ILCSC報告:CPDG ( Comprehensive Project Design Guidance )はサイト選択過程のガイドラインを示すために1つの文書ですべての情報を含むものとして、世界で検討されていたものをまとめようとするものである。Siting Working Group (Joachim Mnich, Pier Oddone, Atsuto Suzuki)で検討され、結局、governanceまでをも含むものとなった。GDEでもgovernanceを検討していたが、先週のFALC会議の時にGDEはILCSCにゆずった(CPGDで統一のものとすることに合意した)。
そもそも、パリでのICHEP開催中の 2010年7月24日のILCSCで、CPDGの中間白書を10月までに完成させることに決まった。CPGDは序文で目的と内容の説明を行い、ILC建設開始までのタイムラインを示している。サイト選択のために必要な条件を2012年までに明確にする。2012年のTDR完成までがGDEのMandateである。2012以降Pre-ILC Lab.を結成し、技術的なR&D続行、政府間レベルの交渉に持ち込むこと、おそらくOECDへの提案が主な役割となる。サイトの選択後に、ILC labへ移行することになる。また、governanceの形態として5つのモデルを提案している。その中のモデル-4は多国籍研究所(Multi-National Laboratory, MNL)で、Pre ILC labのモデルとなり、ILC labではモデル-5 ( CERNタイプ)となるであろう。また、サイト選択はオリンピック方式を提案している。それは、先ず、技術的な条件を決め、それに基づき技術的な採点を行い、次に、政治的な採点と決定を行うものである。最新版のタイムラインに基づき、来月(2月17日)北京で開催されるILCSCで、Site Requirement Working Groupを結成する予定である。
FALC報告:2011年1月21日、GDEとのjoint meetingがBAW2開催中のSLACであった。GDEの三つのregional directorとRDからの報告があった。その後、議論があり、GDE Mandate終了後、それまでの遺産をどうするのかなどの質問がFALC委員よりあった。それらの技術応用・利用を政産学一体の取り組みが日本で試みられていること等が紹介された。FNALで特に予算が厳しいためなのか、labで決めるべきこと(2012年以降のことなども)をGDEに質問していたので、それを指摘し、明日のFALCで議論することで終わった。FALCは情報交換の場だけにしたいという強い意向がある。
2. ATF現状
照沼信浩さんから、以下の報告があった。
前回の報告からの進展、特に、ATF2とfast kickerの状況を説明し、その他は省略する。ATF2の目的は、(1) 37nmの垂直ビームサイズの達成と(2) IPでのナノメートルレベルの安定化である。前者は 2011年3月末まで、後者は2013年3月末までの達成を目指している。ATF-DR(ダンピングリング)ではBPMシステムを更新し2pmの垂直エミッタンスの実現を目指している(過去細小のものは4pmである)。また、多バンチ運転の安定化のR&Dも行われている。多バンチはfast kickerにより取り出される。超伝導最終収束電磁石のR&DはBNLと共同で行っており、すでにコイルを巻き終えているが、磁場中心の振動・変動の精密測定の検討を行っている。これのビームによる試験は2013年度以降となる。2012年度以降の将来計画(案)はこれを含めて浦川さんが話される。
夏期シャットダウン後の10月よりATF/ATF2の運転を開始した。10月の2週間のビームタイムはfast kickerのR&Dが行われた。11月と12月には5週のビームタイムがあり、ATF2のビームチューニングが行われた。この内、最後の週(連続ラン)をATF2専用のものとしてビームサイズの細小化が試みられた。通常の週ではATF2用のビームタイムは50%程度である。昨日(2011年1月24日)より運転を立ち上げた。1月13 - 14日にSLACで第11回ATF2 project meeting, ATF TB/SGC meetingを行った。project meetingでは各instrumentationの現状、ビームチューニングの詳細報告と議論、二つの目的達成への戦略などを議論した。特に、今年度末までの7週のビームタイムの計画を話し合った。
夏までのATF2ビームチューニングと夏期シャットダウン時のポールチップ形状の測定等から判明した最終収束電磁石(QD0, QF1)のチルト角(数mrad)を補正した。空洞型BPM(ビーム位置モニター)は基準シグナル(LO)の波高を上げ、200nm (27nm) の軌道位置分解能を達成し、安定な較正をも得られている。括弧内の分解能は20dBアッテネーターを取り外したものである。 これまで較正の不完全であったSバンドBPMもカップリング調整を行いよく較正されるようになった。IP付近の軌道を測定するため、4台のBPMを設置した(IPBPMシステム)。その内の2台はIP用の真空チェンバー内に設置した。また、1ショットでビームプロファイルの測定ができるOTR(Optical Transition Radiation 検出器)を4個(Multi-OTR)設置した。この結果、補正前、分散補正後、カップリング補正後の各段階でのビームプロファイル(断面)を見ることができることになり、これらの補正も高速化できた。例えば、10パルスでスキュー4極電磁石によるスキャンを行える。
- Q 生出:OTRは何台設置したか。
- A : 4台設置し、エミッタンス測定ができる。
- Q 生出:(カップリング補正用の)スキュー4極電磁石は何台設置されているか。
- A : 4台。
レーザー干渉計を利用したIPでのビームサイズモニター(新竹モニター、IPBSM)はビームサイズの大きさにより、2-8度(連続可変)、30度そして174度の交叉モードがある。これらにより、6umから25nmまでのビームサイズを測定することができる。5月の連続ランでは8度モードで300nmのビームサイズを達成している。
11-12月の5週の4週は上で説明したBPM, IPBPMの較正、Multi-OTRシステムの立ち上げと較正、そして、最終収束システム上流での分散、カップリング補正、エミッタンス測定などを行った。
最後の5週目の連続ラン(月〜金)では、上流部からビームチューニングを順調に行い、火曜日(2日目)に直径5umのカーボンワイヤーでIPでのビームサイズが2umまで絞られた。水曜日からIPBSMのビームサイズ測定によるチューニングを開始し、木曜日(4日目)に6度モードで250-400nmまで絞ることができた。30度モード変更後、レーザーが不安定となりレーザービームを絞ることができず、このモードを断念した。この間にレーザー用冷却水の不足によりインターロックで停止し、復旧後もレーザーの安定性を回復することができなかった。IPBSMのタイミングシステム、冷却水、レンズ調整不良などのハードウエアの改善を行った。事前にすべてのモードの試験を十分に行うことなどの運用上の改善も行う予定である。
現状の『大きな多極成分』をもつ4極電磁石(QEA)システムでは50nm程度しか絞ることができないことがシミュレーションで示されている。QEA磁石の中で小さな多極成分をもつものを必要なところのものと交換する(swapping)ことも考慮している。また、スキュー6極成分を補正するために、スキュー6極電磁石を一台設置した。IPでの水平ベータ関数を大きくして多極成分の影響を回避することも試みる。
fast kickerのビームテストでは、パルス電源のタイミング補正回路を追加し、その性能の改善を行うことができた。このテストのため、DRには5.6ns間隔の10バンチのビームトレインが3個入射された。これら30個のバンチがfast kickerにより、307ns間隔で安定に取り出された。ただし、fast kickerの設置によりDRへ入射できる電流の大きさが制限されることがわかった。これはfast kickerのストリップライン電極が熱変形するのが原因と思われる。現ATFでは配置的に無理をしており、高強度ビームでの利用にはリングの大幅な改良が必要である。
- Q 生出:FFTB@SLACではBBAをやっていたが?
- A : もちろん、ATF2でもBBAを行っている
- Q 横谷: striplineのheatingの対策は?
- A : synchrotron radiationは片側のみheatingのはずであるからwake field であろう。
- Q 駒宮: IPBSMで30度モードへ移るとき、ビームサイズが小さくなったことを確かめてからすべきではないか。
- A : その通り、事前にチェックが必要。 運用上の問題を検討中。
- Q 神谷:QD0,QF1の異常なチルトの原因は何か? 他のもののalignmentは?
- A : FFTB@SLACで使用していたもので、ロシア製で、pole chip自身にtilt有り
- C 生出:そういうものは使うべきではない
- Q 山本明:磁場測定しているのではないのか(事前に分かったのではないか)
- A : 磁場測定は主の4極成分に対して測定されている。alignmentは別の問題である。
3. STF現状
早野委員から、以下の報告があった。
S1-Global cryomodule試験、STF phase-2計画と空洞製造設備について報告する。S1-Globalでは31.5MV/mの加速勾配の達成、phase-2ではILC加速ユニットでのビーム運転とcryo-moduleの製作が主な目的となっている。
S1-Global : 9連空洞試験のほか、4種のtunerと2種のinput couplerの試験も行う。空洞はDESY, FNALから2台づつ持ち込み、KEKの4台を合わせて、合計8台使用している。それぞれの空洞4台が2つのcryomoduleに設置されている。 2010年1月から5月に組立てを行い、6月から2011年2月まで運転を行う。cryomoduleでの試験中FNAL,DESYの空洞のうち一台が性能を落とし平均30MV/mで運転でき、KEKのものは平均28MV/mで運転される。試験開始後、FNALとKEKのそれぞれ1台のtunerが故障した。どちらかの故障したtunerのcavityに周波数を合わせるため総7台の運転で試験を行った。KEKのものに合わせたとき最高26MV/mとなり、FNALのものに合わせたとき最高25MV/mとなった。デジタルRF調整による合成でFlat-topからedgeまで60ppm以下でフラットにできた。また、振幅と位相の変動は2時間で0.03%と0.0017度であった。現在、シングルトンネル用のDRFS試験のため、低パワーのクライストロン(50kV, 800kW, 2ms, 5Hz)2台で運転を行っている。今週中に2Kに到達し、来週から2月末まで3週間試験を行う予定である。
Phase-2 : ILC加速ユニットの試験を目標としている。入射部の建設は秋までに終了し、cryomodule(第一module) 組み立てを来年夏-秋に行い、2013年から運転開始する予定である。
RDRから変更のあった高パワーRFシステムのDRFSはSTF-phase-2で実証する予定である。先ず、量子ビームでの試験を2011年10月〜2012年7月まで行い、続いてphase-2のビーム実験を行う。量子ビームではcapture moduleに9セル空洞2台を入れ15.2MV/mのビーム運転を行いレーザーとの衝突からX線の生成を行う。これら2台としてMHI 12, 13号機使用する予定である。MHI 12号機は2回の縦測定で37.5MV/m, 40MV/mとILC仕様を満たしている。MHI 13号機は真空リークがあったが2回の縦測定で36.5MV/m, 32.2MV/mを得た。
- Q 山下 : 表面処理は?
- A : している。内面検査での欠陥を工場にfeedbackしてなくすようにした。また、電解研磨も改善した。
- Q : quenchの場所は?
- A : フランジのシールのところ。
RFガンは日米協力で行っており、3.6MWパワーで今秋から運転を始め2012年1月より電子生成を行う。
Phase-2では、4 cavitiesごとに トンネルへ移動しそこで組立てる。CM1, CM2までは組立てることができる。空洞の4台が完成し表面処理・縦測定が開始された。残り5台は3月以降に製造される。クライオスタットはILC設計に準拠したものを設計中である。
空洞製作施設(パイロットプラント): メーカーを指導できる空洞製造技術の獲得、技術継承と大量生産技術の開発を目的とする。東カウンターホールの隣に建設している。4月からEBW稼働予定である。また、プレス機も設置した。現在、メンバーがドイツでEBW研修中である。空洞の両端部は複雑で、HOM coupler, アンテナなど部品をいかに安く作るかが課題である。空洞は削り出しからプレスまで行う。
- Q 神谷:He冷凍設備は整っているのか。お金は必要か?
- A : 現状のもので3つのcryomodules(CM)の運転が可能である。
- Q : CM数は増えるのでは?
- A : 予算フラットでCM3まで可能である。
- Q 神谷 : S1 Globalのcavityでビームテストは出来ないか。
- A 山本明 : ビームテストは高圧ガス規制のためできない。この決定はKEKの大方針である。
- C 生出:KEKが豹変すればよい。
- C 神谷:CM1台のみのビーム運転はできるのではないか。
- A 山本明:高圧ガス規制ですでに決めたことである。
- Q 生出:KEKの意志の問題でないか。
- A 山本明:もし問題となれば、Super KEKBもとまるかもしれない。STF phase-2は高圧ガス一般でできるようにした。お金がかかるから、手続無しでやれとは一体どういうことか?
- Q 神谷:(Phase−2の)CM1は予算的にOK、 この状況でビーム運転できないのか
- A 山本明:運転は(CM1、CM2と)連続になる
- A 神谷:その話は違う。CM2は(製造に)お金がかかる。
- C 横谷:量子ビームとは違う
- A 山本明:トンネル内を新しくして、高圧ガス規制を通してやるのが大方針である。
- C 横谷:神谷さんの話は、CM1の前にビームを出せないかということ。
- Q 生出:S1 Globalにビームを通せないのか。ちゃんと通すことが重要である。
- A 山本明:それは作る(S1-Globalを建設する)前に国に言う必要がある。
- Q 生出:外国のものはビーム運転に使用できるか?(phase-2の空洞にS1-Globalのものを使用)
- A 山本明:事前に国に説明に行く必要が有る。
- Q 横谷:通せるという根拠があるのか
- A 山本明:どうやって作るかということを説明しなければならない。
4. ATF将来計画
浦川委員から、以下の報告があった。
これは2013年度以降のものである。CERN, Oxford, LAL, FNAL, BNLから意見をもらった。ATF国際協力メンバーの合意を3月末までに得る。提案書を作成しKEKへ5月末までに提出する。CERNからの大量の提案があった。
2012年度末までに、1.3GeV LINACは6.5Hz運転を行い, multi-bunch beamで60mA以上の加速を行う。DRでは3トレイン入射で200mA以上の蓄積を行い、SLAC製取り出しキッカー(300nsパルス幅)で取り出す。また、1-2pmの垂直エミッタンスを達成し、軌道のジッターをビームサイズの10%程度とする。ATF2 IPでのナノメータレベルの位置安定化をこれまでに終えることは難しいが、少なくとも10nmの安定化を行う。
ATF国際協力はMoU(覚書)に基づいて行われてきた。このMoUはICFA guidelineに従っている。機構長のguideline no.5の見直しの提案とともにMoUも見直したい。また、2012年度以降はILC以外の研究も含める。例えば、CLICも含めてLC用のものが70%で残りの30%がapplicationも含めて他のための研究で、その1つの例として200TWレーザーの新規導入とそれと電子ビームとの衝突でnon-linear QED実験がある。
1月14日のATF TB meetingで、2013以降の研究計画の提案を行った。そこでのコメントを下に書き直している。3月の第6回ATF ICB (International Collaboration Board)にその更新版を提出する。
new low Q parameterがBAW-2(1/18-21, SLAC)に提案された。ここでは、low emittanceがbaseとなっている。したがって ATFでのlow emittance達成も重要なものとなっている。
計画の骨子を以下にリストする。
- Super-FQ R&D to make smaller beam size (less than ~20nm).
- Nano beam orbit control (Font study extension). in-kind
contribution /3 years (2013-2015)
- Gamma-Gamma laser system R&D. (2013-2017) (Gamma-gamma collider R&D), laser optical cavity system R&D で、 現在、4-mirror cavity test中である。
- CLIC related issues ( Ground Motion:GM feedforward system , CSR instability, super wiggler, BPM test, ATF3など ), この中のCSR (Coherent Synchrotron Radiation) studyがあり、DRの1GeV operation を提案している。 1997年に0.96GeVで運転の実績が有り対応可能である。
- Non linear QED Physics (from high field physics to Vacuum science).
Need 10Hz, 200TW laser at ATF2, high-field physics at ATF2
- Using 200TW laser, we will study to generate 10Hz, 10fsec, 300pC and 1.5GeV electron beam generation stability, then study high field acceleration of 10fsec beam. (2013 to 2017)
- Beam acceleration by THz microwave
- Q 生出:上のリスト中の1のmotivationは何か。
- A : CLICからのlow beta optics実証の提案(&beta*y=25um)があった。これには、超伝導最終収束(4極)磁石により12 poleなどの多極成分が小さくできることが必要である。
もちろん、常伝導電磁石でも可能で、必要ならCERNがそれを供給したいとのことでもあった。
- Q 生出: synchrotron radiation の影響はどうか。
- Q 山本均: CERNからの中心の研究者はR.Tomasか?
- A : かれはCERNの主任研究員である。Oxford大学のFONTグループは多くの PhD を出している。その幾人かを含めて CERNがpostdocとして、(ATFでPhD取得した)10名ほど雇っている。
- Q 山下:CERNからの資金貢献はあるのか?
- A : in-kind contributionと man powerが主である。(common fundは難しい)
- Q 横谷:200TW laserを用いたnon-linear QED,やUnruh radiationの定量的な評価がなされていない。
- A 田内:Unruh radiationはKEKの理論グループで検討中(P.Chen,T.Tajimaの実験提案を含めた論文での評価に間違いを発見)である。non-linear QEDはレーザー強度上の未知領域での実験となる。そのため、この分野のexpertsとcollaborationを開始した(2010 11/24-26にKEKで開催のPIF2010がその契機となった)。それからの定量的な結果が出始めている。
- Q 生出:そのときのATF2ビームの必要性は何か?
- A 田内 : Unruh radiation(event horizon近辺での量子効果による輻射でブラックホール輻射の実験室モデルと考えられている)の場合、電子ビームのレーザー電場での大強度加速が重要となる。40nmにフォーカスされたビームは波長1umのレーザーの電場による加速を有効に受けることができ、Unruh radiation生成を最大化するものと期待される。
- Q 生出:リスト6は200TW laserで1GeV電子ビーム生成を行うのを目的とするもので、ATFとは関係ない。
- A : そうだ。これはlaser加速に関係する。
- Q 山下:ATFのfuture Plan として適当か。
- A : これは200TW laserがあれば出来る可能性を示している。リストには7項目あり、5項目までATFと関連するものである。
- Q 山下:この中で、ILCに必須のものは何か?
- A : 1, 2, 4 (3がPhoton Linear Collider PLC)である。
- Q 山下:必要不可欠なものは何か?
- Q 高崎:2012年のTDRとの関連は何か?
- A : これらはILCとして確認しなければならないものである。
- Q 山本均:CERN提案はCILC specificか?
- A : ILCにもlarge benifitがある。したがって、重要である。
- Q 山本均:CLIC関連のものは何か?
- A : CERNでは2ビーム加速の実証に集中している。その他、必要なR&DをATFで提案している。
- Q 高崎:CLICのためにILC R&Dがだめになるのではないか?
- C 山本明:LC communityとして、むしろencourageすべきである。
- Q 相原 : ATFをscienceに使用する場合、 そういう方針なったと決まったのか。
- A : 決まっていない。
- C 横谷:現在はATF内での話に留まっている。
- Q 相原:認められたとき、外部からの参加はどうか? そのためにOpenにすべきではないか。もし、ATFのmissionを変えるなら、アナウンスすべき。
- C 横谷: LC用以外の30%で何をやるのかは、科研費の審査員の判断になるということではないか。
- C 相原:天文台では施設関連のものは所内で議論している。手続を踏まえてやるべきである。
- C 横谷:科研費(新学術領域提案)で通ったらどうするのか。KEKで決められないことになる。
- C 相原:実験提案と施設の話を区別すべきである。
- Q 神谷:ATFのことは2012年に見直すことを決めた。そのときに、ILCのためのか、shut downを含めて検討すべきである。user machineすべきかどうかも検討すべきである。継続を仮定して議論されているようだが?
- A : ATFから提案してKEKで判断して下さいということ。 ただし、 ATFは国際協力でやっている。
- C 峠(傍聴者):user machineならstaffのmissionが変わってくる。
- Q 生出:だれがどうやってきめるか
- A 高崎:KEKやcommunityで考えることが必要である。
5. STF将来計画
山口委員長から、以下の報告があった。
『2012以降のILC activityの案を作れ』という機構長からの要請を受け、いろいろの案を考えてきた。その1つとしてILC ERL合同加速器計画(LCのR&DとERLの両立案)を、2010.9.1以来、若槻PF施設長,河田ERL推進室長,小林(幸)加・第7系主幹,山口で検討している。その他の案は、(B) STF Phase 2でCM2を追加するもの、(C) Phase2 CM1でFEL等の実験施設、そして、(D) 2〜6台のCMによるEEHG(Echo-Enabled Harmonic Generation)である。
ILC ERL合同・両立案は以下の三つの運転モードがある。(1) 30MV/mの加速勾配の9セル空洞333台よりなる全長500mの10GeV LINAC (ILCのR&D, SASE-XEFL)、(2) 5GeVのERL、そして、(3) 5x2=10 GeVのXFELである。 先ず、空洞,RF,冷凍機についての技術的検討を始めた。2010年12/27に検討課題のリストアップ を行い、1/12にビーム構造とRFの検討報告、2/1には空洞と冷凍機の検討会をもった。
ILC TESLA like 空洞を基本としてERLへの応用を考える。ERLでは連続モードの大電流運転となり、BBU ( Beam Break Up)を制御するためのHOM(High Order Mode)減衰が最大の課題となる。また、空洞内のアイリス径を大きくしてビーム強度を上げなければならない。BBU対策には、HOM周波数のランダム化とPolarized cavityの方法がある。TESLA like 空洞には5~6MHzのHOM周波数分散が存在する。常伝導の進行波型加速管の例として、960本使用のSLAC LINACでは加速管入口付近のセルを数MHzずらすことで3種類のグループに分けた。これだけでは不十分(BBU発生)で、さらに収束系を強化した。また、240本使用のKEK入射LINACでは5種類の加速管を使用しBBUの発生を得ていない。
入力カップラーの通過電力は、ILCでは平均2kW(最大400kW)で、ERLでは平均25kWのため、最大400kW,平均25kWのものが必要となる。ILCの構造を基本とすると、水冷等発熱対策が必要である。既存の窓材ではサーマルサイクル試験で真空リークが発生した。カップラーのQLは、ILCの2 x 106からERLの(0.5~2)x107の可変性が必要であり、カプラー内導体のストロークがΔL=±10 mm以上いる。ベローズの冷却と耐久性などが課題となる。HOMカプラーは13MV/mのCW運転で発熱・クエンチが起こり改良が必要である。
大電力高周波源は、ILCでは800kW, 59%効率, 永久磁石による収束のクライストロン、ERLでは30kW, CW, 63%効率のIOT(誘導出力管)が想定されている。したがって、IOTをクライストロン(CW, 30kW, 将来永久磁石)にする。特に、CW運転では偏磁に起因するビームロスが問題となるので、永久磁石使用時に許容できるかどうかの検討が必要である。ILCでは13 クライストロンに1台、ERLでは1 IOTごとに1台の電源を使用する。電源が最も両立が難しい。立体回路(クライストロンから空洞までの回路)で、サーキュレーターを省略できれば9億円の節約になる。また、マジックT,ダミーロード等の共用可能性の評価が必要である。LLRF(Low Level RF)では、振幅や位相安定度でERLのほうが一桁小さい要求がある。このとき、RFケーブルの温度補償、クライストロン入出力の非線形性、パルス運転における空洞の離調制御、そして、RFモニター,インターロック系の共用可能性の実証が課題である。冷却システムでは、ILC仕様の1クライオスタットに8個の空洞設置がERLで可能か、また、コストダウンが課題となる。
- Q 生出: 電源の安定度は0.05%必要か?
- A : 高圧電源の電圧が1%変動すると、振幅1%、位相10°変動する。フィードバックのゲインが100とすると、位相変動は0.1°に低減される。要求は0.01°なので、電圧変動は0.1%に押さえたいが、余裕をみて0.05%とした。
STF phase-2 C案ではCM1のみでユーザー運転を行う。このとき、既存のundulator(MR放射光で使用されたもの)で18eVの光が出る。2009年11月2日の機構シンポジウムに提出されたSTF長期計画では、このC案( 330MeV FEL ) 2014年から営業運転される。8台の空洞をもつcERLは、2014年にTDRを完成させる。山口私案ではこの8台の空洞はCM2のものを設置する。
ERL(2003年の概算):2.5GeV(10MV/m) ERL 建設の予算は740億円で、さらに冷凍設備・72億円の追加で5GeV (20MV/m)に増強する。R&D費用は約6,000万円/年 x 4年で2.5億円である。
まとめと提案を以下に示す。
- ILCのR&DとERLの両立を目指す加速器の技術的検討を始めた.
- TESLA空洞でもHOM周波数のrandomizationにより,BBU閾電流値を200mA程度に上げられる可能性がある.必要なら数種類の空洞形状(寸法)の採用によりBBUを回避する.
- RF源は,CWとパルスを兼用できるシステムを検討中.
- STF Phase2は,CM1で終了.FEL等の施設としてユーザー運転を行なう.
- 空洞 (KEK製,,,) の製造は続ける.できた空洞は cERL (245 MeV)に組込む (CM2).
- 早期に(~2020)LCがスタートした場合にもこの計画は続ける.
- Q 駒宮:ひじょうに心配な計画だ。軒下を貸して母屋を取られるものではないか。基本的なことが出来てない中でやることではない。
- A : (ILC推進にとって)ベストなものとして提案している。
- Q 横谷:10GeV LINACでILCのためにどのようなR&Dをするのか。
また、予算はどうするのか? 特に、ILCのR&Dの予算はどうするのか?
- A : 空洞のコストと性能を上げるためのR&Dを行う。
- Q 横谷:2020年からのILC建設とconsistentか?
- A : 両立させるために必要である。
- Q 神谷:ILCとERLは合同でやるべきものか。人間がするべきで、ものは別である。
何をやるのか。 ILCのR&DはSTFでやれば十分ではないか?
- A : 数をこなすこと、user運転をすることが重要である。
- Q 駒宮:higher gradient R&Dはどのような状況か ?
- A : 別のグループがやっている。
- Q 駒宮:その方向も進むべき。
- Q 横谷:どれくらいの人数が必要か? 2020年にILC建設ができるか
- C 生出:ERL建設が前提である。
- Q 山本明:STFで空洞の総数は数10台となる。また、ILCはglobal projectでEU-XFEL@DESYで十分である(山口氏のILC R&Dの目的のためには)。ILC推進とKEKサイトの問題とは別である。ERL/FELをやれば、ILCは20年間(日本に)できないというのは合意である。
- A:ILCの実現時期がわからない。
- Q 岡田:ERLが先かILCなのか順番を決めて議論することはできない。ILCは2020年建設開始、2030年で実験のスケジュールを前提に考えるべきである。 2030年以降なら別技術でLC建設が行われるであろう。
- A : ERLのほうが早く実現できる。それに基づいて提案すべきである。
- Q 横谷:100mAという数字はBBUの制限からきている。これに限定するならILC 空洞でもよいかもしれないが、いずれもっと改良したいという要望が出るに違いない。ILC 空洞の採用はERLとして禍根を残すことになるのではないか。
- Q 山下:合同加速器計画は1000億円のプロジェクトである。これが通らないと進まないものでは問題である。
- Q 峠(傍聴者):ERLと共同の検討は、やればよいのではないか。これからの知見がILCにいかに有効であるのか、吟味すべきである。それぞれのtimelineは今の時点でそれぞれで議論することしか出来ない。その後、擦り合わせをすべし。
- A : これを叩き台として検討していきたい。また、提案をお願いしたい。
- C 相原:ERL-ILC community同士の意見交換の場が必要である。そのプロセスが必要である。
- C 横谷:物理が関与していないのが問題である。
- A 高崎:それは自明である。
- Q 川越:このLC推進委員会のmissionはなにか。このように、議論してその後どうするのか?
- C 高崎:action planを考えるべきである。