装置・方法: Section 1: ドリフトチェンバー 今回使用したドリフトチェンバーについて説明する。 1) Rotation chamber [for Lorenz angle measurement drift chamber] 図????−1 このドリフトチェンバーは、外形310*260*242mmで、上面、下面にミラーが設置されていて、反射してきたレーザービームは上面に設置された石英の窓(150*50mm)を通ってチェンバーを通過し、同様に下面の石英の窓を通って出て行く。このチェンバーは外界からの電磁ノイズの防止と、ワイヤー方向を中心軸とした回転のために、私自身が設計した外郭部(シールド部)と回転部(ロータリィ部)を持っている(????*????(図????−2参照))。本実験では、この外郭部と回転部によって、ワイヤー方向による空間電荷効果の影響を求める事が出来る。また回転時の誤差は?????度である。 [ドリフト領域]: このドリフトチェンバーには10枚の銅版によってドリフト領域が5cm形成されている、この銅板は厚さ1mmで各銅板間には5mmの間隔がある、その一番端の銅板には-2.2kVの高圧が掛かり、そこから2.2M oumの抵抗を介して10枚の銅板を伝わり、5cmのドリフト領域の電場を一様にする。個々の銅板には図????-3の様に????*????の溝があり、10枚の銅版間を通過した荷電粒子やレーザービームはガスとイオン化を起こし電子を取り出す、ここで飛跡に沿って出来た電子のドリフト時の回り込み(アイソフロン)を防止し、センスワイヤーに対して一番近い飛跡付近に出来た電子の信号を取り出せるようになっている。 [ガス増幅領域]: ガス増幅領域には2本のフィールドワイヤー(センスワイヤーの上下)と1本のセンスワイヤー(アノードワイヤー)があり、センスワイヤーからフィールドワイヤーまでの距離は5mmとなっていてドリフト電子はこの領域でガス増幅(電子雪崩)を起こし信号として検出される。センスワイヤーには金メッキ-タングステン(直径30micro m)を使用し、張力70gで張ってある、またフィールドワイヤーには金メッキ-モリブデン(直径120micro m)を張力300gで張ってある。このドリフトチェンバーにはドリフト領域とガス増幅領域を隔てるスリット(???*??)がある。このスリットはガス増幅を起こした際、陽イオンのドリフト領域への進出を防止している。 このドリフトチェンバーはlorentz angle測定用に開発されたものであり(1998年に当研究室の岡崎氏製作)、ドリフト電子のセンスワイヤー方向到達位置測定のためにセンスワイヤー後方にカソード・スリットが設置されているが今回の測定では使用していないため説明を省くとする。 2) baby chamber [mini-jet cell type drift chamber] 図????−1 ジェットセルタイプのドリフトチェンバーは高エネルギー実験において近接した粒子の飛跡の検出に適している。高エネルギーで衝突し出てきた粒子がジェット状に放出される、このジェット状の飛跡検出を目的としてジェットセルと呼ばれる。稼動中のものではOPAL jet chamberがある。このセルの特徴は、1つのセル内にセンスワヤーが数本???ある。−>調べる このドリフトチェンバーは、外形????*????*????で15本のセンスワイヤーと、????本のフィールドワイヤー、????本のシールドワイヤー、????本のダミーワイヤー、????本のグリッドワイヤーからなる。3つのセルを持ち、1つのセルは5本のセンスワイヤー、34本のフィールドワイヤー、6本のゼロワイヤー、42本のシールドワイヤー、2本のダミーワイヤー、16本のグリッドワイヤーによって構成されている。 センスワイヤーは金メッキ-タングステン(30micro m)で張力????gで張られていて、ドリフト電子のガス増幅による信号を検出するために2.5kV~2.8kVの高圧が掛けられている。フィールドワイヤー、ゼロワイヤーには、??????(?micro m)で張力????gで張られていて、電子を一様な電場でドリフトさせるために-4.6kVから0kVまでの高圧が(ワイヤーの列を表すF-10~ZERO(f-0)の名称で)それぞれ掛けられている。またセンスワイヤーで検出する事の出来る最大のドリフト距離は5cmである。シールドワイヤーは、??????(?micro m)で張力????gで張られている。このドリフトチェンバーは3つのセルを持っているため、隣り合う他のセルの作り出す電場の影響を防止する事と、ドリフト領域の電場、ガス増幅領域の電場を一様にする事を目的として-1.675kVの高圧が掛けられている。ダミーワイヤーは、??????(?micro m)で張力????gで張られている。もし荷電粒子がフィールドワイヤーやシールドワイヤーに当たってしまった場合、ワイヤーを構成する原子との相互作用で電子が取り出される、この電子は電場によってドリフトしていくのだが、この電子による信号を排除(吸収)し、セル内を通過した荷電粒子の信号のみを正確に検出する事を目的として2.15kVの高圧が掛けかれている。 グリッドワイヤーは、??????(?micro m)で張力????gで張られている。これは、ドリフト領域とガス増幅領域の境を作り、且つガス増幅領域を5mmで一様な同心円状に形成するために-0.5kVの高圧が掛けられている。以下に、それぞれのワイヤーの簡単な一覧表を示す。 [1セル 5*5cm] ワイヤー名称    :本数 : 役割 :高圧 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- センスワイヤー   : 5 : 信号検出   : +2.5~2.8kV フィールドワイヤー : 64 : ドリフト領域形成        : -4.6kV~0.682kV ゼロワイヤー    : 6 : ドリフト領域形成       : 0kV シールドワイヤー  : 42 : 別セルの影響防止       : -1.675kV ダミーワイヤー   : 2 : ワイヤー衝突時のドリフト電子の吸収 : +2.15kV グリッドワイヤー  : 16 : ガス増幅領域形成       : -0.5kV このドリフトチェンバーの前面に????*????cm(厚さ1mm)の石英の入射窓を設置しレーザービームを入射する。チェンバー内を通過したレーザービームは後面のマイラーの窓を通過して出て行く。このドリフトチェンバーはKEK 富士実験室B4にある4.6mの大型なチェンバーの小型試作機として開発されたものであり、4.6mチェンバーに対してベイビーチェンバーと名づけられた(1993年に当研究室の黒岩氏とJLC-CDCグループによって製作)。 本実験では、図????-2の様にレーザービームをセル1、セル2を通過するように入射する。このセル1、セル2のセンスワイヤー(1~10まで)の情報をFADCによってデータ収集する。 Section 2: Nd-YAGレーザー(4倍高調波-266nm)[Nd-YAG Laser]::::::→調べる 1) 装置: 今回の測定では、荷電粒子に見立てた紫外線のレーザービームを使用している。このレーザーについて以下に示す。 このレーザーの概略図を図????-1に示す。左から、Qスイッチモジュール、フラッシュランプ、ビームロッド、波長変換機、温度コントローラー、ミラー1、ミラー2となっている。Qスイッチモジュールには、ポッケルセルと呼ばれる結晶があり、この結晶に高圧をかけると偏光した光を出す、このタイミングは10msecとなっており、このレーザーの繰り返し発振周波数(10Hz)となる。10Hzで発振された光はQスイッチへ送られる、これはレーザービームを発射制御するためのものである。次にフラッシュランプ(図????-2)にはネオジウムの結晶が図の様にあり、これに高圧をかける事でネオジウムを励起する。励起されたネオジウムイオンは基底状態に戻る際に波長1064nmの光(光子???)を放出する。このメカニズムがNd-YAGレーザーの最も基本的なスタンスである。(また、このフラッシュランプ内には冷却水が通っておりネオジウム結晶の汚れ防止のため、レーザーを使用しない時であっても週に1度は電源を入れ冷却水を回すとよい。)ここで発生した光はビームロッドを通り波長変換機へ送られる。この変換機の中にはカリウム・ジュテリウム酸塩の結晶があり、この結晶中を光が通過する際の相互作用で波長を2倍にする(pulse matching)。1064nmの光が1次結晶を通過し -> 532nm ここで、2次結晶を通過すると -> 266nmの紫外線となる。また、この発振振動数を安定にするために温度コントローラーが取り付けられている。これを通過した後、ミラー1、ミラー2の反射を経て波長266nmの紫外線レーザービームは発射される。 2) 諸仕様:今回使用したNd-YAGレーザーの仕様について示す。   型式          :Quanta Ray GCR-130(Spectra-Physics社93年式)   外形          :ビームガンユニット    :114*33*21 cm               :冷却、コントロールユニット:????*????   運転モード       :パルス クラス         :(1064nm ->4)               :266nm ->3b (レーザー安全基準JIS C 6801、及びJIS C 6802による) ビーム幅        :8~9mm 波長          :(1064 nm)             :266 nm   発振周波数       :10 Hz   出力          :(1064nm -> 450 mJ)               :266nm -> 50 mJ 1光子当たりのエネルギー:4.68 eV パルス幅        :4~5 nsec section 3: 空間電荷効果を調べる方法[Charge ratio measurement] センスワイヤー近傍で起こる空間電荷効果(local space charge effect)を調べる方法について以下に示す。 1) 図????-1の様に2本のレーザービーム入射した場合のパルスをパルス1、パルス2に分ける。ここで、時間的に早いほうを1、遅いほうを2とする。この場合、パルス2はパルス1による陽イオン(空間電荷)によって影響を受ける。次に、パルス2だけの1本入射の場合は空間電荷の影響を受けないため、その状態をノーマルだとする。本実験では、このノーマルの状態と空間電荷の影響を受けている状態を比較することでこの効果を定量的に調べる。 2) JLC-CDCで予定しているストリーマー領域では、gas gainは5*10_5程度である。この状態で宇宙線測定を行ったときのデータでは1つの電子がおよそ5*10_5個に増幅すると考えられる。すなわち、 1.69*10_19*5*10_5=8.????[q] の電荷がワイヤーに分布することになる。また、今回使用した、ミニジェットセルタイプのドリフトチェンバーは、図????-2の様に1つのセルが受け持つトラックレングスが1cm、その1cmの飛跡に沿ってクラスターは10~30個出来る、1クラスターには電子は3個あるとすると、およそ100個の電子がレーザービームの飛跡に沿って出来ることになる。 次に、ガウスの法則 2pi*epsilon*??????????より ワイヤーの単位長さ当たりに分布する電荷量がわかる。 3) レーザービームのイオン化によるドリフト電子のgas gainも5*10_5であるとすると、(2)の計算より増幅電子の電荷量(q)とワイヤーの単位長さ当たりに分布する電荷量がわかる。 以上の方法で2本のレーザービームの距離を変えた場合と、パルス1の増幅電子の電荷量(q)を変えた場合を測定する。レーザービームのビーム間距離依存性と、増幅電子の電荷量依存性を調べ議論する。