2011, 6/23のLXeTPC (TXePET) 打ち合わせのメモ原稿

日時:6月23日、木曜日、午前10時30分より
場所:開発棟実験室
出席者:田中、笠見、田内(KEK)、高木(横浜国大)

以下、メモ(敬称略)です。ここで、Q(質問)、A(答え)、C(コメント)です。

TEG-Tr低温試験とASIC FEテストボード、高木

先週に行った低温試験結果のレポートを書いた(電子ログ:APD 36)。ここでは、スターリング冷凍機(冷却能力=25W@-110℃, 50W@-80℃)を使用した冷却試験恒温槽の性能評価を行った。

試験資料はTEG Tr(50mm x 50mm x1mm のテストボード)で冷凍機天板にαゲルを挟んで設置した。天板上(T0)とテストボード上の素子近く(T1)に白金抵抗を取付け、これら2カ所の温度で熱侵入量などを評価した。まず、恒温槽内を真空にしたとき、T0=-120℃、T1=-58.5℃であった(ΔT=61.5℃)。次に、恒温槽内に窒素(ヘリウム)ガスを封入してみた。素子温度が最低となったのはともに1気圧で封入した時で、T1は-97℃(-92℃)になるが、T0とは9.5℃(1.6℃)ほどの温度差があった。圧力の大きさとともに温度差は小さくなった。恒温槽のフィードスルーには72本のレモケーブルなどが結線されていた。

真空の場合、ケーブルからの熱流入量は約4Wと評価した。もし素子が-110℃になれば、この熱流入量は約6Wとなる。この量は冷凍能力と比べて小さいので素子と天板との熱伝導をよくすれば-110℃まで冷却可能と思われる。

1気圧のヘリウムガスを封入したときT1,T0とも-80℃(温度差は最小の0.5℃)となった。この温度での冷却能力は50Wであるので、上記のケーブルからの熱侵入量を差し引いて、アクリル板(直径29.6cm, 厚さ2cmの窓, 熱伝導率 0.19W/m/K)からのものは46W程度である。0.1気圧のHeガスの時は、T1=-92.4℃, T0=-94℃であった。

今週、αゲルを銅板に交換して、さらにグリースで熱接触を行い、真空で試験する予定である。

ASIC FEチップ用のテストボードの設計をほぼ終え、明日、業者と打ち合わせをする予定である。このテストボードの基板は100mm×100mmの大きさの4層構造で、4枚製作しその内の3枚を実装する。

C : Heと窒素の熱伝導率(W/(m・K)(25℃,1atm)は、それぞれ、0.16と0.026である。
C : αゲルの熱伝導率は0.18W/m/Kでガラスエポキシの約半分で、むしろ使用しない方がよいかもしれない。
C : 温度差ΔTでの熱流入量Qは、Q=ΔT x k/L xAである。ここで、k=熱伝導率 [W/m/K], L=長さ, A=面積である。真空での結果、ΔT=61.5℃とすると、5cm x 5cm, 厚さ2mmのαゲル内の熱流入量は13.8Wと評価される。αゲルの代わりに熱伝導率398W/m/Kの銅板を用いるとΔT=0.03℃になるものと予想される。また、評価値13.8Wはケーブルからの熱流入量の約4Wに比べて大きい。実際の熱流入量がこのケーブルのものとすると、『αゲル+ β』の熱伝導率は0.052W/m/Kとなり、βの熱伝導率は0.073W/m/Kである。この場合、銅板の効果は期待できない。

熱交換器の断熱真空容器と新クライオスタットの設計、笠見

現在の熱交換器をその効率を上げ冷凍能力を補うように真空容器の中に入れる設計を行っている。この真空層の中にスターリング冷凍機も入れ、ガスの温度をさらに下げることも行いたい。

前回のmeetingで議論された次のTPCのポンチ絵(PDF)が田内により配布された。これを下に、新クライオスタットの設計も開始した。先ずは、ガンマ線入射用のマイラー窓(外側の真空容器)、SUS製ハニカム窓のないもの、又は、物質量の少ないアルミ窓を持つものの設計を行いたい。PT冷凍管は150W、熱交換器は上述した真空断熱のものを使用する。この設計に基づき概算を行う。

PSI滞在中の三原より、「熱交換器の真空断熱化は材料準備中です。モノが揃った時点で小型のチャンバーを作るか市販の大きめの配管で製作可能かを調査して、まずは私が新しく作ったチャンバーの方で取り付け試験を行うことを考えています。」

実験進捗状況、笠見、田内

液層循環を調整中である。ロータリーバルブ交換、冷媒ヘリウムガス交換(2回)を行い冷却を開始したが、結果は良くない。循環流量は1.6〜2.4リットル/分で、24時間経過後に冷凍機の冷凍能力が下がってします。原因不明であるが、PTヘッドを300Kに暖めると能力が復帰する。様子を見ながら進め方を検討したい。(笠見)この間の経過とシンチレーション光量モニターは電子ログのVacuum&Cryogenics 54 に記載した。

PAD全数OKである。α線トリガーでまだシグナルは見えていない。

すべてのドーターカードとマザーボード用の静電シールドボックスを設計・製作中である。先ず、テストベンチで試験を行い、シールド効果を確認後、chamber内に設置したい。

その他

次回の定例会議は、6/30(木曜日)の午前10時30分からの予定です。

以上。