今後のILCに対する取組みについて
平成16年10月28 日
高エネルギー加速器研究機構
(1) KEKは、ILCの実現可能性を検討するため、積極的にILC試験開発に参加する。
○ 世界的なILC設計グループ(GDI(当初は、参加する各機関の資源を基にしたGDE))に参加し、GDEが行うILCの設計、コスト評価、試験開発、量産化技術の開発等に協力するとともに、自らも関連する試験開発に取り組む。
○ 現在、研究者間で、採択された超伝導加速空洞技術に対する日本としての貢献体制について検討しているが、機構としても中期計画を踏まえ、他方国内の大学等のソースも活用しながら、ILCに参加する日本人研究者を大いに歓迎し、これらに対して自己資源に基づき可能な限りの支援を行っていく。
○ 11月13日から15日までKEKのホストによるILCワークショップは、世界各国から100人以上の研究者が参加する予定であり、8月の技術選択を受けたILCに関する国際共同での取組みの第一歩となる重要なものであることから、これを成功裡に実施できるよう全力を尽くす。
(2) GDIセントラルチームのKEKへの誘致及びディレクター等の主要ポストを日本人研究者が得られるよう積極的に取り組む。
○ ILCの研究開発において日本がイニシアティブを取っていくためには、GDIのセントラルチームをKEKに置くことや主要ポストに日本人が就くことが必要不可欠であり、これに積極的に取り組む。
○ なお、セントラルチームが仮にKEKに置かれることになった場合の必要な資金は現在の予算の範囲内で行う。
(3) KEKに置かれる予定のGDIのアジアにおけるリージョナルチームについては、KEKのリーダーシップのもとアジアにおける共同研究体制の確立を目指す。
○ KEKに置かれる予定のGDIのアジアのリージョナルチームには、中国、韓国、インド、台湾などのアジア諸国の多数の研究者の参加が見込まれる。
○ リージョナルチームでは、セントラルチームと協調して、加速器のデザイン策定などのILCに必要な研究開発が行われることになるが、KEKは、現在の予算の範囲内で、加速器科学分野におけるアジアのリーダーとして、リージョナルチームの運営に積極的に取り組んでいく。
(4) 機構長は、ILCの建設及びこの日本誘致に向け取り組む研究者の活動を支援する。
○ ILCが日本に建設されれば、学術分野での世界規模でのCOEを初めてアジアに設置することになり非常に意義深いものである。また、21世紀のCOEとして全世界の科学者や技術者が日本に集まることになり、将来日本が世界の素粒子物理学をリードし、日本の科学技術を飛躍的に発展させかつ世界に貢献する上で極めて重要である。
○ ILCの建設は、GDEの結果を踏まえ、設計活動への政府の参加後に決定されるものであるが、機構長は、日本がその建設地となるように希望する研究者の意見集約、その実現に向けた研究者間の取組みなどに対し支援する。
○ 一方、日本の産業界は、ILCを受注可能とする技術基盤を十分に有しており、ILCの実現が産業界に与える影響は計り知れない。(産業界では独自に「リニアコライダー研究会」を設置。)
○ なお、ILCの実現のためには、多数の国の参加や資金分担が必要であり、このためアジア地域における各国への参加誘導やコンセンサスの確立に向け、各国政府も含めた働きかけを行う。
(5) なお、KEKでは、現在、Bファクトリーでの共同利用実験、大強度陽子加速器計画(J-PARC)の施設・設備の建設等の大型プロジェクトを推進しており、現時点においては、これら既存のプロジェクトを着実に推進していくことが最優先課題であると考えている。
また、将来計画(ILC、SuperKEKB、第4世代放射光、J-PARCの将来計画)の中での優先度については、今後それらの実現可能性を検討した上で決定するつもりである。
(注:上記将来計画で掲げた4つはいずれも超伝導技術が関わっている。)