ところで、平成20年3月の任期満了に伴う委員再任・新任委員の紹介をしたい。新任委員は、素核研LCグループ責任者交代によって、宮本彰也より藤井恵介である。前回議事要録はすでに委員の方々により承認済で一括資料に収められている。
1. 機構長挨拶
鈴木機構長より以下の前回からのILC関連の経緯(挨拶に代えて)の説明があった。
昨年のいわゆるブラック12月後、しばらくILCにとってひどい状況が続いた。イギリスでは、ILCへの予算が次年度よりすべてなくなることとなった。アメリカでは、FNAL所長が会議に出られないこと、FNALでの250名を越える首切り(レイオフ)、SLACでも100名以上のレイオフがあった。
イギリスの場合はSTFCによる政治的判断であった。アメリカの場合は2007年2-3月のRDR-ILC予算の見積もりの発表に対するDOEの反応がその予兆であったと思われる。SSCの打ち切りの時の状況と似通っており、ILC概算額を1桁程度としその不確定性が大きいことを示すべきであったと反省しなければならない。このことは、前回の議事録にもあるように、私がILCSCに対してコメントしていた。
US連邦代議員などに手紙を送り予算復活を要求したが、関係者の間での責任のなすり合い等があり、無意味な結果になった。
我々としては、一国の事情によって大きく作用されることのない国際協力を構築するためにも、日本だけではなくILCグループ全体の技術力を付け国際的に示すことが重要である。
かねて提案していたLC推進のための協議会のことは後の議論で述べたい。
Barryは、ブラック12月以降、UK, USに続くドミノ現象のようなことは起こっていないことを強調していたが、アジアでは、ILCに対して消極的になった国がある。EDRスケジュールを実質2年遅らせるTDP-1( - 2010)とTDP-2 ( - 2012)の提案があり、ILCSCはそれを承認した。また、次回のGDE meetingを6月2 - 6日にDubnaで開催し、主にロシアの浅いサイト(shallow site)の検討を行う旨の報告があった。
Research Directorの山田氏より、ご自身と3つのregionからの代表として現WWS-co-chairsの3人からなるDirectorateの結成が報告された。この人選の交渉過程で、北米ではM.Tignerから同一人物が ILCSCメンバーとResearch Director 直属の Regional Contact という異なった役割の任務を兼任するのは望ましくないとの指摘もあったが、過渡期の案として了解された経緯がある。 IDACメンバーも報告され、ILCSCは承認した。IDACは、6/9-12のワルシャワでのECFA-LCワークショップで第1回の会合をもつ。その一つの目的は、来年3月提出期限のLOIの評価(レビュー)である。
Francois Richard (WWS co-chair, EU) よりはWWSの報告があった。高エネルギー業界の草の根運動として活躍し、そのcommunityに対して情報伝達等の役割を果たしていることなどが表明された。
その他、PAC ( Project Advisory Committee)メンバーリストの回覧があり、そこにロシア人がいないことがSkrinskyより指摘された。GDE-MOUの最終案が尾崎氏より説明された。知的所有権問題がまとまり、 次回ILCSCで決定される予定である。
次回のILCSCは 6/4 Dubnaで行う。
FALCではスペインが新しくメンバーとなった。世界の主要な研究所の所長をメンバーにすることなども議論されたが、結局それは不適当とされた。世界の3領域から技術的波及効果の報告書が準備され、それをまとめた文書が1月のFALCに提出された。我々のものは大森、設楽、尾崎の3氏の貢献が大であり評判がよかった。ここで改めて3氏に感謝したい。FALCによるパンフレットは準備中である。来週、CERNでFALC annual reportの作成ための会議がある。そこでその案が示される予定である。最近、Nature誌上に『ILCは予算的にもpoliticalにもcredibleではない』とのUK-STFCのメンバーの一人が意見表明していることは非常に不適切であり憤慨していることがFALC委員より示された。
次回の第14回FALCは7月1日にローマで開催される。日本よりは文科省量研室の林室長、山内委員、野崎委員が出席することになろう。
Resource Group(RG)会議では、GDE-EDRでのwork-packagesに対して同意したという文書に署名することが議論された。日本の委員から、"concur"という表現は不適切との異論が出され、"informed"との表現に修正された。 2008年度のコモンファンドとして1.6Mドルが韓国を除く国によって承認された。このとき、韓国からは、アジアの分担金(1/3)の中の韓国負担(KEKと同じ額の全体の1/6)を、現状ではインド、中国等の寄与が不明確であるため保留するとの意見表明があった。最近、インドより15Kドルを負担するとの連絡があった。
次回のRG会議は5月14日にCERNで開催される。KEK管理局長の加藤委員と山内委員が出席する。上記のAnnual reportも議論される。
GLDはLDCと合同してILDとなった。ILDは3 regionsから2人ずつのメンバーよりなるJoint Steering Board (JSB)により運営され、ILDの統一パラメータの決定、LOI作成を目指している。JSBにはアジアから山本委員と杉本康博氏(KEK)が選出されている。このJSBとOptimization, MDI, Costのworking group代表とtechnical coordinatorからExecutive boardが形成されている。これらはGLDとLDCから同数のメンバーで構成されている。最近提出されたILD-EOIの署名した研究機関数では日本、US、ドイツ、フランスの順となっている。
今後の予定は、6/6-9のECFAワークショップ(ワルシャワ)、9月にILDワークショップ(ILD統一パラメータの決定)、11/16-20 LCWS 2008 (シカゴ)、2009年2月(?)にACFAワークショップが開催予定である。2009年3月31日提出締め切りのLOIの完成を目指している。
学術創成研究(ILC測定器)に対して、日本学術会議主催の中間報告会が6月に予定されている。最終報告は2011年春である。
4月21 - 25日、FNALで超伝導RFに関するmeetingが開催された。ここで、超伝導空洞、クライオモジュールの実現可能性、コスト削減のための技術革新の推進等を確認した。USのILC予算削減によるS1危機の救済策として、"S1-global"の提案を行った。これは一つのクライオモジュールシステムとして、平均加速勾配の31.5MV/m を実証すること(S1目標)を、KEKでSTF1後の2010年中に行うというものである。その後、STF2を行う。このS1-globalではDESYとFNALからの空洞の供給を得るため、上記の"plug compatibility"の実践的検証を行うことができる。
これまでの超伝導空洞の製作では、機械工作、化学的表面処理、試験(縦測定など)の一連の行程後に初めて加速勾配などの性能評価がされ、目標に達しない場合、再処理と試験がいわゆる暗中模索の中で繰り返し行われていた。昨年度、京大とKEKの共同開発で空洞内を直接CCDカメラで詳細に見るシステムが完成された。これにより、各段階で空洞内を検査でき、特に、機械工作後すぐの検査での不具合を工場にfeedbackできる。このシステムは蛍光板、反射角度調整などの機能をもち、空洞内面の3次元的mappingのできるもので、一つの技術革新である。また、KEKの大内氏は、クライオモジュール内の5Kシールドをなくしコスト削減をはかるという提案を行った。これも我々の技術力、経験を示すものである。
来年には、TDP-1 前半のreviewをGDE-AAP ( Accelerator Advisory Panel - EDRの進展のレビューなど)で行いたい。
超伝導以外では、DRでのe-cloud問題、DR-designのconsensus形成、ATF2の建設、そして、Conventional Facility (CF)でのCERNの協力などの進展があった。
6月のDbuna GDE meetingでは、CFを集中的に議論するが、 加速器システムの議論も行われる予定である。
昨年度には、2007年4月よりSTF0.5が開始されたが、クライオモジュールで真空漏れがありやり直しを行った。10 -12月にはTESLA-like空洞の冷却試験、2008年2-3月にはLL空洞の試験が行われた。STFに、EP設備と縦測定装置が設置された。ATF2は順調に建設中である。ブラック12月以後、UKではgeneric accelerator R&Dの下にBDS・Positron source・DRでのleadershipを維持する努力が行われている。USでは2009年度の予算案(大統領承認)が決まった。それは危機以前の約半額の35Mドルで、その内訳は要求額に対して、positron sourceは0%, BDSは20%減、 DRは 0% (ただし、NSFでサポートされている) そして、super関係は50%となっている。また、ILC以外の予算としてsuper関係(Project-X @ FNAL)に25Mドルとなっている。USでは、少なくとも2012年までは予算はFLATとみている。
超伝導空洞関連のGDEタスクは、 S0(cavity)、S1(module)、 S2 ( multiple modules)の3つである。TDP-1でS0, S1を達成し、TDP-2でS2を達成することとなっている。KEKのSTF1はTDP-1そしてSTF2はTDP-2に対応している。2012年にはTDRを完成する予定で、その後、詳細なengineering designをすることになる。
前回のLC推進委員会でも述べたように、今年度にSTF2を設計し(高圧ガス検査などが控えている)、2009 - 10年に空洞を製作する。そのため、空洞タイプの選択を行いTESLA-like空洞を選択した。GDEでは、TDP-1終わりごろ(2010年)に空洞タイプを決定することになるだろう。
DESYのXFEL用のものより少し短いTESLA-short空洞がGDEのbaselineである。 KEKのTESLA like 空洞では、それより頑丈な構造(Lorenz力対策)をもち、簡単なcoupler構造、tuning用のモーターをクライオスタットの外に設置する等、細部の仕様が異なっている。したがって、これらの違いの多くを許容できるであろうplug compatibilityが重要となる。ここで、TESLA like 空洞はILCクライオモジュールとcompatibleでなければならない。その詳細な仕様は11月のGDEまでには決まるだろう。
LL空洞はより高い加速勾配を目指している。cost minimumはhigher gradientであるので重要な開発であり、coupler , tuner開発は中断し、加速勾配に集中してR&Dを継続する。このLL空洞がplug compatibleであれば、将来使用可能となる。
以上の選択決定はLC推進室で行い、その報告書が英訳とともに公開されている。その技術的評価の主なものは、LL空洞の試験結果と計算との照合が不十分、couplerは、大電力性能は両方ともOKであるがLLのものは熱浸入が大きい可能性がある、そして、LL空洞のend plateのSUSとNbとの接合にさらにR&Dが必要であることなどである。加速勾配としては、TESLA-like空洞では最大29MV/m、LL空洞ではJ-labで最大36MV/mの試験結果が得られているが、いずれも十分な水準に達していないので、今回は加速勾配の試験結果を評価の対象としていない。
STF1では、cryostatに4台の空洞を入れて試験(module -A)する。続くS1-Globalには、module-Bを用いる予定であったが、TESLA-likeとTESLA-short空洞では向きが違うため、短いことがわかった。そのため、module-CをイタリアのINFNで製作(13ヶ月)することになった。S0 gradientと歩留まりの試験のため、新しく5-6台製作・試験したい。また、空洞表面検査チームの結成を行った。
ATF2の建設は順調に進んでいる。すでに、コンクリートシールド、電磁石が設置されている。FD用の電磁石と安定架台は9月にフランスのLAPPから運ばれる。電磁石用のHA-PS 電源は5/1にSLACより納入済で、S-band BPM KNUで製作(6月末)、 11月始めに運転開始の予定である。 ATF2のためのmeeting として、 weekly, project meeting (5/26-28), TB-SGC meeting (6/11-12)がWebex-電話会議で予定されている。
10 - 11月の冷却試験では熱負荷、Lorentz de-tune補正(空洞のphaseのshiftをpiezoでcontrol実証)などを行った。このとき、日中のみ冷却したり、休日は休止したりして、冷却に9日かかった。high power testで、先ず、19.3MV/m を達成し、これは 縦測定の20MV/mと一致していた。
LL空洞の冷却試験は2008年2 -3月行われた。試験項目は上と同じである。LLの単空洞試験も行われた (最高加速勾配52MV/m)。9セル空洞はJ-labで試験が行われ、36MV/mを達成した。J-labでの7回目の試験結果は28MV/mで、内部検査でアイリス部の傷を発見した。
高分解能内面検査カメラ(京大/KEK)による内部検査の結果は、T-map(温度測定)データとよい一致が得られた。例えば、DESYの空洞には多くのspots(直径100 - 400um)があり、FNALのもの 400um (45um高さ)の比較的大きなspotがあった。製作直後で表面処理前のKEKのものは、少量のspot(直径100um)と、 アイリスに傷が見つかった。EP後どうなるのか調べたい。
S1-globalでは8台平均で31.5MV/mを国際協力モジュール(module C )で達成したい。これまで、3次元 CAD上で整合性チェックが行われ、空洞の方向の違いから、モジュール(module B)では長さが足りないことなど判明した。そこで、module C がIFNFの協力のもとで製作される。現在、TESLA short空洞がILC base line designである。S1-globalは、2010年にテスト予定で、FNALとDESYからともに2台ずつ空洞を提供してもらう予定である。世界のモジュール製作の状況は、DESYでは、XFEL用のmodule を3台製作中、2010年には 8 (=3+5) 台のmoduleが製作され、その後96台の大量生産に移る。 S1-global用には最初の3台の中から選ばれる。FNALでは、CM1- 4 の4台のモジュールが2012年までに製作される。CM2の製作試験時期がKEKのS1-globalと同時期である。
協議会結成が具体化してきた。その目的・精神は、非常に高額な高エネルギー加速器に対して国民の理解を得ることである。そのために技術波及効果を示すことが重要である。先ず、5年間で200億円の予算獲得をバックアップしていきたい。名前を先端加速器技術推進協議会とするが、その推進の中核はILCであり、super Bも含まれる。産学官連携を目指している。政府からは国民の理解をなぜ得られていないかとのコメントがあった。 三菱重工の会長を協議会長として、日立会長、東芝会長、三菱電機会長とともに発起委員会を立ち上げる。その発足会当日の昼食会で与謝野氏、文科省、経産省からの官僚を招いて懇談する予定である。6月中旬に総会を開きたい。
「量子ビーム基盤技術開発プログラム」への申請はどうなっているのか。
3. FALC報告
山内委員から、以下の報告があった。
第13回FALCは、1月18日バンクーバーで開催された。また、FALC-RGは12月18日電話会議があった。
4. 測定器報告
山本均委員から、以下の報告があった。
すでに報告のあったように、Research Directorateが形成されつつある。これは、RDとregion代表3人によるexecute boardとLOI Groups(それぞれ2人の代表者)から構成される。temporaryとしてWWS co-chairsがregion代表となっている。RDの下に、それぞれのLOI groupからのメンバー(contact)で構成されるMDI, Engineering tool, Detector R&D, Software, PhysicsのLOI common tasksが結成された。また、RDの諮問機関としてInternational Detector Advisory Group (IDAG)が結成され、そのメンバーが確定した。その議長はMichael Davier (LAL)で、日本から小林氏(東大、ICEPP)と峠委員がメンバーとなった。IDAGはLOIsのレビューを行う。
5. 最近のGDEの活動・計画
山本明委員から、以下の報告があった。
Black December(2007年12月)後、GDEも混乱した。特に、2008年1月にかけてUSとの連絡が不通となってしまった。その後、体制の立ち直しをはかり、国際協力で一国の事情によらないものを模索した。この中でスケジュールの見直しも行われRDRからEDRへのR&D期間を 3年から5年に延長した。GDEでは、その期間を大きく2つに分け、2010年までをTechnical Design Phase 1 (TDP-1)とし、その後2012年までをTDP-2とした。TDP-1では、平均勾配の31.5MV/mを持つ空洞の歩留まりを50%達成し、TDP-2ではそれの90%達成を目標としている。私は超伝導関連システム担当のProject manager (PM)として、超伝導加速器の国際協力による製作を保証する約束事として、"plug compatibility"というものの国際的合意を得ることを目指している。また、DESY-XFEL、CERN-LHCプロジェクトとの協力を推進していく。
6. 本年度の方針
横谷委員から、以下の報告があった。
今回は超伝導空洞関連ものに絞って報告する。
7. STFの現状と今後の計画
早野委員から、以下の報告があった。
昨年度中に、TESLA-likeとLL空洞をクライオモジュールに組み込み、それぞれ1台づつ試験を行った。EP設備は完成し試験中であり、縦測定装置は磁気シールドを除いて完成している。
8. その他(協議会、量子ビーム)
鈴木機構長から、LC推進のための協議会についての報告があった。