先ず、新任委員の紹介をしたい。素核研所長の西川さん、素核研副所長の春山さん、加速器第三系主幹の赤井さん、同じく第七系主幹の小林さん、管理局長の山田さん、そして、東大の相原さん、神戸大の川越さん、京都大の岩下さんです。前回議事要録はすでに委員の方々により承認済で配布資料に収められている。
1. 機構長挨拶
鈴木機構長(ICFA議長)より挨拶に代えて、ICFA・FALC・ILCSC報告とCPDG(ILCのためのComprehensive Project Design Guidance)白書の説明があった。
ICFA報告:ICFAは素粒子物理学に関する学校や研究会に資金を提供している。高エネルギー実験で得られたデータの保存・活用方法等を検討する研究グループがある。さらに、ビーム力学(beam dynamics)、先端加速器(Advanced & novel accelerators)、計測技術(instrumentation)、世界各地域間の接続性いわゆるインターネット(Interregional Connectivity)の4つのパネルも活動しており、ICFA会議で報告される。最近、ICUIL(The International Committee on Ultra-High Intensity Lasers)の議長である田島俊樹氏と協議し、レーザー加速を利用した将来の加速器研究についての協力を行うことになった。その最初の研究会(Joint Task Force)がGSIで今年4月8〜10日開催された。 IUPAP-C11(Commission on Particles and Fields)で、最近出席者が少ないレプトン・フォトン会議を今後どうするかの議論があった。その他、ICFA会議では世界の各研究所の活動報告がされる。 また、ICFA議長としていろいろの提案を行っている。世界各地域にある加速器施設をも含めて将来の加速器計画についてのglobal roadmapの作成やICFAガイドライン5番の見直し等である。global roadmapのための委員会(P.Oddone, 駒宮氏, EUから委員)を設けた。ガイドライン5番の主内容はホスト国の加速器運転費用負担を明言しているが、大々的に国際的な利用がされている現状にそぐわなくなっている。この見直しに対してアメリカは消極的で、日本とCERN(ヨーロッパ)は積極的で、現時点での変更はなされないが、議論を続けて行くこととなった。
ILCSC報告:ILCSC会議では、PAC(Project Advisory Committee)、GDE、RD(Research Director)、WWSから、ILCの進捗状況に報告がある。また、世界の三つの地域からのものもある。ILCとCLICとの協力、測定器R&Dへの支援要請などが議論された。Barryは2012年以降も加速器R&Dを続けることを言い出しているが、このことはILCSCが言うべきことである。Governanceとサイト選びについても議論を行っている。Siting working groupをILCSCの中で結成した。メンバーはP.Oddone (FNAL)、J.Minch (DESY)と鈴木機構長(KEK)である。
CPDG(Comprehensive Project Design Guidance of ILC)白書:ILCの政府への提案、建設、運転までの道筋を示す包括的な白書の原案を作成している。これはこれまでに三つの地域そしてOECD GSF Consultativeグループでなされた検討結果をコヒーレントに更新したものである。この原案はworkパッケージ化され、その作成は日本のダークグループ(佐貫, 峠, 佐伯, 大森, 藤井, 藤本, 山下, 川越, 高橋の各氏)によってなされた。 その骨子は、ILC運営には公開性と長期安定性が必要で、中央権限と自治権(authority and autonomy)のバランスのとれた組織の提案、プレILC研究所からの段階的な進化する組織の提案である。白書では、CERN、XFEL、ITERをモデルとするものに対して、多国籍研究所による新たな組織を提案している。サイト選びの方法についても提案している。オリンピックの場合がよい手本となる。2013年にサイトの候補地を選ぶこととしている。この原案は次回のILCSC(7月24日)に提案される。この白書は2010年中に中間報告書として公表され、2012年のTDRとともに完成する。
皆さんに、 2012以後のILC activity (STF, ATF )のプロポーザルの作成を宿題としてお願いしたい。例えば、DR + LINAC + final focus + experiments のようなILCの要素がすべて含まれているもの。
GDEのタイムラインには、2012年末のTDR完成を目指して、2010年までのTDP1(Technical Design Phase 1)とそれ以後のTDP2の2つの期間が設定されている。TDP1ではRDRデザインの見直し、いわゆるre-baselineを行い、TDP2でそのデザインに基づくR&Dを行いTDRを完成させる。このre-baselineでのキーワードはcost containmentで、TDRでRDRコストを上回らないようにこれから期待されるコスト増大に対処できるデザインにすることである。
そのre-baselineとして昨年末にSB2009変更案がまとめられた。RDRからの主な変更点は、(1) 単一トンネル ;これに伴いRFシステムとしてKCS (Klystron Cluster Scheme)とDRFS (Distributed RF Scheme)がSLACとKEKとより提案、(2) バンチ数半減; 2600から1300、(3) DR周長半分; 6kmから3km、(3) 単段bunch compressor、(4) 陽電子生成用のundulatorのLINAC末尾に設置、(5) tighter focusing ( traveling focusを含む)、(6) 施設中央部分の再配置である。これによるコスト削減の概算値は約13%である。
SB2009では、バンチ数半減によるルミノシティー回復の手段として上の(5)が提案されているが、それはgeometric emittanceが大きい低エネルギーの重心系エネルギー250GeVでは機能しなく、さらに(4)のため陽電子数が下がるためルミノシティーがさらに下がってしまう。このことが物理・測定器グループの最大懸念事項となっていた。
このような状況の中、2010年1月6-8日、オックスフォードでAAPによるレビューが行われた。 その主な答申は以下のようであった、SB2009の変更案は個々に検討・評価されるべきものであり、それらを採用するのはR&Dが必要である。また、低エネルギーでのルミノシティー損失はLCスコープと一致しない。コスト削減の中には運転経費も考慮すべきであり、設計変更は厳格に行うべきである。このようにSB2009に対して厳しいものであった。
2010年3月26-30日北京で行われたLCWS2010で低エネルギーでのルミノシティー回復案がA.Seryiより示され、それ以後、その可能性を検討している。回復案の骨子は、(1)繰り返し周波数の5Hzを上げること;DRでのダンピング時間を1/2にすること, LINACでのクライストロン効率が低出力で下がるため8Hzが上限かもしれない、(2) tight focus ; 最終収束電磁石QD0を二分割して低エネルギーでは衝突点側の1/2部分のみ使用により焦点距離を短くしbackgroundを制御し強いfocusを実現するものである。
2010年5月14-15日バレンシア大学で行われたPACではこの回復案が肯定的に評価された。PACはGDEのcost containmentを強く支持した。また、将来、バンチ数が倍増可能なデザインであること、DRではelectron cloudの研究結果を見極めること、物理・測定グループとのcommunicationを計るべきことも答申された。
GDEでは、AAP, PACのレビューを受け、2011年初頭のre-baseline完成に向けて活動している。基本的な変更案はTLCC (Top Level Change Control)過程で決定を行う。その対象となるのは、(1) 加速勾配、(2) 単一トンネル、そして、(3) バンチ数半減、(4) 陽電子源用のundulator設置位置の四つである。これらを詳細に検討するため、2回のBaseline Assessment workshops (BAW)を開催する。これらのBAWはPMが議長となり、ADIチーム(含TAGリーダー)、物理・測定器グループからの代表者(J.Brau,M.Thomson,T.Makiewicz,K.Buessser,K.Fujii)、外部専門家が加わる。第一回BAWは上の(1)と(2)を対象に9月7-10日KEKで行われ、第二回BAWは2011年1月17 -20日SLACで(3)と(4)を対象に開催される。これらBAWに向けて、ADI meetingが物理・測定器グループを交えてwebexを用いて行われる(6/23, 7/23,... )。
他のGDE活動として、CLICとの協力、Governance、Project Implementation Plan, TDR後の計画案の検討などがある。
LC加速器体制は、STFとATFの2つの試験開発施設、量子ビームグループが中心となっている。それに加えて今年度からCFSグループ(榎本)が主に日本サイトの検討のために結成された。STFのリーダーは早野、その下に空洞(加古)、RF(福田、 道園)、クライオスタット(土屋)、冷凍機(仲井)グループがある。ATFのリーダーは照沼で、ATF2は田内である。量子ビームは浦川がリーダーである。KEK内の総FTEは47で、10%以上のFETをもつ総人数は91である。LC推進室長はKEK内予算管理を行う内政を担当し、GDE-regional director, PMは三極間調整を行う外交を担当していると考えている。ERLグループと協力関係にあり、空洞、RF開発等で設備の共有、共通の課題やシステム(RF)での共同取り組みが行われている。
2008-2009年度活動:STF(超伝導加速技術)ではベースライン空洞として9台の空洞の製作が行われた。国際協力のS1-Global、量子ビームの建設、Phase-2の準備が行われた。電解研磨、内面検査などを精査する表面研究グループを立ち上げた。LL空洞グループは高勾配を目指した。また、空洞製造設備いわゆるパイロットプラントの整備を始めた。 ATF/ATF2(ビーム制御技術)の国際協力では、2,000人・日/年の実績を示した。ATF2ビームラインが2008年12月に完成しその試運転が始まった。また、新竹モニター(IP-BSM)などの装置開発、ILCのような多バンチテストを可能にするファーストキッカーの開発研究も行われた。
2010-2012年の活動計画:STFでは、S1-globalの2010年中の完了、量子ビームは小型X線源ビーム運転開始、Phase-2として少なくとの1台のモジュールでのビーム運転、S0として高勾配化と低価格化、空洞製造設備で工業化を目指す。ATFでは、DRの垂直エミッタンスの1pmの実現、ATF2ビームラインで37nmビームサイズ達成、そいて、その焦点位置の2nmの位置安定性の達成を目指す。
STF:2009年4月に2014年度までの計画を立てたが(STF Phase-1 Activity Report)、その見直しを以下のように行った。S1-globalと量子ビームは予定通り行い、それぞれ、2010年末、2012年夏までに完了する。Phase-2は2012年度末、すなわち、2013年3月末までに建設を終了する。SB2009でのシングルトンネルとDRFS提案により見直しを行い、DRFSのR&Dに専念することとした。その場合、モジュールは1台のみでよく、2 - 3台目の製作は白紙である。これらモジュール製作に変わり、空洞製造設備を建設することとなった。
(平均) 加速勾配はPhase-1で22.7MV/m、S1-globalでは30.7MV/mが達成されている。ERL用の2セル空洞が2台製作されSTF施設で43, 41MV/mが達成されている。LL空洞では単体でのR&Dを行い、コストダウンを目指してNbの巨大結晶をスライスし化学研磨のみでの製作を行っている。単空洞では43MV/mを達成し、9セル空洞を開発中である。また、電子ビーム溶接(EBW) を使用しないシームレス空洞のR&Dも行っている。銅で実現したが、ニオブでは一度バーストしてしまった。次には60cm長のニオブチューブで空洞を2010年度中に製作する。
空洞製造設備(14m x 19m)は加工工程の最適化(コストパフォーマンス)と量産技術の確立を目指して、旧PSエネルギーセンターに建設中である。主な装置はプレス機、EBW(2011.3設置)そして縦型旋盤である。今年度中に1台空洞(HOMなし9セル)を製作する。空洞製作のコストダウンの対策を検討している。現状では、ヨーロッパに比べて製造で5.3倍、カプラーで1.4倍、材料で1.1倍、そして、合計で3.4倍の開きがある。高圧ガス申請の設備を『特定』から『一般』にしたことにより、3.0倍になった。また、仕様で工程の効率改善(無駄な工程を省くことなど)、複数企業による競争原理の導入等によりコストダウンを実現したい。
ATF/ATF2:ビームパラメータの現状(設計値)は、水平、垂直エミッタンスが1.7nm (2nm) ,10pm (12pm)で、焦点での水平、垂直ビームサイズが10um (3um) , 300nm (35nm)である。開発されている主な装置は、ファーストキッカー(30バンチ取り出し)、IP-BSM(新竹モニター)、FONT(バンチ単位の高速フィードバック)などである。2015年までの長期プランが示されているが。2013年度以降のスケジュールは未定である。
CFS:これまで、日本版山岳地帯シングルトンネル案の検討は先端加速器科学技術推進協議会 (AAA) 技術部会 施設WGが行っており、2010年3月にその概念設計が成果報告書としてまとめられた。その詳細設計をともに行うために、今年4月にKEK CFSグループが結成された。また、同時に東北大と協力して基礎設計も始めた。6月には、国際的なレビューがGDE-CFSグループにより行われ、『実現可能』との評価を受けた。もし、実現すれば、日本の土木業界では青函トンネル建設以来の大仕事であるとのことである。
課題:大きく分けると以下の2つがある。(1)要素技術の確立とシステム実証のバランス、そして、(2)2013年度以降の計画の立案である。STFとATFの計画はこれからの議論が待たれる。実用機を目指してこそのR&Dということで、KEK版Project Xが必要である。 例えば、全長900mの電子ビームエネルギー24GeVのLINACからのXFEL、そして、全長400 (800) mの陽子ビームエネルギー5GeV, 強度10MWの大強度超伝導陽子リニアック、あるいは、STF2 (3クライオモジュールからの850MeV電子を用いる)でのFEL (VUV) 実験である。
Phase-2で、 ILC加速ユニット(DRFS)の建設担当能力実証と性能実証を行う。ILC型クライオモジュールを製作・運転し、ILC型ビームを空洞に通し、ビーム負荷空洞を高精度制御し、HOMダンピングを確認する。また、SC-QUADの製作・運転とML-BPMの組み込み・運転も行う。 空洞はCapture moduleの2台(15.2MV/m)、クライオモジュールCM1の8台 (31.5MV/m)、CM2の8台 (31.5MV/m)である。電子ビームは9mA, 5Hzで運転され、Capture moduleの出口で21MeV、CM1とCM2のそれぞれの出口で273MeVと525MeVに加速される。RFガンはFNALから供給される。先ず,4空洞を地上部で組み上げ、地下で8台をクライオモジュールに挿入する。この作業に33mのスペースが必要である。
DRエミッタンスはビームサイズとそこでのベータ関数それぞれの測定値より求められる。DRには以下の三つのモニターシステムが設置されている。シンクロトロン輻射(SR)の可視光のダブルスリット通過光による干渉(モニターは5msecで, 5-6umまでのビームサイズを測定する。X線領域(3.23KeV)のSR光イメージ(ビームサイズの大きさの光源)をcondenser zone plate (CZP, 1/10倍)とMicro zone plate (MZP, 200倍)で拡大して20倍のビームサイズをCCDでモニターする。これは20msecの露光で5 - 6umの分解能をもつ。三つ目は1um程度と一番分解能が高いレーザーワイヤー (LW) で光学空洞内に励起される共鳴モードが利用される。分解能の高い高次モードではレーザー強度が1/3となってしまうので、使用するレーザーの強度増強が準備されている。最近、SR可視光干渉モニターは光路の再アライメント、スリット間距離を4から6cmとして分解能を4umに向上させた。また、X-SRモニターは送風機を防振して4umに向上させた。LWモニターはDRのストレージモードだけではなく通常の取り出しモードでも測定可能となった。
三つのモニターの間で系統的な測定値の違いがみられるが、2009年12月から2010年に入ってから、DRでは10pm以下の垂直エミッタンスが得られるようになった。また、取り出しラインでも同等のエミッタンスが5月のATF2連続ラン中に測定された。今後、三つのモニター間での系統的な違いの研究も続けられる。
2pm ( 1pm)の実現に向けてDR-BPMエレクトロニクスの更新がFNALグループによって6月に行われた。これを使用したビームチューニングはまだ行われていない。このエミッタンスはLWの高次モードで十分測定できる値である。例えば、2pmとβ関数値=5mとするとビームサイズは3.2umとなる。
ファーストキッカーシステムの性能評価が行われた。単バンチビームの取り出し角度のジッターは3.5 10-4, 7.4 10-4と測定され、現状のダブルキッカーシステムと同じ大きさであった。この取り出しビームを用いてATF2ビームチューニングが行われ、ポストIPカーボンワイヤーで、その測定限界値の1.4umのビームサイズが測定された。30バンチの取り出しも成功した。しかし、使用しているFIDパルサーの出力パルスに系統的な時間変動があることが分かった。この補正を行う回路システムを用意して今秋に試験を行う。ここで、DRでの多バンチビーム運転の安定性が重要となる。
ATF2はILCと同じ局所色収差補正による最終収束システムの試験ビームラインである。特に、光学システム中の電磁石等の配置が同じであるため、開発されるビームチューニング方法をそのままILCでも適応することができる。5月17日から21日の一週間、初めての連続ランが行われた。DRチューニング後、バックグランド制御のための取り出しライン軌道調整、五つのワイヤースキャナーシステムによるビーム診断、分散やカプリング補正、そして、五つの6極電磁石の位置調整からなるマルチノブによるビームサイズ縮小化が行われた。DRでの垂直エミッタンスは10pmで、取り出しラインでは11.7pmであった。光学システムは焦点での水平、垂直両方のベータ関数は設計値の10倍であった。新竹モニターによる測定での最小値は313±31(統計)-40(系統)nmであった。 ここで、エミッタンスを10pmとしたときの期待値は100nmである。(上の測定時のエミッタンスの大きさは20pmなら、期待値は140nmとなる。)
今秋からビーム光学を設計値にするが、先ず、バックグランドの調査・測定、制御が必要である。期待値に到達できなかった原因として、チューニング時間不足との他に、ビームサイズ最小化のためにQF1のrotation(ビーム軸の回りの回転)が大きくなってしまったことがある。QF1の幾何サイズと磁場のチェックを今夏に行う予定である。また、マルチノブによるビーム調整中にIP-BSMのシグナルを見失うことがあった。これが電子ビームの位置変動のためか、レーザービームの変動のためなのかを区別するために、IPBPMをIP-chamber内に設置することを検討している。また、レーザー位置の安定化のためのシステムも追加する予定である。
その他、ATF2ビームチューニングと平行して、ILC主リニアック用のBPM、ファーストイオン不安定性、陽電子生成のための光学空洞システム、FONT、取り出しラインで1umのビームサイズ分解能を目指すLW、それぞれ2nmや30nradの位置や角度分解能を目指すIPBPMやTiltモニターのR&Dが行われている。ファーストキッカーシステムの他、これらの中でいくつかのR&Dでマルチバンチビームの安定性を必要としているため、今秋、先ず、この安定性の研究を行う予定である。
最後にスケジュール表を示すが、これは山口委員長が示したものと同じである。
2009年7月22日と2010年2月12日に第4回と第5回のリニアコライダー加速器レビュー委員会が開催された。第4回はSTFを始めとする超伝導加速空洞システムが対象であり、第5回はATF/ATF2とSTFの高周波(高周波発生源High Level RF: HLRFと高周波制御Low Level RF: LLRF) であった。これら2つは相補的な関係にある。以下に、これら2回のレビュー委員会の評価・勧告を簡潔に述べる。詳しくはすでに発表されているそれぞれのレポートを参照してほしい。
STF:GDEの目的に重みを付け過ぎ、すなわち、スケジュールを無理に合わせている。ILCはもっと長期的に考えるべきで、STFは自身のR&Dの経験を十分に受け継いで行うようにすべきである。パイロットプラントは実証用として使うべきである。総評として、コストダウンの目標としては現状の1/5に迫るブレークスルーが必要である。KEKでパイロットプラントを作ることはよいことで、そこから製作される空洞をSTF Phase 2で組み込んで試験をすべきである。
ATF/ATF2:これらの研究施設はあらゆるLCに適応できるものである。もちろん、ERLやSuper Bにでも可能である。2012年度までの目標として、DRでの1pmとATF2での37nmと2nm安定性は、たとえ、それらが達成されなくとも妥当である。ただし、その理由が十分理解されることが重要である。2013年度以降は別途、提案などに基づきレビューを行い決める。すでに、他の放射光リング等でpmオーダーのエミッタンスは達成されている。そのため、ビーム診断などの先端計測技術のR&Dを目指すべきである。
HLRFとLLRF : DRFS中心にR&Dを行うことは妥当である。これらは立地条件やコストダウンに役立つ可能性が大である。特に、LLRLはJPARC, FLAF, S1-Globalで、すでにOKである。ビーム試験はresourceを十分に考慮して行うべきである。また、複数の系にまたがった人を正しく評価すべきである。
2008年以降、アジア主体のGLDとヨーロッパ主体のLDCがまとまりILDコンセプトグループとなった。RD (Research Director)によりLoI(Letter Of Intent )提出の呼びかけに対して、ILD、SiDと4thのグループがLoIを提出した(2009.3.31期限)。ここで、"4th"はGLD, LDC, SiDに続く4番目に提案された測定器コンセプトグループ(アメリカを中心とする)のことである。これらのLoIはIDAG ( International Detector Advisory Group) により審議され、ILDとSiDがその査定に合格した。LoIとして提出されたILD測定器案には32ヶ国 148の研究機関から695名が署名している。
GDE TDP1には、 測定器の最適化がさらに行われ、ILDでは、VTX, TPC, CALなどPFA性能達成のためのR&Dsが行われている。最適化のためのフルシミュレーションのデータは70TBとなり、W / Zの分離などが達成されている。 MPGD - readoutのTPCの目指す運動量分解能はこれまでのものの1/10である。KEK(東京農工大、佐賀大、近畿大、工学院大との共同研究)では、小型プロトタイプ試験を2005年から行い、2008年からは大型プロトタイプ試験を始めている。すでに、DESYで2回のビーム試験を行っている。TPC PADシグナルのフロントエンドエレクトロニクスのS-ALTROシステムのR&Dの一貫として、advanced endplateの開発が行われ、power pulsingでの電源の安定性や1KW/plateの冷却試験等が行われている。バーテックス検出器の位置分解能もこれまでの1/10を目指している。KEK(東北大の共同研究)では、fine pixel CCDを開発しており、ピクセルサイズを11umから6umにさらに小さくし、また、ASIC readout チップや軽量サポートの開発も行っている。カロリメータは大学中心にR&Dが行われている。1cm x 1cmのセルサイズのシンチレータストリップでの実現、MPPCの開発研究が行われている。CALICEグループにも参加し、さらに、5mm幅のストリップ開発も2012年までに行う予定である。
ILDコンセプトグループは2012年のDBD完成を目標としている。それまでに、LHCの結果として7TeV, 1/fb のデータからLight SUSYのシグナル発見が期待される。LHCでは、2013年から14TeV, 10/fb/年の結果が期待されている。こうした中で、2014年までに建設可能な設計を行う必要があると思う。
先週 (7/6-8)、ILD meetingがDESYであり、DBDに向けての計画の詰めを行った。
技術部会の部会長を山本明さんにこれまで三年間やって頂いた。山本さんはPMでもあり、たいへん忙しい中がんばって頂いた。最近、総会での議論、ある参加会社の脱会意向の引き止めなどいろいろのことがあった。もっと、ILC以外の応用も検討すべしとも意見もある。技術部会長は1年交代で行うのがよいという意見もあり、山本さんに交代して頂くことになった。まだ、山本さんからは納得を頂いていないと思うが、KEK先端加速器推進部で後任を探している状況である。
7. ILC の物理と測定器
藤井委員から、以下の報告があった。
ILC実験の基本理念はすべての反応をファイマン図のように再構成すること、すなわち基本粒子間の反応を見ることである。そのため、高性能な検出器、そしてPFA (Particle Flow Algorithm)解析の開発が必要である。これにしたがって、測定器開発が行われている。
8. 先端加速器科学技術推進協議会 (AAA) 報告
高崎委員から、以下の報告があった。
AAA はLC及び関連する加速器技術を推進するものとして設立された。
会長は三菱重工会長がなり、KEK機構長、東芝、日立、三菱電機、京セラなどが理事会を作っている。
最近、政界地図が変わったが、AAAは活発に活動し、75-76会社参加している。AAA主催のシンポジウム開催している。また、4月に総会を開催した。事務局は、有馬事務局長(三菱重工)の他、高崎(副事務局長)、石川(KEK)、山下(東大)からなっている。事務局会議も行われている。技術部会、知財部会、広報部会、大型プロジェクト研究部会の四つの部会があるが、技術部会が中心となっている。
9. 意見交換