既に述べたように、20世紀の高エネルギー物理学発展の歴史は、 標準理論へと収斂する過程で、自然の語る物語の テーマの中心がゲージ対称性であるらしいことを明らかにした。 ここで手にしたゲージ対称性は、
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問題は「我々が探求すべき次の対称性は何なのか?」である。 最近の主に LEP で蓄積されてきた精密な実験データが、 この疑問に対する答えを示唆している。 この観点から現在の実験データを分析すると、 その状況は標準理論前夜と著しく似ている。 標準理論前夜、我々の手元にあったのはフェルミの4点相互作用の理論であった。 この理論は、300 GeV 近辺でユニタリティーを破ることが知られていた。 この困難を回避するため、ウィークボソン W、Z が導入された。 しかし、一般に質量を持ったべクターボソンの理論はくりこみ不能であり、 困難は完全には解決されていない。 ベクターボソン同士の散乱で、再びユニタリティーの破れが確実に予測されるのである。 この問題を解決するために、ゲージ対称性とその自発的破れを骨子とする 標準理論が提唱された(標準理論では W、Z をゲージボソンとする。 ゲージボソンは、ラグランジアンレベルでは、 質量を持たずくりこみ可能である。 そこで、ヒッグス場によって自発的に破れた ゲージ対称性が高エネルギーで回復するとユニタリティーの問題は なくなる)。
もちろん W と Z の発見以前には、標準理論は一理論であった。 ウィークボソンの発見および標準理論の検証に焦点を合わせ、 新たに加速器および実験計画が本格的に提案されたのは、 中性カレントの実験と SLAC の有名な eD 実験が、ワインバーグ角 (電磁相互作用と弱い相互作用の混ざり方を規定する角度)に対し、誤 差の範囲で一致する数値を与えた頃からである。その後、SppS、Tevatron () 計画および TRISTAN、LEP、SLC (e+e-) 計画が遂行され、 標準理論に対する確固とした基礎が築き上げられた。