LC推進室は昨年12月にLC活動計画についてLCレビュー委員会を作り、下記の方にレビューしていただきました。下記の様な委員会の答申をいただき、LC推進委員会(12/20, 2004)において佐藤委員長より発表していただきました。 

 

LC推進委員会(12/20, 2004)

 

LCレビュー委員会答申

 

  委員会のメンバーは,これまでKEKで行われてきた,JLC, GLCと呼ばれていた計画の戦略の立て方及び推進体制に反省すべき点があったと認識している.来年度から大規模に貴重な予算と人材を投入することを認めるには,責任体制、指揮命令系統,及び体制内での建設的な議論を保証できる組織,を確立させることが必須である.また今後の戦略の妥当性に関しては今回のレビューの課題となった訳ではあるが,予算決定が迫っていないもっと早期に公開で議論を開始すべきであったであろう.

 早急に適切な推進体制を確立するよう努力していただくことを,推進室に強く要望する.また研究開発は,何々を目指す,といった目標が曖昧なままで行われやすいので,具体的な達成目標を定めて推進していただきたい.今後ILC関連での開発状況,及び内外の境界条件の変化が速いことが予想されるため,少なくても半年に1度建設的なレビューを開くことを要望する.これによって,計画推進における戦略戦術の透明性を高めることが期待される.

 委員会は,レビューで発表された多くの計画の中から,きわめて重要でかつ大規模なSTFとATF2を評価することにした.

 

 1.STF計画

 a. Phase 1

    KEKが開拓してきた超伝導空洞技術によってILCの実現に積極的に貢献でき,また技術の発展が期待できるということで,推進を支持する.特に,KEKの開発能力を必要とする加速勾配の限界に挑む45MV/mの加速管モジュールの開発は,加速勾配に対してマージンを確保することにつながり,また日本誘致を目指して積極的に活動する研究者を精神的に支えることであろう. 

 35MV/mの加速管モジュールに開発においても,この加速勾配はまだ定常運転で実現が実証されている訳ではなく,複数の加速管を歩留まりよく完成させ,それらを安定に長期間運転することができれば,KEKのILCへの寄与は多大である.

 さらに電子の加速実験を含んでいるが,ビーム加速は広範な空洞性能の実証として不可欠であると同時に,多くの人が参加しファシリティの求心力を高めるということで,加速実験が有意義であることを認める.

 これらの遂行により,その後の工業化への開発及び実機製作を担うことができる3極の一つとなることが期待できる.そこで,Phase 1を遂行するのに必須な建物及び設備は整備すべきであろう.

 b. Phase 2

  ここでは,工業化,及びコスト削減の具体化を目指すことになるであろう.この作業はTDRの完成にとってきわめて重要であり,かつKEKは遂行能力があると認識し,委員会は推進を支持する.しかしながら,Phase 2開始までにはGDIの調整が機能するはずであろうから,そこから出される指針を尊重し限られた資源を有効に使うべきであろう.

 

2.ATF2計画

  低エミッタンス、多バンチビームを蓄積し,取り出すことができるATFは研究用として現在唯一の存在であり,ビーム診断技術の開発等の機器開発、国際協力、若手研究者の育成に寄与してきた.ATF2はATFからのビーム軌道を安定化させるという,ILCにとって必要な技術要素開発であり,ATFを使った魅力ある国際協力計画として提案されている.委員会はATFの活動を今後も継続発展させるべきであると判断し.その具体化としてATF2の推進を支持するとともに,それに伴いILCの良きモデルとして国際協力が活発になり,多くの若手研究者が育成されることを期待する.

  ATF2計画とSTF計画とは,機器の要素が異なるため,研究者が競合することなく,平行して遂行できるであろうと判断する.ただし,STFのビームテストにおいてはATFメンバーの協力が求められるであろう.

 

3.その他

  Kicker開発結果は,DRの大きさを決める上で重要な情報であろうが,既に開発を開始していてかつSnowmassまでの短期間に終わるであることから,今回の委員会は言及しない.KEKBのダンプを使った陽電子発生targetの研究についても,同様の理由で言及しない.

 

 

 

 

 

レビュー委員: 

安東 愛之輔                    兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所 教授
井上 信                 立命館大学 COE推進機構 客員教授
生出 勝宣(欠席)        高エネルギー加速器研究機構 教授
熊谷 教孝                   高輝度光科学研究センター放射光研究所 加速器部門長
木原 元央                  高エネルギー加速器研究機構 名誉教授
佐藤 康太郎(委員長)      高エネルギー加速器研究機構 教授
新竹 積                   (独)理化学研究所 播磨研究所 主任研究員
羽島  良一  日本原子力研究所 光量子科学研究センター 主任研究員
古屋 貴章                  高エネルギー加速器研究機構 教授
峰原  英介 日本原子力研究所光量子科学研究センターグループリーダー
山崎 良成 日本原子力研究所大強度陽子加速器施設開発センターグループリーダー
山本  明(欠席)            高エネルギー加速器研究機構 教授