第2回ナノメータBPMミニワークショップ報告
2003.11.14、田内(文責)
2003年11月4〜5日の2日間、KEK(3号館1階会議室)で第2回ナノメータBPM ミニワークショップが開催されました。(第1回は2003年3月11〜12日にKEKで開催された。)世話人は田内(KEK)とMarc Ross(SLAC)です。参加者は、SLACより2名、LLNLより1名、UKより5名、残りはKEK,国内で総数約30名でした。
このミニワークショップの主な目的はATFの取りだしビームラインで空洞型BPM(Beam Position Monitor)を用いて可能な実験・研究を議論し評価することです。特に、ナノメータレベルの位置分解能を持つBPMシステム(nanoBPM)の開発が基本となっています。以下に、主な議論のまとめをプログラムの順に簡単に述べます。
Results of Nano-BPM studies - Updates of electronics and analysis, M. Ross
最初に、前回のワークショップ以降行われたNanoBPM実験の報告がM. Rossより行われた。この実験では3個のBINP製BPMをSLAC製の支持・可動架台に載せて位置分解能の測定が行われた。2個のBPMによるビーム軌道(直線)から残りの1個のBPMの位置のずれより求められた分解能は91nmであった。各BPMでのビームの位置(x,y)と傾き(x',y')そしてビーム強度(I)の13パラメータ間の相関を対角化して得られた最高の位置分解能は43nmであった。当面の目標である2nmの分解能に向けて、エレクトロニクス、解析方法の更新、LLNLグループによる支持システムの製作を行っていることが報告された。また、BPMのビームによる較正方法の確立も必須であり、さらなるビーム軌道の安定化(現在値=4um r.m.s.)の重要性が述べられた。
Livermore support system, J.Gronberg
続いて、J.Gronbergにより、LLNL支持システムの製作状況の説明があった。それは直径約40cm、長さ約60cmの強固なチューブ構造を特徴としている。3個のBPMはヒンジを持つ支柱によりこのチューブに精度よく設置されるが、それぞれには能動的可動装置は持っていない。それらの機械的な共鳴周波数は約200Hzと計算されている。チューブはlinear actuatorを持つ4本の脚で既存のガーダーに固定される。現在のところ製作中で来年1月に組み上がり振動試験などを予定している。
Improvements during this summer shutdown at ATF, H. Hayano
ATFの現状と夏期シャットダウン中の改善個所そして2003-2004年の予定などについて早野が報告した。現状として、多バンチフォトカソードRF電子銃、多バンチエミッタンスそして新しいレーザーワイヤーシステム、多バンチ用BPM,Optical Diffraction Radiation(ODR) monitor, 空洞型BPMなどの設置・試験状況などが述べられた。この中で、特に多バンチビーム運転上問題となっていたのは、放射線管理上ビーム強度が低く制限されていたこと、couple bunch longitudinal oscillationが原因と思われる大きなエネルギーのふらつきであった。10月20日の運転再開までの夏期シャットダウン中に、電子ビーム強度の法的制限が上げられこれまでの3倍の強度をダンピングリングに入れることが可能となったこと、LINACと取り出しラインの配置の再調整、DR-RF系専用の冷却水施設の新設などによる冷却水温度の安定化が行われた。また、12月には、取りだしラインでのエミッタンスのx,y couplingを少なくするため取り出し用キッカーの真空容器をセラミックのものに交換する予定である。今後、レーザーワイヤーによる高強度多バンチのエミッタンス測定、そして上記の問題の研究を詳細に行う。また、nanoBPMの研究、FEATHER(FEedback AT High Energy Requirements)による高速フィードバック研究も継続して行う。2005年には、GLCTAへATFビームを供給する予定である。
KEK support system, Y. Honda
KEKでのnanoBPMの支持システムについて本田が報告した。LLNLの場合と違って3個のBPMはそれぞれ独立の能動的可動装置(x,y,x',y'の4自由度)を備えた架台の上に設置される。これらの可動装置は弾性ヒンジとピエゾ素子で制御されている。(100um,100urad)と(1um,1urad)の可変領域により2種の可動装置が組み合わされている。(x',y')の回転軸はBPM中心を通るように設計されている。特に、大きな回転を伴うX'可動装置のヒンジは回転中心が2〜3mm以内で変わらないように構造を工夫した。この部分はプロトタイプを製作し検証することにした。このプロトタイプは11月末に完成する。大きな可動範囲を持つピエゾ素子の荷重試験(50kg重)を行い、荷重の上下によるヒステイリスが10um程度あったが、荷重による問題はないことを確認した。また、2〜3時間内での位置の保持は1um以内であった。可動方向によるヒステイリスのため可動後の位置の測定は必要である。そのためにレーザースポット位置をQPD(4分割されたフォトダイオード)で測定する予定である。QPDの試験をすでに行っており、その位置分解能として100nmは容易に達成することができた。能動的可動装置用の位置検出器としてマイケルソン干渉計を組み立て安定性の試験を行った。位置分解能は周囲の温度などの外部環境に主に依存し、1分間では1nm、3時間では1.7nmであった。能動的可動装置のプロトタイプを製作し機械的共鳴周波数を測定した。それはBPM相当の3kgの荷重の有無でそれぞれ1kHzと4kHzであり地盤振動に対して十分に高いことを確認した。また、干渉計を組み合わせて能動的可動試験も行った。このフィードバックは100Hz以下の変動に対してステップ応答を示し、20nm程度の変動に対して0.35nm(r.m.s.)の安定性を示した。
Support system of reference bar and vibrational property of the KEK system, H. Yamaoka
上記の3個の独立したKEK支持システムは花崗岩製の定盤・ガーダーの上に設置され、3つのBPMの垂直位置は同じ定盤の上に固定された1つのリファランス・フレームとの距離を干渉計により求められ、能動的可動装置で安定化される。この定盤・ガーダーとリファランス・フレームの設計について、山岡が報告した。リファランス・フレームの全体の大きさは240mm(幅) x 530mm(高さ) x 1160mm(長さ)である。断面がL型のヘッダ部は88kgのアルミニウム製でSUS製(37kg)の4つの脚で支持される。アルミニウムは軽量ということで選んだが、熱膨張係数が2.35x10-5/℃と大きい。したがって、熱膨張係数が5x10-7/℃と小さく軽量(ρ=1.6)のCFRPも検討したい。リファランス・フレームは厚さ40mmのSUS製の板に固定され定盤(1000x1500x200mm3, 900kg)の上に設置される。定盤は100mm(幅)x 50mm(高さ)の鉄製チャンネルで組まれたガーダーの上に設置される。この全システムはFEM解析された。リファランス・フレームのヘッダ部中央での下方への変動値は20umと計算された。共振振動数は第1,2,3,4共鳴点で40,53,66,87Hzであった。ここで、ボルト締めの部分も含めてすべての結合部は溶接のように強固なものしたため、実際にはこれらより共振周波数は小さくなると思われる。また、今年9月1日正午ころに測定されたATF床上で測定されたpower spectrum density (PSD)を入力してスペクトラム解析を行った。リファランス・フレーム上では、10Hz以下で地盤振動にほぼ追随し、第1共振点で垂直(水平)方向に対して10-19(17)m2/HzのPSDであった。
Discussion: assessments of the KEK system
nanoBPMの位置分解能の目標値である2nm以下を考えると、地盤振動による影響は元より、(1)温度、(2)10マイクロガウス程度の漏れ磁場、(3)ビームライン中にあるベローズなど『不均一な』個所やBPM空洞内でのビーム通過によるウエイク場などの影響をどのように制御できるかが重要であることが強調された。KEK支持システムに対して、リファランス・フレームが4本の脚で厚さ40mmの板に固定されるため、板とフレームがゆがみやすということが指摘された。特に、システム内での温度勾配による影響を慎重に検討しなければならない。
Plan for nano-BPM studies in this fiscal year, M.Ross and T. Tauchi
NanoBPM研究の今年度のスケジュールについて議論された。詳しくはNanoBPMホームページ上で更新される。LLNLのnanoBPM支持システムはLLNLでの振動試験、SLACでの総合試験の後、2004年2月15日にKEKへ送られ、ATFへは2月28日〜3月8日に設置される予定である。KEKでは、2004年2月までに少なくとも3個のKEK製nanoBPMそしてKEK支持システムを製作する。実際にATFへの設置は3月以降となる。
X-band cavity BPM R&D at KEK, T. Naito
KEKでのXバンド空洞型BPM(TM11モード、11.37GHz)のR&D(SLACとの共同研究)について内藤が報告を行った。XバンドLINAC-Q磁石用のBPMの開発が目的で、300nmの位置分解能を目指している。その設計はSLACが行い、KEKの工作センターで製作しそのコールド試験を行っている。空洞のギャップ(深さ)は3mmでビームパイプの半径は6mm、そして4個の導波管の大きさは3 x 18mm2である。導波管と空洞の間は壁で隔てられおり、磁気的なcouplingを持っている。また、リファランス空洞も一体化されている。空洞内に針状のアンテナを挿入しその位置を変えることによりTM11モードの電磁波を誘起してそれより位置を測定した。アンテナ先端と測定位置の直線的な相関より、位置分解能として229nmが得られた。今年度の間にBPM1号機が鑞付け製作され、同様のアンテナ試験の後、2004年4月ころからビームテストをする予定である。
C-band cavity BPM R&D at KEK, Tohoku Gakuin University, Y. Inoue
KEK製nanoBPM(Cバンド)の開発研究の報告を東北学院大学院生(D1)の井上が行った。このBPMはKEK支持システムに組み込まれる予定である。現在、低パワーモデルの試験を行っている。この主な目的は空洞の電気的中心と機械的中心位置の差の精密測定である。その差が10um以下であることを確認し、初期の位置合わせのみで十分なダイナミック・レンジを持ち高精度の位置分解能を持つことができることを検証したい。空洞のギャップ(深さ)は12mmでビームパイプの半径は8mm、そして空洞の直径は53.7mmである。4個の導波管は全体の外径75mm以内になるように直角に曲げられている。この構造によりQ磁石の表面に容易に取り付けられるようになっている。また、導波管と空洞の間にはcoupling用の窓が開いている。機械的中心は空洞全体の外径の中心としてLED/CCD 光学的マイクロメータで測定し、その精度は2um程度であった。また、電気的中心はアンテナ試験により求めることができる。予備段階の結果としてそれらの差は49umであった。位相とビーム強度測定用のリファランス空洞も一体化される予定である。ビーム試験用のBPMを2004年2月までに製作する。エレクトロニクスはすでに発注済みで12月中に納入される。
Studies of vibration isolation system with active feedback at KEK, R. Sugahara
KEKでの防振台試験結果の報告を菅原が報告した。この防振台は空気のアクチュエータにより能動的フィードバック付きのもので、地下15mほどの大穂実験室で試験を行った。防振台の大きさは1.2m x 1.2mで高さは0.5m、自重は1,100kgで500kgの荷重をかけられる。振動検出器として加速度計(分解能 0.1mgal)6個を防振台上に、3個を床に置いて振動測定した。空気スプリングのないときの共振周波数は40Hzであった。空気スプリングを活かしたとき、高周波振動は減ったが、3Hz付近の振動が励起された。能動的フィードバックを活かした時明らかな共振は見られず、10Hz以上の高振動はPSDで2桁ほど小さくなった。また、能動的フィードバックは人間の、特に女性の声に敏感に反応することが分かった。性能試験は始まったばかりであるので、能動的フィードバック制御用のパラメータの最適化などが必要である。
Stabilization projects at SLAC, J. Frisch
SLACでの安定化プロジェクトのついてJosef Frisch(SLAC)が報告した。このプロジェクトの目的はLC衝突点で1nm程度でビーム(軌道)を安定化することである。ここで、重要なのは機械的な物はナノメータレベルでは決して安定ではないことである。検討課題として、(1)遅いビームを基準とする安定化、例えば10分以上のフィードバックでルミノシティーを安定化するもの、(2)速いビームを基準とする安定化、例えば、衝突点でのdeflection scanに基づく120HzのNLCフィードバックであるが、これは10Hz以下で100%のフィードバック補正を達成することができる、(3)レーザー干渉計や慣性検出器(inertial sensor)による電磁石位置の安定化、(4)ひじょうに速いビームを基準とする安定化、いわゆるトレイン内フィードバック(FEATHER, FONT)、そして、(5)ナノメーターの分解能を持つBPMによるビームを基準とする安定化である。ここでは、(3)と(5)について述べる。
レーザー干渉計は市販品を利用することができる。例えば、Zygo社のZMI-4004で1回の干渉パターンで0.31nmの分解能を持つ。そのレーザー頭部の安定性は0.5ppb/hであるので、1m程度の距離では1nm以下の測定誤差となる。ただし、周囲の温度や大気圧の影響が1ppm/℃、1ppm/2.8mmHg、1ppm/90%湿度のように無視できないので1mの距離で1nmを達成することは困難である。したがって、SLACでは主にinertial sensorによる開発研究を行っている。
すでに市販品の低感度検出器を使用して簡単なブロックの安定化の試験を終了している。現在は、最終収束磁石と同じ機械的特性をもつextended object(長い物)の安定化を市販品の低感度地震計を用いて行っている。また、実際のLC測定器の中でも動作する非磁性の高感度地震計を製作している。これらの支持機構の特徴は一般の防振台と同じように柔らかいということで、フィードバックがないときは大きな振幅を持つが、高周波振動を効率良く減衰でき、また、作動のための力も弱く高い制御性能が期待できる。実際に、作動装置の力は100kgの物を100nm程度5Hzで動かすことができる0.01N程度で十分である。これは面積100cm2で1mmギャップに1kVの印加電圧による静電気力で得られ、剛性も低く制御速度も高くできる。SLACではこの静電気力による作動装置で開発を行っている。簡単なブロックでの試験結果はKEKでの防振台のものと同等に10Hz以上で振動を有効に(PSDで2桁程度に)減衰させフィードバックにより10Hz以下の振動を押さえることができることを示した。extended objectでは磁石支持用のチューブを梁〔ビーム)としたより簡単な構造で8個のsensor(地震計)と8個の静電気作動装置を取り付け試験を行っている。3〜6Hzの共振周波数を持つ柔らかい支持機構であることが確かめられている。共振モード中、6個がobject全体の振動モードであり2個が内部モード(75,120Hz)であった。フィードバック制御用のソフトウエアの更新を行い、フィードバックループの試験を行う予定である。
この試験と平行して高感度(0.1Hz以上で3 x 10-9 m/s2/ Hz1/2 )でしかもコンパクトな非磁性のsensorを開発している。このような要求を満たすものは市販品にはない。プロトタイプを製作し30トンのコンクリートブロックの上に載せ、同様に設置した2個のSTS-2との比較を行っている。このコンクリートブロックは床に敷かれたゴム板の上に置かれている。試験結果はひじょうに予備的なものである。置かれた場所が静かでないためsensor自身のノイズを直接測定することはできないが、それは1(0.1)Hzで1(100)nmと評価している。STS-2のノイズはこのsensorに比べて少なくとも1/4である。また、STS-2との相関は0.05Hz(PSDは4 x 10-8m/s2)までよいことがわかった。STS-2同士は0.025Hz(10-8m/s2)までよかった。アームや重り部分を絶縁物とするなどsensorの改良を行いたい。
ATFでのnanoBPMの安定化として慣性(inertial)と干渉計によるものを検討した。( 注:3個のBPMによるnanoBPMプロジェクトではこれらBPM間の相対的位置をナノメータレベルで安定化することが必要である。) ビームの繰り返しが1〜6Hzであるため低周波数システムが必要である。少なくとも1Hz以下、できれば0.1Hz以下でよい安定化を示さなければならない。またシステムの性能評価のためビームをどのように利用するのかを考えなければならない。SLACで開発中のinertial sensorでは0.25Hで1nmを測定できると思われるが、このような低周波数領域では十分な性能を持たないかもしれない。干渉計、いわゆるoptical anchorシステムでは開発なしで全周波数領域で1nm以下の安定性を得ることができる。ただし、このシステムでは地盤が基準となる。1地点での0.1Hz以下の地盤振動は1nmよりはるかに大きい(SLACでは300nm)ので、地盤上の2点間の相対変動をSTS-2級の地震計で精度よく測定しなければならない。実験室では通常50Hzのミリガウスの変動が観測されるので、ATFの取り出しビームラインでマイクロガウス程度の磁場の変動を測定しなければならない。磁場変動を相殺するようなフィードバックシステムが必要かもしれない。2つのnanoBPMシステム間の距離を考慮しなければならない。将来、次の段階でLLNL-nanoBPMシステムにはinertial sensorを設置し6個の干渉計用レーザービームラインを準備しなければならない。また、能動的フィードバック制御を行うため、この支持システムを柔らかいものに置き換えなければならない。(注:KEK-nanoBPMシステムでは個々のBPM用の能動的可動架台で柔らかい支持システムの代用ができる。レーザービームラインは考慮しなければならない。)
Plan for long bunch train operation (feedforward ), H. Hayano
2重キッカーシステムによる多重トレイン取り出し方法について早野が報告した。ATFの1トレインの構成は時間間隔2.8nsの20バンチであり、長さは53.2nsである。これはGLC/NLCの1.4ns x 192バンチの267nsと比べて短いので、FEATHER/FONTなどの『トレイン内フィードバック』の研究のためには、3つのトレインをダンピングリングの中に蓄積し一度に取り出すことがひじょうに有効である。また、トレイン間の安定性のためにumフィードバックも必要になると思われる。3トレインの入射を1.56Hz, 3.12Hz, 6.25Hzで行うとそれぞれ0.39Hz, 0.78Hz, 1.56Hzで一度に取り出すことができる。リング一周中には入射用キッカーの電源パルスの立ち上がり、立ち下がりの速度60nsそして取り出し用キッカー電源パルスのもの(60ns rise, 80〜150ns fall and ringing)そしてそれぞれのパルス幅60nsと300nsを考えると、3個のトレインを蓄積し一度に取り出すことができる。このためには、取り出し用の2重キッカーへ300nsという長いパルスを供給しなければならない。そのとき、入力コネクター部やキッカー内部での放電、パルスのリンギングなどの調査、取り出しラインのBPMやCTのエレクトロニクスの改良が必要になる。
umフィードバックでは、リング中のビーム軌道をBPMで測定し、その変動を相殺するように、取り出しラインに新設するストリップラインキッカーにフィードバックをかけるものである。このときのBPMシグナルのタイミングはシンクロトロン振動の1周期の95usだけ取り出しより前のものである。これは主な軌道変動の原因はシンクロトロン振動によって作られるエネルギーの変動とdispersionによるものと考えられるためである。
可能なタイムチャートは、(1) 長いパルスのPFL用のケーブルの購入と試験などの準備期間として2ヶ月、(2) タイミング制御エレクトロニクス製作とその準備期間で3ヶ月で、最も早くて2004年2月にビームテストが行えるであろう。また、umフィードバックには、DR-BPMの専用エレクトロニクス(ローカルにPC制御)とストリップラインキッカー製作などに十分な予算措置がすぐにされれば、2004年4月にビームテストが行えるであろう。
FONT status (future plan), P. Burrows
FONT ( Feedback on Nanosecond Timescales )についてUK(Queen Mary, University of London)のPhillip Burrowsが報告を行った。FONTプロジェクト(UK-SLAC共同グループ)は2002年のFONT1、2003〜4年のFONT2、そしてATFでのFONT3(案)と分けられる。FONT1と2はNLCTAに設置されている。NLCTAビームのエネルギーは65MeVであり、1トレインの長さは170nsである。FONT1ではpost-damping ring kickerがSLC dipoleの中に置かれている。ボタン型BPMが1個製作されkickerより4m下流にフィードバック用として設置された。kicker用のドライバー増幅器が製作された(Oxford)。これは3個のplanar triode管(7.5A, 350V o/p)よりなる3kWのもので65MeV電子ビームを±0.5mm(4m下流で)蹴ることができる。エレクトロニクスにはバンチごとの強度変動が大きいためその補正を組み込んだ。フィードバックに要する全時間は65nsで、この中でビーム通過時間やケーブルによるディレイなどの時間は32nsと見積もった。実際には全フィードバックに要した時間は67nsであった。ビームテストの結果、ディレイループも含めて性能を実証することができた。
現在、FONT2を準備している。FONT2では、2個のストリップ型BPM,2個目のkickerの追加、フィードバック用のBPMとkickerとの距離を半分の2mとし、ビーム強度変動を対数型アンプでリアルタイムで補正するBPMエレクトロニクスの改良、エレクトロニクスでの時間の減少を行った。この結果、フィードバック時間は46nsとなりより多くのディレイループ(170/46=3.7)を確かめることができるであろう。また、ビームトレイン内のビーム位置の静的不規則性を修正するbeam flattenerを追加した。新しい半導体増幅器とフィードバック回路はSLACへ送られ、11月第1週に新しいBPMエレクトロニクスを立ち上げ、第2週には新しい増幅器を設置しビームテストを開始する。
FONT3の可能性:NLCTAと ATF(3 train/DR)のビームの トレイン長さ(170nsと 300ns)、バンチ間隔(0.08nsと2.8ns)、大きさ(σy:500umと5um)、ジッター(100umと1um) そしてエネルギー(65MeVと1.3GeV)を比較するだけでも高速フィードバックR&DでATFの有利性が明らかである。ATFでは、フィードバックシステムを用いて、(1)1umレベルでの取りだしビームのバンチトレインの安定化、1umのBPM位置分解能と100W以下の低パワーで高安定な増幅器、(2)100nmレベルでの安定化、空洞型BPMの特別なシグナルの処理(nanoBPMプロジェクト)、(3)トレイン内バンチごとの衝突スキャンシステムの試験、高安定な傾斜を持つ増幅器の開発などが考えられる。BPMとそのシグナル処理、キッカーとそのドライブ増幅器そしてフィードバック回路についての共同開発を行いたい。特に、FONT1と2はアナログシステムなので、デジタルシステムを構築したい。
先週(10月末)、UK PPARCにBDSプロポーザルを行い、高速フィードバック開発研究のために2004〜7年の間で1.7M$の予算の勧告を受けた。また、KEK/ATFとの共同研究も好意的に受け取られた。さらに、クラブ空洞を使ったフィードバックやバンチごとのルミノシティー測定(BEAMCAL)を用いたフィードバックなどを検討している。BEAMCALはビームパイプ回りに置かれるカロリメータ(例えば、PbWO4と真空フォトダイオードなど)である。年から何週にもわたる初期アライメントから各種のフィードバックそしてFONT/FEATHERのナノ秒のフィードバックまでを含んだビームの安定化とフィードバックを集大成するような研究(シミュレーションによる性能評価など)は今後3年間での我々にとって重要なものである。
FEATHER status and plan of the beam test at ATF, N. Delerue
FEATHER ( FEedback AT High Energy Requirements )についてNicolas Delerueが報告を行った。2つのストリップ電極板の距離(ギャップ)が可変であるキッカーと同様に電極間距離が可変のボタン型BPMを製作し10月にビームラインに設置した。キッカー内部を真空としたところ上下の電極板がそれぞれ0.6mmづつ狭まる向きに動いてしまうことを確認した。これは構造上真空による圧力差を支えられなかったことによると思われるが、静的変化であるので実用上問題ではない。インぺーダンスをポンピング中に測定したところ、内部圧力10-3Paを境にして変わることを観測した。真空中でギャップ間隔を変えてインピーダンスの測定を行い、ほぼ設計値である1mmギャップで50Ωの値を得ることができた。ボタン型BPMはフィードバック用のものでキッカーの下流約1mの所に設置した。全フィードバックに要する時間はディレイループがないとき約20ns、あるとき約35nsと見積もった。ここで、増幅器の内部時間は5.6ns、ケーブルによる時間の遅れは7nsである。したがって、ビームの1トレインの長さは56nsであるのでディレイループのテストは可能であろう。また、キッカーの直前(上流)には空洞型BPMを設置したため、このシグナルを利用してフィードフォワワードのビームテストも行うことができる。今回、設置後の3実験シフトでのビームテストの予備的な結果を報告する。この主な目的はキッカー用増幅器とキッカーの性能試験であった。先ず、できるだけ狭いキッカーギャップでビームを通過されるようにビームの軌道補正を行った。今回は目標の1mmではなくて1.5mmギャップでビームテストを行った。400パルス(1バンチ・パルス、1.5Hz)でのBPM平均値でキッカーの影響を測定した。これらBPMの位置分解能は20um程度であるので平均値の誤差は1um程度と見積もることができる。これらのBPMは既設のものでキッカーより上流のものは2個、下流のものは3個であった。キッカー下流で距離に従ってビーム位置が2〜6umになっていることが測定された。今後、1mmギャップのビーム通過を目指し、キッカーへのRFパルス入力方向の依存性(RFパルスの磁場成分の影響の測定)、そのパルスの位相依存性の測定を行う。また、ボタン型BPMと空洞型BPMの較正 も行い、フィードバックやフィードフォワワードを試験する予定である。