第5回JLC構造体ミーティングのメモ

日時:8月25日(水)13時30分ー15時
参加者:山岡、松井、宮本、杉本、田内。

地盤振動解析(JLC、 TESLA、 NLC)のレビューを田内が行った (トラペン,tif 22ページ, 649kB, または、 pdf 22ページ, 401kB)。地盤振動は大きく分けて(1)difffusiveと(2)elastic振動の2種類がある。前者は低周波数領域(f<0.1Hz)でATL則に従った不規則な地盤変動を示す。そのpower spectrumは1/f^2に比例している。後者は海洋の波・うねりによる振動(〜0.2Hz)、cultural noiseと呼ばれる電源、冷却水などの人工的な振動(1〜100Hz)、地震などの波を示す。 ATL則とは、2点間の変位の2乗平均(<σ^2>)が経過時間(T)とその相対距離(L)に比例するという経験則(<σ^2>=ATL)である。ここで、Aは場所に依存する比例係数である。ATL則はHERAの電子、陽子リングでの軌道の変動によって5x10^{-7}Hz < f < 1Hz の周波数領域でも観測されている。

地盤振動の理論は、TESLAとNLCグループにより定式化されている。どちらも周波数(ω=2πf)と波数(k=2π/λ)の2変数に依存する2次元のpower spectrumを拠り所としている。一般に、これら2変数についてpower spectrumを積分すると位置変位の2乗平均が得られる。また、このpower spectrumはいろいろな相対距離(L)離れた2点での振動を幅広い周波数領域に渡って測定することによって求めることができる。しかしながら、有限個の測定値のため、それと無矛盾なモデルを用いなければならない。測定された2点での振動の相関を見ると、低(高)周波数領域で相関係数=1(0)を示していることがわかる。これは、elastic振動の特徴的な振る舞いである。これは、平面波があらゆる方向から伝搬してくると仮定すれば、ほぼ再現される。数学的には0次のベッセル関数(J_0(ωL/v(ω))で表される。ここで、v(ω)は振動波の速度である

NLCグループはATL振動がひじょうに小さいとしてelastic振動のみでpower spectrumを求めている。このとき、v(ω)は2点間の相関から決定された。TESLAグループは、相関係数がさらに低周波数領域で1よりかなり小さくなっているという彼らの測定結果(CERNのLEP tunnel)に基づきATL則を内合するpower spectrumを提案した。このとき、elastic振動は1〜3の有限個とした。この個数やA値などの違う4つのモデルを考えた。この中の一つはLEP tunnel (Model 1)、もう一つはcultural noiseが大きいHERA tunnel (Model4)に対応している。ATL則による相関係数は、1-ALω^2/B でありLとωの増大とともに小さくなる。相関係数のL依存性は観測されたがω依存性はまだ観測されていない。とにかく両グループとも自分たちの測定結果をほぼ再現している。

このようにモデル化されたpower spectrumを用いてリニアコライダーの安定性が議論できる。地盤振動がビームに及ぼす影響は光学系によるresponse function (G(k))で解析的に計算することができる。より詳細な検討はsimulationによって行われている。

次回のmeetingは、9月10日(金)、午後1時30分、3号館4階425号室です。

文責、田内。