結果が主な内容となる。

低温試験での問題点は、バイアス定電流供給用のカレントミラー回路の有無とその電流を上げた時の振る舞いとの関係をシミュレーションなどで明確にすることである。このため、早急にシミュレーションで評価し、明日、金曜日の午後5時から再び練習を行うことになった。

添付ファイルの結果を得た。ミラー回路と抵抗分割によるMOSトランジスタのソース電流計算値を下の表にリストした。

回路25℃-110℃
カレントミラー -4.4nA-4.1nA
抵抗分割:150Ω-1.5nA-1.4pA
抵抗分割:220Ω-576nA-230pA
ここで、抵抗分割:150Ωが今回のASICチップ試験時のものである。このとき、-110℃ではシミュレーションでも動作しなかった。低温で動作するように、150Ωから220Ωへの変更を行った。実際の試験でも動作を確認した。

上のシミュレーション結果によると抵抗分割(150Ω)の場合、低温でバイアス電流値が小さくなりすぎて動作しなくなった。低温試験での動作不良とよく一致しているようである。

田中真伸氏も一緒にいろいろの議論を行った結果、今回の発表ではDAQシステムの概略を示し、現在開発研究中のフロントエンドASICチップの位置を明確にし、常温でのENC測定、特に、入力容量1pFで400という他のものと比べても優れていることを述べ、DAQシステムの構築に向けての将来計画を示すこととがよいとの合意が得られた。また、上記シミュレーションの方法、結果と評価についてレポートを作製することとなった。

藤井も金曜日午前に学会発表練習を行った。

C : 焦点を絞って発表すること。例えば、多チャンネル化を行った。そのとき、ch3と4はFETの効果を見るため、あえて、それをチェンバーの外に配置して、内部に設置したch1と2との比較を行ったこと。
C : ch3と4のノイズが大きいことを定量的に(分布のσなど)示すこと。
C : α線電荷シグナルの電場依存性の測定値をpublishedされたものと比較すること。
C : 宇宙線データの3padヒットイベントの解析方向について別途議論したい。
C : 来週、森研究室で行う練習をwebexでKEKより参加できるように連絡してほしい。

その他

科研費の所内締切が9月中である。小さいもので先ず取りにいったほうがよい。

以上。