トップの物理は GeV における JLC に約束されたものである。 最近の Tevatron におけるトップの発見は、 その精密測定のための ファクトリーとしての GeV の 電子・陽電子リニアコライダーの必要性をますます高めたと言える。
ここではトップ質量の測定の問題から始める。
測定方法には、しきい値領域のトップクォーク対生成断面積の測定によるものと、
ジェットの不変質量分布によるものとがある。
前者については、重いトップは崩壊幅が大きく、
これが赤外カットオフとして作用するため、
しきい値領域全体にわたって断面積を第一原理(QCD)から計算できることが
重要な点である。
図-26a は、
断面積をエネルギースキャンで測定する場合の例である。
1点 で 11 点の測定を行なう。
そしてトップ質量と強い相互作用の結合定数()を
フリーパラメータとしてフィットすると、
図-26b のような結果が得られる。
トップクォークが他の物質粒子に比べて圧倒的に大きな質量を持つことは、 トップクォークが物質粒子の質量生成の鍵を握る粒子であることを 示唆している。 また、超対称性の場合には、トップクォークと軽いヒッグス粒子の 湯川結合は、超対称性のパラメータに強く依存している。 その意味で、トップクォークの湯川結合の測定は極めて重要である。 トップの湯川結合は、しきい値領域のトップ対生成断面積の測定、 あるいはトップ対に付随してヒッグスが生成される反応を 調べることにより測定できる。 この際の湯川結合の決定精度は、 いずれも の統計で 10% 程度である。
この他にも、トップクォークの超対称性粒子への崩壊の探索、 終状態ジェットの角分布解析によるトップ対の生成および崩壊バーテックスの研究等、 豊かな物理がある。 特に角分布解析は、トップの崩壊幅が大きくトップハドロンが生成されない という今までのクォークになかった全く新しい状況によってのみ可能となる。