第7回リニアコライダー計画推進委員会議事要録
- 日時:平成17年11月15日(火曜日) 10:00〜12:00
- 場所:4号館1階セミナーホール
- 出席者:小林、小間、神谷、近藤、高崎、黒川、山内、田内、生出、榎本、横谷、竹内、駒宮、野崎、浦川、久保、早野、斉藤、峠、栗木、佐藤、山本、上野、山下、尾崎 各委員、戸塚機構長
- (欠席者:岡田、木村、佐貫 各委員)
- オブザーバー 29 名
議題
議事に先立って:高崎委員長・議長
- 機構長報告:戸塚機構長
- FALC報告:吉岡委員
- FALC/RG報告:竹内委員(FALC/RG委員)
- ILCSC報告:黒川委員
- ILC-KEKレビュー委員会報告:佐藤(庚)委員
- 最近のGDEの活動・計画およびILCのR&D計画の見直しについて:横谷委員
- WG・GG報告
配付資料
- 一括資料
- 資料1 第6回LC計画推進委員会議事要録(案)
- 資料2 機構長報告
- 資料3 FALC/RG報告
- 資料4-1 ILCSC報告
- 資料4-2 ILCSC in SNOWMASS Minutes
- 資料4-3 ILCSC in Daegu Minutes
- 資料4-4 ILC GDE MOU Annex
- 資料5 ILC設計現状とアジアの計画
- 資料6 ATFの現状と計画
- 資料7 STFの現状と計画
- 資料8 High-gradient cavity
- 第2回LCレヒ゛ュー委員会答申
議事
議事に先立ち高崎委員長から、以下のコメントがあった。
今回の委員会開催が前回から6ヶ月たっていることをお詫びします。
LC推進室に秘書の白形さんが赴任されました。部屋は3号館6階622A室の部屋です。
1. 機構長報告
戸塚機構長から、以下の報告があった。
LC推進室の活動が本格化し機構長としてのイニシアティブは不要となった。したがって、機構長としての報告は最後になるだろう。9月26日に開催されたICFAで、自身の性格の変更を行い、『ICFAは素粒子物理に集中する』こととなっている。その位置づけの中にある『high energy accelerators』を『accelerators』に変更することや人工衛星を使用する大型計画もcosmology分野との関連も考慮し推進することなども議論された。現在はdraftの段階である。また、世界の主な研究所の将来も以下のように紹介された。DESYはHERAの運転を2007年に終了しXFELなどの放射光源の研究所となるが、高エネルギー関連の活動はよくわからない。SLACはPEPIIの運転を2008年に終了し、放射光源と宇宙物理学(GLAST計画)の研究所となる。CERNは今まで通りLHCとCLICの開発研究を行う。FNALはTEVATRONの運転を2009年に終了し、ニュートリノファクトリーのためのproton driverやILCの開発研究を行うが、非加速器の将来計画は持っていない。
ILCの日本への誘致を念頭に、機構長の私的懇談会の「リニアーコライダー計画の推進に関する(LC)懇談会」をこれまで6回開催した。その委員長は前機構長の菅原寛孝氏である。この他に、KEKとは独立に、政治的環境づくりのため、菅原氏のリーダーシップの下、国会議員によるLC勉強会(与謝野馨会長)が10月27日開催された。今後、議員連盟のように進展して行くのかもしれない。
- (Q:竹内)KEKの活動としてのLC推進室とGDEとの関係を明確する時期ではないか。
- (A)GDEのもとにdesign workが行われるが、LC 推進室はGDEの一部ではない。KEKはR&Dで貢献、R&Dをproposeしていく。
- (Q:野崎高エネルギー委員会委員長)高エネルギー委員会は、LC推進を学術会議に働きかけ中、KEKも積極的に取り組んでほしい(要望)。
2. FALC報告
吉岡委員から、以下の報告があった。
11月3-4日にFNALで第6回FALCが開催された。今回、山内委員の代理として出席した。FNAL所長のP. Oddoneより、ILC建設費の国際分担に対する米国の案が紹介された。それは、総額8千億円のILCを10年で建設し、米国は50%、日本とヨーロッパで25%づつ分担するというものである。R. Wade (FLAC/RG議長)は、ILCSCとの関係の明確化の必要性を述べた。また、彼はGDEの財政援助としてのcommon fundは3地域で等分することを提案した。日本としては参加機関が等分することを提案したが、その後のFALC/RG会議で3地域等分が決定された。B. Barishから、GDEの上部組織として、ILCSC, FALCやWWSなど有ると思われるが、複数からの指導を受けるのは混乱するとの指摘があった。その中で、ILCSCの役割、GDEの任務、FALCの今後の進展などが議論された。3地域より一人づつ委員を出しFALCの将来像検討のための小委員会の結成が提案された。これと平行してアジア地域でどのようにLC推進を行うかの検討が必要であろう。FALCの次回は2006年5月22日となった。
- (C:黒川)上記の小委員会は未定である。今後、ICFA, ILCSC 議長はFALCに出席し、ILCSC 議長はFALC/RGに出席することになった。また、FALCの代表者はILCSC, ICFAへ出席することとなった。
- (Q:山内)FALC内での日本の態度?
- (A)文科省:斉藤室長によると JPARC建設終了の2010まで日本は動きがとれない。
- (Q:駒宮) GDEのcentral lab.はFNALか。
- (A )GDEのホームページ作成などFNALに秘書室を設けで行われる。年間経費は4000万円程度必要である。
- (Q:野崎)米国ではILC建設総額の金額8000億円と言われているが、日本での説明ではいくらか?
- (A:高崎) TESLA (2001) 3.8 billion euro (7000人"年)がpublicになっている唯一のものである。
- (A:戸塚)BarryのpresentationではTESLAのものを示している。
3. FALC/RG報告
竹内委員から、以下の報告があった。
R&D段階の資金のアレンジ等について検討するワーキンググループ的な組織として、17年2月に第1回FALC/RG(Resource Group)の会議が開催された。『GDE段階でのR&D資金』を検討することとされたので、その供給元であるKEKの竹内が日本の委員として出席している。第3回目は上記FALCと同期間に開催された。GDEの進め方について次のような意見を述べた。SNOWMASSで示されたGDEの年間予定は2005-2010に及んでいる。これは2004年3月31日のILCSCレポート(Report of the ILCSC Task Force for Establishment of the International Linear Collider Global Design Initiative)のものより長期間で、GDEはこのILCSC指針に従うべきである。また、LC推進室は長期的プランを持つべきである。また、GDE-phase1(BCD-RDR)でのサンプルサイトの検討は、上記reportの6ページの"Establish and disseminate a cost-estimating methodology for the ILC construction"の任務として行うべきである。ILCSC議長より、これらの問題はILCSCがGDEの上位機関として役割を果たすことで解決されるであろうとの報告があった。
GDE活動資金(common fund)としては上述のように秘書人件費、ホームページ作成費等400千ドル必要である。3地域で分担するため、MOUを締結することとなった(KEKは先のGDE設立時のMOUアネックスを提案した)。次回は2006年2月8日にCERNで行うこととなった。
4. ILCSC報告
黒川委員から、以下の報告があった。
今年7月に黒川がILCSC議長に就任後、SNOWMASS期間中の8月23日そしてICFA seminar前日の9月27日の2回開催された。ILCSC、GDE、WWS、FALCの役割についての自由討議が行われ、Machine Advisory Committee (MAC)を立ち上げることを決めた。MACの委員数は10-12名で、できれば今年中に結成したい。次回は2006年2月9日にCERNで行うこととなった。
- (Q:峠)regional GDEs の意味は何か。 regional GDE directorの役割は何か。
- (A:横谷)GDEは一つのみである。 regional GDE directorはregional contactとしての役割を持つが、アジア独自の役割もある。ヨーロッパにはEuropean GDEはないが、アジアと米国にはある。
- (Q:峠)それぞれの定義を明確にすべきではないか。
- (A:戸塚)GDEそしてregional GDEの役割などはどんどん進化していくものである。しっかりしているところがリーダシップを取るであろう。したがって、方針を持ってどんどん推進してほしい。
- (Q:戸塚)MACの初回会合はいつか。
- (A:黒川)現在調整中で、1月16,17,17日の内のどれか。
- (Q:榎本)日本でのsite studyが進みすぎれているといわれているが?
- (A:黒川)そのような議論はまだない。
5. ILC-KEKレビュー委員会の報告
佐藤委員から、以下の報告があった。
これまで、2004年12月16日に第1回(答申)と今年7月28日に第2回(答申, 添付資料)を行った。その詳細はそれぞれの答申を見てほしい。第1回目の答申として主要なものの一つは『KEKでの短期計画としての組織が明確でない』というものであった。また、第2回目では、『SNOWMASSで何を主張するのか?』そして、『1回目の答申に従って、組織ができたか。』がレビューの観点であった。組織体制については8月1日に横谷氏が追加説明を行い、10月7日に答申を提出した。
- (Q: 高崎)答申内容を簡単に説明してほしい。
- (A) 45MeV/m R&D の スケジュールがきついため、単セル開発に集中すべきである。 STFのphase-2はphase-1の成果をフィードバックすべきである。super-cavity R&Dは日本がリードし続けるべきであり、EP設備をKEK内に作るべきである。ATF2 現状では予算、マンパワーが不足しているが、国際協力拡大にKEK執行部のリーダーシップが必要である。超伝導空洞R&Dを優先すべきであり、STFスケジュールを十分なR&Dのできるように1年送らせたことは歓迎する。ATF2での国際協力で外国資金の工面をKEK がすべきである。LC-R&Dでは、 若手がグループリーダーとなっていることは評価できるが、推進体制のリーダー(推進室長)に具体的勢いが感じられない。
- (Q:山本)high gradient cavity R&Dは、 GED scheduleにmatchしないのでは?
- (A)日本がsuper-cavityをleadしているので、GDEとは独立にR&Dをやるべきとの答申は重要であった。
- (A:高崎)「私はしろうとである」....。
- (A(佐藤)「私はしろうとである」との発言はdis-courageである。『しろうとであろうと』加速器のR&Dの状況を理解すればよい。
6. 最近のGDEの活動・計画およびILCのR&D計画の見直しについて
横谷委員から、以下の報告があった。
GDEは今年度中のBCD (Baseline Configuration Document)を完成し、ILC加速器の設計の骨子を決定する。
KEKでは、High gradient super cavityの single cell R&Dに集中している、12月から9 cellの試験研究を行う予定である。positron生成では、undulatorの場所としてend of linacが有力となっている。DR設計骨子は、CERNでの mini-workshopで決定されるが、周長6kmのリングが有力であり、 ,e+のものは6kmの2リングとなるであろう。このDR設計ではKEK-ATFでR&Dが行われている取り出し用のfast kickerが最重要要素である。今後の予定は、11月18日にBCD草案作成し、12月7 - 9日Frascati開催のGDE会議(約100名出席)で議論される。2006年1月には、BCD完成後の設計変更の是非を決定するCCB(Change Control Board)が結成さる。2006年末には、コスト評価のついたRDR (Reference Design Report)を完成する。ここには、3地域からのサンプルサイトに基づくサイト依存性のあるコスト評価も行われるであろう。2008 - 2009年には建設のためのTDR(Technical Design Report)を完成し、サイト選択が始まるものと思われる。
超電動加速空洞R&D facilitiesとしてTTF(DESY), SMTF(FNAL), STF(KEK)の3つがある。TTFでは5台のmodulesで400MeVの加速試験が行われ、来夏に35MeV/mの6台目のmoduleが設置される。STF phase-2 は第1回LCレビュー委員会の答申を受け1年遅らせた。TDRには各regionでのsuper cavity技術の確立が必須であり、製作段階でのknowhowをTDRへ反映させる。KEKにEP設備を作り、2006年末にはSTF phase-2用のcavityのEP可能となる。また、ILC以外のcavityにも対応する予定である。
ATFの国際協力を推進するため、浦川氏がMOUへの署名を集めている。現時点で20署名を集め、残りは3つとなっている。ATF collaborationのICB (International Collaboration Board)の議長はE. Paterson (SLAC)であり、そのspokespersonは浦川氏である。浦川氏はtechnical boardの議長も務める。ATF collaborationの中のATF2グループは磁石架台製作はKEKが分担し、電源一式はSLACが分担することで検討中である(田内コメント)。
7. WG・GG報告
各グループから報告が行われた。
(ATF/ATF2の現状と計画、照沼)
ILC-DRの6kmリング用の立ち上がり3nsのfast kickerのR&Dを行っている。空洞型BPMのNano-BPM R&DとしてKEKとSLAC/LLNLの2つのチームが有り、これまでの所それぞれ72nmそして17nmの位置分解能を達成している。レーザーワイヤーのcommissioningは12月に行われる。デジタル回路によるfast feedback systemのFONT4実験、そして、DRから取り出しラインへのfeedforward systemの検討も行われる。ビーム取り出し用のパルス幅のSLAC製kickerにより、154nsづつ離れた3バンチや336ns離れた2バンチビームの取り出しに成功した。ATF2計画では、KEKとPAL(韓国)との共同で100nm分解能のQ-BPMのプロトタイプを製作している。また、分解能2nmのIP-BPMのプロトタイプ設計も開始した。ATF2のcommissioningは2008年2月に予定している。
(STFの現状と計画、大内)
STFは、control, klystron, EP, cryomodule assemble, cryogenic systemなどより構成されている。地下トンネル内はclean-upされた。phase-1では、異なる空洞タイプの2つのモジュールが製作される。それらはともに4つの空洞よりなる。ビームテストも行われ予定である。Low Level (LL)RF制御はJ-Parcのものを改良して使用する。Klystronは手持ちのTH2104A(Thales製)と新品のTH2104Cの2台を使用する。LL-RFのR&Dに、中国からの研究者2名が参加する。cryostatの製作が日立製作所で行われている。cryostat内空洞の支持はローラヘ゛アリンク゛を用いたスライト゛機構(基本的にはINFNと同し゛構造)である。そのR&D(異材継き゛手)としてHIP法(拡散接合)、圧縮接合のテストが行われている。35MV/m空洞は三菱重工、そして、入力カップラーは東芝で製作されている(年内に納入)。STF-phase 1での2K冷却システムではトランスファーチューブなどの開発が行われる。clean room (ISO class-4, 空洞用、ISO class-6 真空作業用)とEP設備の配置は確定した。クリーンルームは2006年6月末に完成予定である。
(HG-Cavity 開発の現状と計画、佐伯)
BCDでは35MV/mのTESLAタイプの空洞が選択されたが、40MV/mのILC運転を目指してR&Dを行っている。最初の9セル空洞テストはMP (Multipacting)によるbreak-downにより『失敗』した。LLタイプ単セル空洞では5回の表面処理を経て、45.9MV/mを達成した。9 cell空洞の達成加速勾配はMPにより21MV/mであった。新たに 4つの単セル空洞作成し12月末まで試験する予定である。この他、input coupler のR&Dでは各部をモジュール化し、tunerでは、piezo actuatorsによるco-axial ball screw tunerの開発を行っている。空洞製作のコストダウン化のため、Nb/Cuのseamless空洞を開発している。3セルまでのネッキングに成功し、次に9セルの製作をする。高勾配のHG空洞開発研究は国際協力が行われ、韓国、中国、カナダからそれぞれ、2名、1名、1名がKEKに滞在している。
(その他)
高崎委員長から、以下の補足があった。
GDEのcommunication groupには森田氏が参加している。また、サイト、CF(Conventional Facility)には榎本氏が参加している。各地域のサンプルサイトは、米国がFNAL、ヨーロッパがDESYとCERNのサイトである。アジアから一つサンプルサイトとして、日本サイト候補の中から選ぶ予定である。
- (Q:野崎)今回のスライド、presentationは公開してよいか。
- (A:横谷)R&D以降のものはOKである。
- (Q)STFとATF2のコストはいくらか。
- (A:横谷)STF-pahse-1は検討中であり、ATF2は約4億円である。
- (A:高崎)今年度は全体で10億円程度である。