第20回リニアコライダー計画推進委員会議事要録(案)

日　時： 平成25年2月14日(木）12:00-17:00

場　所： 4号館1階セミナーホール

出席者：相原、浦川、榎本、生出、岡田、川越、栗木、小林、駒宮、田内、徳宿、野尻、早野、春山、伴、山内、山口、山下、山中、山本(明)、横谷

　　　　　(TV会議出席)岩下、川越、山本(均)

(欠席者)赤井、清家、田内、徳宿、峠、藤井、山田

配布資料：

１．第19回リニアコライダー計画推進委員会議事要録(案)

２．Japanese Bid-to-Host Activities for ILC (LCを取り巻く国際・国内の情勢、指針)

３．加速器全般

４．STF報告

５．ATF-II・ナノビーム実験・報告

６．STF-量子ビーム実験延長(2～3月)

７．LC国内地質調査・立地検討、進捗報告

８．KEKロードマップ：まとめ報告

議　事：

１．報　告

はじめに委員長から、本日の議題、検討事項等について説明があった。今回は３月の物理学会のILCシンポジウムでの発表内容を報告してもらい、本委員会でコメント、インプットをもらい日本物理学会への準備としてもらうことを主としている旨説明があった。

１－１．LCを取り巻く国際・国内の情勢、指針

機構長に代わり岡田委員から、前回委員会以降の国内外の動向、現在進行中の欧州戦略、米国のSnowmass Processの進捗状況について、以下のとおり説明があった。

欧州戦略では、Strategy Groupから３月のCERN理事会に提出する素案が公表されており、今後CERN理事会の了承、欧州の大臣クラスが出席する特別理事会での了承により確定される予定である。現時点での素案では、ILCについては日本のコミュニティーが宣言した日本がホストすることについて関心があるという記載となっており、こうした日本への期待はBelleやT2Kでの実績が評価されたものであると考える。この他、仏のILCコミュニティー及び独の高エネルギーコミュニティーからも日本がホストするILC計画について支持する旨の意見表明が出されている。

米国の将来計画策定は欧州より１年遅れるスケジュールで進んでおり、2014年に確定する予定である。2013年8月にSnowmass Processの集中討議があり、その報告を基に米国のRoadmapが作成される。日本からも関係分野について積極的なインプットが重要である。

アジアでは、野崎教授が2013年１月からACFA議長に就任し、ACFAの活性化を図るとともに、高エネルギー分野に特化したAsiaHEPを設立し、アジア地域での議論を進めていく。また12月以降の国内の動向としては、マスコミ等にアピールするためのシンポジウム等が開催されたり、議連なども開催された。

今後の国内スケジュールとしては、2013年の夏には国内のサイト候補地を一本化し、その後ILC計画の実現に向けたPre-ILC Lab等の設立を目指す。

１－２．LC加速器技術開発・H25推進計画/春のシンポジウムに向けた準備

…ILC技術設計書の完成と今後の展望…

（１）測定器

委員長から、ビデオ会議で接続している川越委員が本委員会途中で退席する必要があることから、報告の順番を変更し、川越委員の報告を先にする旨説明があった。

川越委員から、3月の物理学会での発表の内容について、以下のとおり説明があった。

測定器及び物理に関する発表を行う予定で、学術会議シンポジウムでの報告をアップデートした資料で報告をする。3月のシンポジウムでは報告の順番として、駒宮委員が次に報告する予定となっていることから、内容については駒宮委員と調整をする。

(山内)本委員会とは直接関係はないが、ILC関係で規模の大きい外部資金の獲得を目指していると聞いているが、資金が獲得した場合のKEKへの影響、獲得した外部資金で実施しようとしている内容について伺いたい。

(相原)総予算5百億円の予算に基づく外部資金の公募が行われた。公募期間が非常に短いことから、大学・研究機関等ともトップダウンで申請を作成したようだ。予算の性格は施設建設を目的としており、募集の趣旨は企業と協力によるinnovationである。KEKからは加速器及び応用を中心とした内容で課題申請したと聞いている。

（２）加速器全般

委員長から、物理学会で報告する予定の加速器全般に関する説明があった。

物理学会でのシンポジウムの報告では、ILC加速器の全般に関して、ルミノシティーアップグレード、エネルギーアップグレードも含めて報告を行う予定である。

TDRの内容については、設計パラメーターとしては500GeVである、エネルギーアップグレードを見込んでいる、ルミノシティーは3/4である、という内容で説明する予定である。250GeVの計画は、コミュニティーからの要請に基づき検討するというスタンスである。

これまで、コスト評価も含めたR&Dが続けられてきた。ダンピングリングのパラメーター、トンネルの設計変更などコスト削減の努力を行った。真空パイプの評価にはKEKのスタッフが大いに協力している。

Higgs発見前から、すでにエネルギーが低いことを想定しての議論が行われてきた。250GeVであった場合の対応として、十分な陽電子生成を確保するためには150GeVのLinacが必要であることが分かっており、こういったことがエネルギーが半分になってもコストが半分にならない要因の一つとなっている。

Final Focusのマグネットについては、BNLで製作された超伝導マグネットがSuperKEKBで使用されることから、ILCのための実装試験に相当すると考えられる。そのためSuperKEKBでの経験は、KEKとしてILCに対する大きな貢献になる。同様に、EXFELの実績もILCの実証試験的な位置づけになる。

この他、ナノビームの実証、世界に先駆けてのCavityの実証、ルミノシティーアップブレードのシナリオ、今後のコストダウンの作業について、等を中心に報告する予定である。

物理学会での報告では、コストについて詳細な言及をすべきかどうかは慎重に検討するべきであると考える。不確定な数字は発表できないが、全く言及しないというのも適当ではないかと思われる。

(生出)コストについては、公表できる数字を正直に発表すべきである。

(相原)物理学会の他分野の研究者や研究者以外の一般の人に対してもコストについてはきちんと説明する必要がある。コストの説明をしない場合は、隠ぺいしている、との悪い印象を与える恐れがある。

(委員長)２月のICFA等での発表を見て取り扱いを決めることとしたい。

（３）加速器技術開発の進展（STF）

山本康史助教から、物理学会でのSTFの報告内容について、以下のとおり説明があった。

物理学会のＩLCシンポは、分野外の人も対象となることからSTFの概要などについても説明をする予定である。超伝導空洞の開発の必要性については、ILCのメインLinacに利用されることからその開発が必要である。

STFのインフラとしては、まず電解研磨の設備をKEK内に設置し、企業と共同で研究を行っている。これまで台湾放射光用に使用されていたEP設備を改造して利用できるようになり、2台で効率的に進めている。空洞周波調整システムを導入することでこれまで手動で2日程度かかっていた作業が数時間で終了するようになった。

Phase IIでは14台の空洞を冷却する必要があることから大型冷凍機システムを導入し、増強を図っている。三菱重工では23号機から三原工場で製作しており、電子溶接等これまでとは異なった手法で製作したものとなっている。この他東芝、日立KEKでも製作されている。

性能向上に向けた取り組みとして、温度マッピング、X線マッピング装置、内面カメラ、局所研磨装置により性能向上させることができた。

最近の結果としては、Phase II用8空洞で35MV/mを達成し、HITでは41MV/mの国内最高を記録した。また大量生産用試作機でも36MV/mを達成した。個人的には限界値はもっと上がると考えている。

(委員長)2回の評価であることを考慮する必要がある。

空洞の欠陥の種類としては、空洞内面赤道付近、Iris部分、End call/beam pipe、その他に分けられ、対応としては内面研磨等で補修し、性能向上につながった。

クライオモジュール試験では、Phase Iでの4連空洞で32MV/m同時運転を実現した。

量子ビーム計画では、平均20MV/mで安定運転、studyとしては平均28MV/mで運転しても問題ないことを確認し、性能劣化も起こらなかったことを確認した。

MHI三原工場では大気中でレーザー溶接を行おうとしているが気泡の発生等が予想される。

今後は、35MV/mの高電界の達成、高圧ガス対応でKEK製造空洞の完成、大量生産に向けた工程の改善などがあげられる。

（４）加速器技術開発の進展（ATF）

奥木助教から、物理学会での報告内容及び前回委員会以降のATFの進捗状況について説明があった。

物理学会でのタイトルが「ナノビーム生成」であることから、ダンピングリングは省略しATF2の内容を発表する予定回ある。

ATFのPhase Iは最終収束系・レンズ系技術の確立、PhaseIIは異なる加速器からのビームを衝突させるビーム衝突技術の確立である。ILCではエネルギーの異なるビームを急激に絞ることから色収差を抑えることが重要である。これに対処する方法として、Global Chromaticity CorrectionとLocal Chromaticity Correctionがある。Global Chromaticity Correctionは異なる電磁石で補正を行うのに対し、Local Chromaticity Correctionは同一の電磁石で行うことから距離が短くて済む。Global Chromaticity CorrectionはFFTBですでに試験されてきたが、Local Chromaticity CorrectionはATF2まで試験されてこなかった。

ATF2のビームラインはILCの最終収束系と同じ設計になっている。ただ、ATF2はエネルギーが低いためILCより非線形磁場の影響を受けやすく、Magnetの製作はILCより厳しい要求となっている。線形オプティクスの調整もILCと同じ調整方法となっている。レーザー干渉計を利用したビームサイズモニター(新竹モニター)では、ビームサイズの違いによってレーザーの位相を変えた時にモジュレーションに差が出ることから、このモジュレーションを測ることでビームサイズを測定できるようになっている。昨年末、174度のモードで70nmのビームサイズが測定された。

(生出)ビームサイズは、70nmではなく、60nm +/-10ではないか。

(奥木)PT(??)の博士論文のデータである

Wake function の影響が大きいと思われるのは、ビームが構造物を通過する際に発生する電磁波がビームに影響するからであると考えられる。Cavityを通過した場合、アライメント、ジーターでATF2の方がILCよりも影響を受ける。一方pipeを通過した場合は、ILCの方が長いことからより影響を受ける。

Phase IIでは、3か所のIP-BPMを取り付けそれぞれにピエゾムーバ―を設置している。高分解能BPMは韓国キュンポク大学で開発されている。

続いて、12月の本委員会以降の進捗状況について報告する。

1月23日から25日に開催されたATF Project Meetingにおいて、1)低電流でできるだけ小さいビームに絞る、2)取り出しビームのエミッタンス増及びwakeの問題はハードウェアの改造の可能性があり、改造が可能になった時点で随時行う、3)2013年5月には連続運転できるよう検討する、という方針が出された。

6極電磁石を磁場中心でセットし電源を入れるとビームサイズが大きくなるという現象が発生したことから、6極電磁石を分解し一つ一つインピーダンスを測定したところ、磁石の一つ(SD4FE)に問題があることが判明した。これをSF4FEに交換したところ問題が解決し、またSkew6極電磁石を使わなくてもビームが絞れるようになった。この他、Reference Cavityのwakeの強さの解析、測定を進めた。

（５）状況と展望

駒宮委員から、物理学会ILCシンポジウムの報告内容として以下の説明があった。

前回の物理学会以降の動向としてコミュニティーとしての合意が得られたこと、TDRが完成し、2月から国際的に新たな推進体制ができたこと、を中心に報告する予定である。先ほどの川越委員の報告にもあったとおり、当日の発表内容は川越委員と調整する。

１－２．技術報告

（１）STF-量子ビーム実験延長（2月～3月）

早野委員から、STFの量子ビーム運転の延長について、以下のとおり報告があった。

量子ビーム計画は今年度で終了であるが、4ミラー共振に光を安定に貯めInv-ComptonからのＸ線を捕える、また加速器studyのため2月、3月の2か月間の運転を行うことにした。これに向けて4ミラー共振器のミラー剛性の向上、レーザーテーブルのゴム浮かしから床固定への変更の他、RF gunレーザーの位相変動安定化、共同変動の安定化などの改造を加え、2月後半から3月末までの6週間の運転延長を行う予定である。

（２）国内地質調査、立地検討進捗

宮原特別技術専門職から、地質調査及び立地検討の進捗状況について、以下のとおり報告があった。

地質調査については、連絡会議を定期的に開催し、情報・交換共有を図っている。東北地区、九州地区それぞれにおいて、地表・地形・地勢調査、地下の地質を探索する物理探査、岩盤ボーリングによる地質調査が進められている。特に脊振地方では、活断層の影響がない旨の報告ができそうである。早期に中間報告を取りまとめるよう今後努力する。

立地検討については、野村総研により進められており、国内大学・研究施設(沖縄科学技術大学院大学、国際核融合材料照射施設IFMIF)、欧州関係施設(Orsay、ITER)等を調査している。

１－３．諸報告

（１）　高エネルギー委員会/ＬＣ戦略会議からの報告

山下委員から、ILC戦略会議に関する報告があった。

戦略会議として、ILC推進の文章を作成し、高エネルギー委員会の了承の後、米国SnowmassやECFA、欧州戦略の主要人物に配布するとともに、関連会議で日本側関係者により報告・説明がされて重要なインプットとなっていると考える。

ILC立地評価会議の設立が、１月11日の第11回戦略会議で了承された。川越、山本が共同委員長となり、７月には立地評価に関する結論を出す予定である。

２．ディスカッション

（１）KEKロードマップ：まとめの報告、議論

岡田委員から、KEKロードマップに関して以下のとおり報告があった。

ILCに関する記載についてはまとまったと理解している。2月1日に機構長に提出した最終案の内容はコミュニティーに公表されている。現在は国際評価委員会用として英語版を作成中である。

今後は、4月5日～6日で国際評価委員会を開催し、そこからのコメントを取り入れて最終版を確定し、その後役員会等をKEK内の承認手続き経て確定する予定である。

ILCに関するポイントとしては、『日本がホストするILC計画推進のための国際準備組織を立ち上げ、装置、施設・設備、研究所組織の詳細設計などに取り組み、本ロードマップ期間内（2014年からの5年間）の国際協力の枠組みによる建設着手を目指す。』と記載したところである。前回はR&Dに関する内容であったが、今回のロードマップでは建設フェーズへの移行を見据えて、それに必要なことを明確にした。

（２）日本学術会議への取り組み、今後の展開

相原委員より、学術会議大型研究計画の公募についての説明があった。

2月15日に大型計画の申請書書式が公表される。推薦者が必要で、会員メンバーは所属分野推薦者にはなれない(議論の時に加われない)ため、会員のうち他分野(物性・工学等)の人を推薦人にする必要がある。

ILCについては、学術会議では学問的意義を強調すべき、現状での学問的意義(Higgs粒子の発見により、昔より意義が上がっており、今実施すべき研究である等)、ILCからどのような成果が出るかを中心に説明すべきである。前回の大型計画募集の際は日本がホストするとは書いていないが、今回は日本がホストすると書いてあるので、なぜ日本に建設する必要があるのか、の説明も求められるのではないか。

スケジュールについて6月までに200件に絞り、12月にはさらにそのうちから30件を重点分野として選考する。最終報告が2014年春に提出され、正式決定される予定である。最後の30課題を選考する際は、どのような議論がされるかは不明であるが、その段階では予算も議論の俎上に上るのではないか。

天文分野はTFTが優先順位１位で提案されると思われる。総予算1000億円の内、3分の1を日本が負担するという内容である。

ILCの場合、規模の大きさから行って他分野、特に文化系の課題との比較が可能かは疑問である。

(生出)　詳細設計をしてコスト評価をきちんとするべきではないか。総額の1%程度の予算を詳細設計のために当てることは十分理由があるのではないか。そうしたプロセスを学術会議への提案に加えるべきである。

(山下)　学術会議は、学術的な価値を判断するもので、準備的な詳細設計作業のみを提案するのは適切ではない。ILC提案の内、スケジュールとして説明することは必要であると思われる。

（３）来年度の活動に向けた議論、意見交換

小磯教授から、コメントとして以下の発言があった。

ILCのような大規模加速器プロジェクトの場合、建設モードから運転・実験モードに移行した後には、建設に携わった加速器研究者をきちんと評価して実験グループの一員として研究できる仕組みを作るべきである。加速器専門の研究者のみではなく、物理の研究者も加速器建設に参加する、または加速器建設に携わった研究者をきちんと評価して、物理実験グループに移行できるようなシステムが必要ではないか。

(委員長)これまでもKEKのPSやTRISTAN実験の際もそのような議論があり、わずかではあるが物理の研究者が加速器建設に参加した後、実験グループに移ったケースがある。

若手の育成に観点からも、そのような仕組みを作ることが必要である。

３．まとめ

平成２４年度のLC計画推進委員会は今回が最後である。次回は翌年度(平成２５年度)に改めて開催することとする。

以　上