HCAL Monte Carlo Simulation

筑波大 HCAL simulation code package(simcal)


1.Geometry
ジオメトリは、下の図のように構成されている。

BEAM上流から、2層のトリガーカウンタ、HCAL本体、OLDCAL,Leakage counter(実際のモジュールでOLDCALの鉛の入ってない最終層に該当するもの)が並んでいる。 HCALとOLDCALは、4mm厚の鉛2枚と2mm厚のシンチレータ1枚で一組となっており、HCALはこれらが80組、OLDCALは45組並んでいる。(ただし、これはE912のGeometryで、T411-2の場合は、OLDCALは10組でLeakage counterは無い。)
HCALのシンチレータは、20cm*20cmのシンチレータを5*5=25枚並べた構造になっている。
一方、OLDCALのシンチレータは、1m*1mの大きさの、1枚のシンチレータが入っている。
また、これらは、下図のように、鉄のアブソーバーで囲まれていて、HCALからのシャワーの漏れが測定できるようになっている。


2.Cutoff kinetics of shower particles

まず、GEANTで設定するパラメータのうち、各粒子のcutoff kineticsをいくつに 設定するべきかを知る必要がある。 そこで、入射粒子(e,pi)ごとに10keV-10MeVまでcutoffを変化させ、その時のsimulationの結果を比較した。
(gamma,electron,neutral&charged hadron,muon全てに対するcutoffを同時に変化させた。)
まずは、electronを入射した時の、cutoffに対するHCALの応答の変化を下に示す。
入射エネルギーは10GeV,200GeVの二種類である。

縦軸は、入射エネルギー10GeV,200GeVそれぞれについて、cutoffが10keVの点を1として 規格化したHCALの応答である。 これを見ると、cutoffに応じた変化の様子は、入射エネルギーについてはほとんど変化が見られない。 また、cutoff=0.5MeV付近にピークが見られ、そこではcutoff~10^-2Mev周辺の比較的平坦な場所に比べて、10%ほど大きな応答が見られる。
これは、本来シンチレータを通過するはずの粒子が、そこでcutoffに達して止ってしまい、その時点でのエネルギーを全てシンチレータに落としてしまうため、と考えられる。

次に、electron入射時の、cutoffに対するsigma/Eの変化の様子を下に示す。
Eで割る前のsigma自体のcutoffに対する変化を見たものが下図である。

縦軸は、HCALの波高分布をgaussian fitした時のsigmaの値を、cutoff=10keVの点を1としてnormalizeしたものである。
これを見ると、幅(sigma)自体は、入射エネルギー10,200GeVの場合共に、cutoff=100keV付近まで単調減少している。
しかも、よく見ると、入射エネルギー200GeVの場合の方が、cutoff=1MeVより下あたりでの落ち方が遅い。(むしろふくらんでいるようにも見える。)
入射粒子がelectronの場合(シャワー粒子がe,gammaの場合)については、cutoff=100keV-1MeVのオーダーには、本来止まるべきでない粒子がシンチれータで止まってしまう、という現象が存在するので、これは避けるべきであろう。HCALの応答、sigma/Eがなるべくcutoffによらない領域を選ぶには、大事をとって、e&gammaに対するcutoffは10keVに設定すべき、という結論を出した。

次に、入射粒子がelectronでなくpionの時の、同様のプロットを示す。 まずはHCALの応答の変化を下図に示す。

縦軸は、electronの場合と同じく、cutoff=1keVの点で規格化したHCALの応答である。
electronと同じく、入射エネルギーによらない振る舞いが見られる。(少なくともcutoff<3MeVの領域に関しては)
ただ、入射エネルギー200GeVの時に、cutoff=500keV付近で少しだけ応答が大きくなっている。
これは、ハドロンシャワーの中の電磁シャワー成分が、electronを入射した場合と同じ現象によって、大きな応答を引き起こしているのではないか、と思われる。
ともあれ、シャワー内のハドロン成分について言えば、cutoff<1MeVで、HCALの応答はほぼflatである、といえる。

次に、同じくpion入射時の、cutoffに対するsigma/Eの変化を示す。
これも、入射エネルギー200GeVの場合に関して言えば、上と同じ理由で極小が見られるが、入射エネルギー10GeVの場合は、cutoff<1MeVでほぼflatであるといってよい。
よって、neutral hadron,charged hadron,muonに対するcutoff kineticsの値は、500keVで充分であると結論した。
3.E912 simulation
以上のように決めた状態で、GEANT3によるsimulationを開始した。
入射粒子と入射momentumは、実際のビームテストに沿って、以下の様な組合わせで行った。
e- 9.7GeV
e- 27.7GeV
e- 56.4GeV
e- 84.4GeV
e- 101.3GeV
e- 187.9GeV
pi- 9.8GeV
pi- 23.9GeV
pi- 49.1GeV
pi- 73.3GeV
pi- 96.6GeV
pi- 146.6GeV
pi- 201.1GeV
simulationにより生成されたデータは、シンチレータへのEnergy Depositの値で出てくるので、これを実際のシンチレータの光量からphotoelectron数へ直し、その上でPMTの光電面で生じるphotostatのゆらぎの大きさを計算しなくてはならない。
この、Energy Depositを光量に換算する際、以下の変換係数を用いた。
HCAL ... 2.7 photoelectron/Energy deposit[MeV]
OLDCAL ... 3.48 photoelectron/Energy deposit[MeV]
(これらの値は、中川さんがベンチテストの結果から計算したものだが、どの程度の精度の計算を行ったのかは不明。いずれ確かめなくてはならないだろう。)
このようにして、simulationで実際のビームテストを再現し、HCALの応答をpes(photoelectrons)に直して、入射エネルギーに対する変化をプロットしたものが下図である。

3.T411-2 simulation
mail:satoru@hepsg3.px.tsukuba.ac.jp