2010, 7/12のLXeTPC (TXePET) 打ち合わせのメモ原稿
日時:7月12日、月曜日、午後5時より
場所:実験棟多目的室
出席者:三原、幅、佐伯、田内(KEK)、中村、高木(Skype, 横浜国大)
以下、メモ(敬称略)です。ここで、Q(質問)、A(答え)、C(コメント)です。
実験室の移動、田内
先週、施設部、業者の3者で現場で工事内容についての相談をした。雨漏り、床塗装、壁面修復(亀裂部)、排煙用窓修理等の見積を取ることとなった。床塗装は中性子実験棟並みの厚さ0.9mm程度のエポキシ系のものでおこなうこと。雨漏りは排水用のトレイがつまり屋上に雨水がプールのようにたまったことが原因であったとの説明があり、現在は業者に屋上部、トレイの定期的な点検を依頼しているとのこと。壁面の亀裂は老朽化によるもので、その部分から雨がしみ込んでいる。排煙用窓は一部が閉まり切っていない状況で、開閉のための手動くさりの点検が必要であるとのことなど。
別途、床塗装工事の見積を別業者で行っている。
サマーチャレンジ準備、高木、中村
前年度使用したモジュール、ケーブル等は確保されている。8月3〜5日に行うリハーサルでそれらを確認することとなった。
TPCプロトタイプ試験の進捗状況、田内
ファイル:シンチレーション光による測定(pdf)、TPC配線とフロントエンドエレクトロニクス(pdf)
最新の状況は電子ログにある。
ガス中での電荷シグナル確認作業を進めている。宇宙線用のトリガーカウンターを一本chamber下部に設置した。トリガーレイトは約10イベント/時間である。TPCカソード電圧を-300Vとし、アノード電圧を+50V, +200V, +300Vと変え、それぞれ、160~180イベント収集した。PAD no. 4, 5, 9,11 および PAD no. 15, 16, 9, 11でいずれの場合も電荷シグナルを観測できなかった。
Xeガス中の宇宙線ミューオンによる電離電子数は441個/cmで、PADのサイズが0.75cm四方であるので、この電荷を観測することはできない。(液体キセノンの場合、密度から、これの数百倍の電荷が生成される)
主にα線によるシンチレーション光(2個のPMTシグナル)のドリフト電場(E1=0.005〜0.625KV/cm)とグリッド-アノード間電圧(E2=2, 3KV/cm)依存性を改めて測定した。デジタルオシロスコープの1秒間蓄積モードで測定した。その結果を上の添付ファイルにまとめた。α線はカソード面中央に接着されている。ここで、カソードそしてアノードとグリッド間の距離はそれぞれ4cmそして1mmである。グリッドは、間隔0.41mmの直径0.1mmのSUSワイヤー(50メッシュ、開口率56%)である。この結果から;
- 第2のシンチレーション光(after pulse)は第1のものから8usecから375usec遅れて観測され、E1に依存している。
- 4cmのドリフト距離を上の時間間隔で割ってドリフト速度と定義し、その依存性をE1の関数としてプロットした。E1=0.025〜0.075KV/cmで速度が急に大きくなっている。その速度はE1=0.1KV/cm付近で最大となり、その後、少し小さくなっている。E2には依存しない。
- after pulseの観測時間は数usecで、そのパルス高はE2の大きさとともに大きくなる。
- E1>0.2KV/cmで、最初のシンチレーション光からafter pulseの間にもシンチレーション光を観測している
これらから、電荷はドリフト中電場が大きくなる(ドリフト速度が最大点を通過後に)と、Xe原子を励起してシンチレーション光を発生させているように見える。また、グリッド-アノード間も同じ現象が起こっていると思われるが、その発生時間が数usecである原因は不明である。いわゆるquenching gasが封入されていないため、光の吸収と発生が繰り返されるためか。
以上のように電荷はドリフトしてグリッドには少なくとも達していると思われる。したがって、電荷シグナルが観測されない原因として、(1) グリッドの電荷透過率が0%、または、(2) Pre-ampが働いていないことの2つが考えられる。
メッシュの透過率は電子ログ-Runlog 116で示したように、開口率56%でE2/E1>6で少なくとも60%はあると期待される。元々、この透過率を測定するためにアノード電圧を可変できるように配線している。
2つ目の添付ファイルにフロントエンドエレクトロニクスをまとめた。先ず、昨年度の4個のPAD読み出しのときのものを示した。JFETとして2SK152を用い、feedback用の抵抗(100MΩ)とコンデンサ(1pF)とともにPADに取り付け液体キセノン中に置いた。テストパルスは1KΩ抵抗を直列にし50Ωでターミネーションし2pFのコンデンサーに電荷を矩形波で供給した。このとき、PADの電位はグランドである。今回のものはフロントエレクトロニクスは2ch/枚のドーターカード8枚をchamber上部のマザーボードに取り付けた。ドーターボードと16個のPAD間は単線ケーブルで接続した。マザーボードのGNDはグリッドに接続し、PADはアノード電圧+HVに接続された。アノード裏面のPAD用のリード線以外はアノード電圧となっている。実際の回路はJFETとしてBF862を用い、feedback用の抵抗は50MΩx3=150MΩ、コンデンサ=1pFを用いた。PAD(DETECTOR)は500MΩを直列にアノード電圧に接続され、それと並列に1000pFのコンデンサーを通じてJFETのGateに接続されている。TESTパルスは1pFのコンデンサーを直列にJFET-Gateに接続されている。この回路はA.Pulliaらの論文を元にしている。
チェックを要するところは;
- マザーボード上のTEST PULSE配線とアノード電圧配線
テストパルス1Vの矩形波入力に対して、出力は数mV( ~1/256)であること。
フィードスルーコネクターでのfeedback端子とGND間の抵抗値が約25Ωであること。出力のないものは数Ωであること。
- ドーターボード上の配線の確認
- C : アノード電圧を400V印加時に、大きなPMTシグナルとともに、電荷シグナルが観測されている(a few Hz)。この現象をさらに詳しく見る必要がある(エレキが死んでもよい)。
- Q : それは放電ではないか。
- A : そうかもしれない。このために10個のPADのエレキが死んだと思われる。
- C : エレキが死なないような対策が必要である。例えば、ダイオードの挿入等。
- Q : ダイオードは液体キセノン温度では大きなノイズ源となる。今回、アノード電圧を350V以下にすれば上記のような放電現象は起こらないので、そのような条件下で使用するのがよい。400V印加時でもすぐに死ぬ訳ではない。
- C : メッシュの透過率が疑われる。実績のあるものを次回に使用すること。液体アルゴングループから50メッシュをもらうことになっている。
- C : 現在使用のフロントエレクトロニクスの回路は上のチェック部分を含めて妥当と思われるが、エレキ専門家に相談すべき。
- C : ドーターボード、マザーボード等、chamberへの設置の前に、配線などのチェックが必要
議論の末、先ず、アノード電圧400Vでの現象を詳しく見ることとなった。また、実装前のドータボードの配線を確認する。
その他
7月20日に測定器開発室による液体TPCの重点レビューがある。時間と場所は13:30 - 16:30、2号館408号室である。
次回のmeetingはこの重点レビューの後、7/20火曜日午後6時から行う予定である。
以上。