7/12のLXeTPC (TXePET) 打ち合わせのメモ

日時:7月12日、木曜日、午後4時より
場所:3号館3階725号室
内容:TPC構造・素材試験の進捗状況とLiq.Xe-TPCのエネルギー分解能(東他)、その他
以下、メモ(敬称略)です。ここで、Q(質問)、A(答え)、C(コメント)です。
-----7月12日 meeting :午後4時〜6時

1. 東:TPC構造・素材試験の進捗状況

 佐賀大 M2 の青座君に 電場計算(電極板・スペーザー付近の不均一、グリッド性能など)を依頼している。

 電極板の図面を用意し、加工のため業者と打ち合わせている。今週中に発注すれば、来週前半に納期される。

 その後、組立て試験そして液体窒素中での試験を行う。

Q : スペーサー(絶縁物)と金属板のクリーン性も試験するのか。 このことは組み立て時から考える必要があると思われる。
A : 組み立て後洗浄する。今回の主目的は、材料自身の性質、材料の素材試験で、よりコストパフォーマンスのよい素材を見つけたい。また、東自身の経験を積むことも含まれる。
C : クリーン性のためオイルレスで加工することが必要である。ATLASグループ(田中)の 超音波洗浄機を利用出来る。 ハンダ使用をできるだけ避けたい。
Q:セラミックアノードとケーブルとのつなぎはどうするのか。カードエッジ?  
Q:(マイクロ)メッシュ金網の止め方は何か。
A/C : 方法として、溶接、Oリング使用などが考えられる。温度係数の違いで、低温で平面性を出すように工夫できるかもしれない。
C : 温度サイクルでメッシュと金属板との温度勾配の違いによるゆがみのテストも行うべきである。
Q : 試験の手順・測定項目と機器また、期待される結果はどのようなものか?  
C : 冷却に必要なものも含めてリストアップし手順書を作成すべきである。そこに、測定システム図を作成することも必要である。
Q : 構造の精密測定をどうしたらよいのかわからない(東)。
C : わからないことも上記の手順書に書くこと。わからなければ聞くこともできる。ただし、先ず調べること。
Q : 低温中の絶縁試験を行うのか? 抵抗はどういうもの(素材、抵抗値、ワット数など)を使用するか?
A/C : 低温中の抵抗値を測定してみることもできる。
Q : 加工方法は何か。抵抗をどのように接続するのか。なぜ、3つの穴しかないのか? 電極板の角をとらないか?
A : 前回打ち合わせで紹介されたナンテ大学グループのように、抵抗は切り込みを入れ、抵抗リード線にかしめられたプラグで接続する。
C : 1mmの板厚で可能かどうか、使用するプラグなども探さなければならない。(ナンテ大は0.5mm厚の銅板使用)また、その接触による接続方法を低温(液体窒素)で試験することの必要である。
C : スズノで加工するのであれば、おそらくワイヤーカットと思われる。その場合、オイルレスになる。
C : 3つで締め付け位置決めをするが、4つの穴を明けといた方がいろいろ自由度が増えよい。
C : 加工図面には、今回試験出来る限りの細工を施した方がよい。また、電極板自身業者に手配した方がその素性がわかりよいと思われる。
 以上のことを最大限取り入れて、東と田中が責任を持って明日中に発注を目指すこととなった。

2. 東:Liq.Xe-TPCのエネルギー分解能

昨日の『午後5時30分meeting』時に田内が『エネルギー分解能の問題』の検討を東に提案した。それを受けて検討結果が報告された。ただし、問題点の取り違いがあり、東はFANO factorの説明を行った。

元々の問題は、以下のようであった(田内)。
Liq.Xe中の0.5MeVの光子によって総数30,000個の電離電子が生成される。この電子数の統計誤差からエネルギー分解能(σ)は1%程度が期待される。実際に測定されているベスト値は5%であり、電子数にすると400個である。この違いの理由は何か、すなわち、実験値は何で制限されているのか。

Fano factor(F)は、σ2=F N、Nは統計数(例えば電離電子数)である。A.Curioni (Columbia university, 2004)のD論によると、Liq.Xeでは、F=0.041であり、σ/N=0.2/√Nとなり、エネルギー分解能は統計誤差以下となる(以上、東の説明)。したがって、上記の問題点はさらに深刻になる。

Fの説明:γ線はLiq.Xe中で全エネルギー(Eo)を電離 (Ei)、Xe励起(Ex)などの相互作用で失う。ここで複数の電離(Ni)と励起(Nx)が起こり、それぞれの反応数はその統計誤差(σi, σx)でふらついている。しかしながら、それぞれの相互作用でのエネルギーのふらつきはバランスしている(Eiσi=Exσx)。それぞれのエネルギー損失の和は一定でγ線のエネルギーである(Eo=NiEi + NxEx)。電離数は全エネルギーを平均電離エネルギー(εi)で割ったものである(Ni=Eo/εi)。測定される電離数(エネルギー)の誤差は上の電離数の統計誤差にFano factorがかかったものである( σi2=F (Eo/εi) )。

問題の指摘は上記のD論でもあり、本打ち合わせ後、その"fundamental reason"として参照されている論文(E.Aprile et al., NIM A307 (1991) 119) では以下のように説明されていることがわかった。
『Liq.Xe, Liq.Ar中でのparallel plate ionization chamber(3.5mm gap)中、α源(Am 5.49MeV, Po 5.31MeV)を用い、エネルギー(測定電荷量)とその分解能をchamberにかけられた静電場(0.05kV/cm - 20kV/vm) の関数と測定した結果を示している。測定電荷量は静電場とともに(saturationしないで)増え続け、エネルギー分解能は減っている。その傾向はLiq.Arの方が顕著である。この測定結果は静電場によって電離電子のrecombinationの確率が下がっていることを示している。2 (10.5)kV/cmでの測定電荷量の割合はLiq.Xe で4 (7)%である。エレクトロニクスのノイズを除いたエネルギー分解能(2.5% FWHM at E=5.49MeV, 10.5kV/cm)は、recombinationで失う電離電子の統計誤差で決まっている。』
したがって、この論文によると"fundamental reason"はrecombinationとなる。ただし、この論文は測定結果が主で、recombinationを取り入れたsimulationとの比較はなされていない。また、LIq.Xe中10.5kV/cm以上の静電場でエネルギー分解能が大きくなる理由は示されていない。simulationにより定量的な理解が必要と思われる。

3. 春山:冷凍機システムの準備状況(PSIより電子メール)

「KEKでの実験装置の設計と物品選択、発注の準備を始めています。測定器開発室棟(仮称)での組み上げ、試運転、データ取得などについて、中村さんの学生さんが参加して修論の一部にすることも考えられます」

4. 議論:測定器開発室棟(仮称)の部屋割

前回打ち合わせで『選択した』収納庫・整理室より隣の電源室のほうが外からのアクセスが用意でよいのではないかとの提案があった。それは液化システム用に液体窒素を運び込むときに便利ではないかという理由からである。議論の末、その主な理由について春山に問い合わせることになった。 彼の返事を以下に示す。
「電源室の最終的な環境がよければそこでも大丈夫でしょう。液体窒素は部屋に運び込むのは10P 位の容器でも十分なので近くまで来ていれば大丈夫と思います。ただ将来的に発展することも考えられるので広い部屋も魅力的です。もし来週どうしても確定しなくてはいけないということでなければ、一度私が見てからということにしていただけませんか。」
上のメールを測定器開発室長の幅さんに転送し、同様のことをお願いした。