200326()

To:     LC推進委員会

From:   栄浩、峠 暢一(責任編集)、早野仁司、肥後寿泰

Subject:  LC(リニアコライダー)加速器関係報告、H162月分

 

1.会議など

LCPAC: 2月19-22日にKEKで開催。LC関係報告は20日に予定。

ISG-Lite: ITRP対応を主課題とするGLC-NLC加速器グループ間の意見調整ほか協議(ISG-Lite)を2月23日の週初めにKEKで行なう。SLAC、FNALから7名が来訪、参加予定。

ATF Collaboration Meeting: 第4回ビーム物理セミナーを兼ねて、第9回ATF International Collaboration Meeting を3/20-3/21に鴨川で開催予定。詳細は追ってweb掲示。

APAC 2004:3月に北京で開催予定のAPAC 2004/01/30では、GLC Overview に加えて、ATF status、Klystron 開発状況、X-band加速管、2-moded SLED-II試験結果の口頭もしくはポスター contributions を行う予定。

LCWS 2004: 前回2002年に開催されたLC国際加速器ワークショップは、今年アジア領域で開催される順序になっている。しかし、現在ILCSC/ITRPによるLC技術選定関連の議論が急ピッチで進行し、また、GLC/NLC/TESLA開発グループはいずれもその対応に忙殺される見通しであるため、今年はLCWSを開催しない方向で、世界のLC加速器関係者の意見がほぼ纏まりつつある。

 

2. GLCTA

現状: AR南実験室からアセンブリーホールに移設した加速管高電界試験装置の立ち上げを継続している。現在設置の加速管はSLAC から戻ったコンディショニング済みのもの(T53VG3F)で、これを使用して加速管内で発生するブレークダウンを検出するハード・ソフトシステムの最終立ち上げを行っている。RFプロセシング上の現在の問題は、加速管に至る以前の多数の導波管内の表面汚れと接続フランジ部分付近での耐電力性能不十分に起因するブレークダウンである。導波管内表面汚れに起因するものは逐次新規製作品に交換を行って改善中。フランジ部分付近での耐電力性能不十分に起因するものは、各種フランジの比較や新規製作品で改善を試みるなどの対策を講じているところ。初期RFプロセシングの目標は、パルス幅400ns、繰り返し50Hzでクライストロン出力40MW+60MWのパワー合成を行い、途中の導波管損失を経て加速管入力にて60MW以上を供給するところまで(現状は、400ns パルス幅でクライストロン出力 30MW+40MW、加速管への入力パワーは約 50MW)。ブレークダウン検出ソフト立ち上げ試験後の2004年2月には、新規KEK 加速管(H60VG3K1) を負荷として高電界試験を開始する予定。加速電界65MV/mでの長時間安定運転を目標とする。

 

3. ATF (2004年1月30日現在の状況)

運転:12月末から4週間の保守期間の後、2004年1月19日から1月30日まで間に2週間の運転を行い、各種ビーム実験を行っている。しかし機器の故障が重なっているため、加速器を良好な状態で運転できる時間は少なかった。以下にこの2週間での運転状況と新規到達事項のみ列記する。

1.      機器の故障状況:以下の機器が故障状態にあり、復旧作業中。

@      取り出しキッカーの放電ノイズによる誤動作

A      リニアッククライストロン集中高圧電源のVCB動作不具合

B      リニアッククライストロン変調器電源の故障

C      一部のソフトウェアウィンドウからの制御不具合、

D      その他、多数の小故障あり。

2.      RF gun からのビームの低エミッタンス保存加速の研究のため、現在、BBAによるBPMのオフセット校正をしたり、Qマグネットや加速管のアクティブムーバーを使用したりしてエミッタンス増大の抑制を研究中。今回、加速管ムーバーによるビームベースアライメントによりリニアック下流部での2倍のエミッタンス増大を抑制する事ができた。ただし、RF電子銃のレーザー光の調整不十分により測定されている正規化エミッタンスは4倍程度大きかったので、低エミッタンスビームでの再確認が必要である。

3.      取り出しビームのエミッタンスがリング内のエミッタンスに比べて2倍程度大きい、という問題に対して継続的な研究が行われている。取り出しキッカーおよび取り出しセプタムマグネットのフリンジフィールドによるカップリングの効果を探るため、垂直方向に意図的に2mm程度の変位をつけたところ、取り出したビームのYエミッタンスに減少効果がみられた。

-       その他、加速器性能改善のための改造やビームデータ取得、各種ビームモニターの改造、共同開発研究による実験(偏極陽電子生成実験、X線SRモニター)を行っている。

 

4. X-バンド

4.1 クライストロン

PPM4号機:KEKにて再試験中のところ、2月4日現在で72MW、1.4ms、17Hzまでコンディショニングが進んだ。改修時に窓のセラミック周囲のロウ付けによる真空漏れがあり、その懸念から、再再度改修した時は通常より低い温度で排気せざるを得なかったため、東芝での排気直後から電子銃辺りの真空が悪いという状況が続いている(通常の数倍)。3回の排気による電子銃への悪影響があると思われる。しかし、その後高電圧で電子銃のコンディショニングを継続した結果、電子銃の性能がかなり回復してきており、引き続き2月中旬までコンディショニングを行う。AR南ではその後PPM5号機のコンディショニングに移るが、PPM4号機のコンディショニング結果が良好であれば、3月末にGLCTA用の新規変調器が完成しだい、GLCTAでPPM4号機のコンディショニングを継続することを検討中。

PPM5号機:冷却系、RF窓などに一段の性能向上が期待される5号機もすでに完成しており、KEKで試験待ちの状態にある。ITRPが5月末にKEKを訪問したときに、このクライストロンが最も優れた性能を示せると期待されるので、それに間に合う様、2月中旬から試験を開始する予定。

PPM2号機:現在東芝で電子銃を含め改修中。

 

4.2 パルス圧縮

SLED-II 関連開発:4.8 dB及び6 dB電力分配器をKEKで製作している(既報)。これは、NLCTAでのSLED-II試験計画のうちSLACで現在準備中の第2期実験において、SLED-IIから加速管への電力分配システムの中心要素として使用予定のもの。現在、2番目のover-height低電力モデルの製作が終わり、特性を測定中。最終的な大電力モデルは2004年2月末-3月初めに完成する予定。

NLCTA SLED-II試験への人的参加:日米で共同してこの計画を成功に導くために、現在KEKから非常勤研究員のAndrei Lounineがcommissioningに参加、大きく寄与している。Lounineは当初の予定を延長し3月一杯までSLACに滞在し参加を続ける(既報)。

 

4.3 モジュレータ

線形インダクション変調器:現在実機の製作中。2003年度末ごろまでの完成を目指す。

 

4.4 加速管

NLCTA でのH60VG4S17-I加速管試験:これまでに500時間程度の高電界試験時間を経過。放電頻度は180時間経過時点(前回報告)の1BD/hrから0.5BD/hr程度まで減少、最近の60p加速管の平均値に達した(2002-2003年の間に試験した主な加速管の放電頻度(いずれも60Hz運転時)を加速勾配の関数としてプロットした図を付す)。そこで、加速管に印加するRFパルスのプロファイルが放電頻度にどのような影響を及ぼすかについて、若干の実験を試みた。

·        SLEDによるパルス圧縮を行うと、本来のビーム加速に使う本パルスの生成前に、低電力のプリパルスが出力される。これが放電事象を誘発しているかもしれないことが指摘されていた。その検証のため、SLEDをバイパスしてプリパルスの無い場合を調べたが、放電頻度に差は見られなかった。

·        これまでの高電界試験では400ns長の矩形波の時間プロファイルをもつパルスを印加してきた。しかし、実際のLC運転では多バンチ加速に伴うビームローディング補償のため、400nsのうち先頭の約100nsのあいだはゆっくり立ち上げる(Ramping)ことになっている、という差異がある。このランピング波形を試みたところ、放電頻度は1時間当たり0.5→0.15BD/hrに減り、当初目標の0.1にかなり近づいた。

過去の実験によれば、放電頻度はパルス長、パルス電力の双方に Exponential的に依存するため、僅少のRampingであっても放電頻度を大きく減少させる可能性のあることが指摘されてきた。今回のRamping実験の結果はこの予想とconsistentでありかつ、LCの実運転上の朗報であるが、更なる検証が急がれる。

KEKセル製作作業:春からの高電界試験に供する予定の本命の高電界試験加速管として製作しているH60VG4S17-III用加速管の1台目のセル製作は、KEK工作センターにて殆ど完了し、現在カプラーパーツも最終製作に入っている。最終組み立てを行うSLACのショップではSLED-IIおよびPPM関連の製作の負荷が大きい状況とのことであるが、なるべく優先的にこの加速管の製作試験を行えるよう要望している。

 

以上、