OECD/CSTP/GSF(グローバル・サイエンス・フォーラム)
高エネルギー物理学コンサルタティブグループ会合
- 日時平成15 年11 月20 日(木) 9:40〜15:30
- 場所OECD 本部第3 会議室(パリ)
- 出席者別紙1(事務局作成)のとおり
日本からは、横谷高エネルギー加速器研究機構教授、
織田高エネルギー加速器研究機構国際交流課長
概要
◎ 全体として
今回の会議は、全体として出席した各国、各機関、各団体からの、前回3 月27 日の
会議以降にあった高エネルギー物理学(以下「HEP」と表記。)やリニアコライダー(以
下「LC」と表記。)に関する報告のみで、特定のことについて議論をしたり、また意思
決定をしたりということは特になかった。
ただし、来年1 月に予定されるHEP に関する閣僚声明発表後も、本会合を年1 回程
度開催し、LC を含むHEP 全般に関して引き続き各国で議論していくこととなったほ
か、来年技術の選択の議論が行われるなどLC の具体像がはっきりしてくる中で、各国
とも政府やファンディングエージェンシー(以下「FA」と表記。)との絡みへの関心が高
まっていることが感じられた。来年は、イアン・ハリデー氏が主催するFA の会議(FALC)
など、今後各国政府やFA 間でも協議を進める動きが一層高まる印象を受けた。
◎ 主な事項について
- 議題3 イアン・ハリデー氏によって召集された政府間会合の報告
英国・PPARC の所長でもあるイアン・ハリデー氏より、今年7 月にロンドンで開催さ
れた各国FA 間の会合(FALC)の報告があった。内容としては、米国(DOE、NSF)、カナ
ダ、仏国、英国、独国、CERN から出席があり、日本、中国といったアジアからの出席
がなかったことは残念であったが、将来のLC に対する資金支出についての議論がなされ
たとの報告があった。
次回の同会合は、2 月末から3 月にかけての間でロンドンにおいて開催する予定であ
り、日本や中国の参加を是非求めたいとの意向で、早急にハリデー氏の方で調整をして
連絡をするとの報告があった。
- 議題4 高エネルギー物理学に関する閣僚声明を含む、OECD の活動関連の報告
本会合の事務局であるミカロフスキー氏より、かねてより議論を続けてきたHEP に関
する閣僚声明案(コミュニケの添付資料)については、数ヶ月にわたって字句の修正を含め
議論を行った結果、本日お配りした資料(資料2)にもあるような文案となったことの報告
があった。(これは、10 月中旬に電話会議を経てまとめられた文案のバージョン4 と同じ
ものである。)
これに併せて、当日発表されるコミュニケの文案も配布された。(特に意見なし。)
本閣僚声明は、HEP に非常に有益なものであることと、今後の日程として、12 月12
日に閣僚級会合に向けた最後のCSTP 会合(MEXT より井上次長出席予定)で最終決定を
した上で、1 月のCSTP の閣僚級会合で了承されることが報告された。
また、この声明を受けて、今後、来年予定されているFA の会合の議論も踏まえつつ、
各国が抱えている問題等も含め意見交換していきたいことや、このような国際的な事業
に関して2004 年にもワークショップを開催して、サイエンス、テクノロジー、ディバイ
スなどについて適切な方法を分析するなどの機会を持ちたいとの報告があった。
- 議題5 各コミュニティからの報告
ICFA、ECFA、ACFA 及びHEPAP(米国)の各代表から、3 月の前回の本会合以降の出
来事についての報告がなされた。
なお、これらは既に公になっているものである。
- ICFA(報告者:Jonathan Dorfan 氏)
ICFA の活動についてのプレゼンテーションが行われた。(資料3)
この中で、前日(11 月19 日(水))にパリで開催されたILCSC(インターナショナル・リニアコライダー・ス
テアリングコミッティ)において、LC の主要技術を検証し決定するための委員会(インターナショナル・テクノロ
ジー・リコメンデーション・パネル(ITRP))を設置し、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの各地域から推
薦のあった各4 名、計12 名をこの委員として決定し、本委員会において議論をして、2004
年のできれば7 月末、遅くとも年末までに結論を出すことになったことと、第1 回目の
ITRP の会合を2004 年1 月に開催することが報告された。
- ECFA(報告者:Bryan Foster 氏)
特にELCSG のこれまでの活動についての報告があった。今年4 月以降10 回の会合を
重ね議論を進めてきたことや、2004 年にパリで国際LC 委員会を開催することなどが報
告された。
- ACFA(報告者:Won NamKung)
これまでの活動について、過去の歴史や組織なども含め報告があった。(資料4)
- HEPAP(米国)(報告者:Jonathan Dorfan 氏(USLCSG 関係)、Fredrick Gilman 氏(それ
以外))
プレゼンテーションを通じて、米国内におけるLC も含めた高エネルギー物理に関する
政府及びコミュニティの活動についての報告があった。(資料5 はプレゼンテーションの
一部抜粋資料)
プレゼンテーションの中で、特に「DOE Office of Science Facilities」については出席
者の高い関心を集めていた。これは、DOE のOffice of Science が今年の11 月10 日に公
表したもので、途中経過については前回3 月の本会合でも報告があったが、DOE の研究
施設について、6 つの助言委員会での提言をもとに、DOE が2004 年からの今後20 年間
での優先順位付けを行ったものである。
このうち、LC については、優先順位としては13 位だが、計画の準備状況を基に区分
された@Near-Term、AMid-Term、BFar-Term の中のAMid-Term の第1 位に位置し
ており、決して優先順位は低くないことから関係者からはとても評価されている。米国
では既に具体的なR&D を開始しており、日本からの資金協力を得て実現する準備がある
との発言があった。
- 議題6 各国からの報告
スペインからは、プレゼンテーションに基づき最近の国内の動きが、ドイツ、カナダ、
フィンランド、フランス、スウェーデンからも口頭で簡単な報告があった。
特に、独国からは、LC について9 月に教育研究大臣に上げたところ、施設の誘致を含
め本格的に取り組むことを決めた旨の発言があった。
また、ヨーロッパの小国は、LC はCERN を通じてという姿勢が強いことを感じた。
- 議題7 素粒子物理学に係る地下施設の利用について
独国代表からの紹介の後、今回このために出席した英国のDavid Wark 氏(ラザフォー
ド研究所)より説明があった。
説明では、英国、伊国などで現在鉱物採掘後に利用されていない地下空間があるが、
ヨーロッパ、アメリカ、日本(神岡)など最近世界で活動している地下研究施設の例に鑑み、
これを素粒子物理学の研究のために活用できるよう、国際間のワークショップなどを開
催して、議論できないかという提案があった。意見としては、これを素粒子物理学のみ
ならず生物学等の他の研究分野全般に対象を広げて考えるべきではないかという意見も
出された。結論として、今日の提案を踏まえ各国政府やFA に意見を求めるなどして、そ
れについて興味があるというのであれば、将来のこうした地下空間の利用について検討
することになった。
- 議題8 今後の本会合について
事務局のミカロフスキー氏より、LC については、閣僚声明案にもあるように引き続き
各国間で検討していくこととなっていることから、今後も例えば年1 回程度この会合を
開催して、LC に関する問題やHEP に関するその他の問題について各国間で議論してい
きたいとの提案があった。独国代表からはしばしば開催したらという意見も出されたが、
複数国から年に1 回程度という提案に賛同する意見が出され、事務局提案に特に異議は
なく提案の通りとなった。(日本にも意見を求められたが、年に1 回程度ならと回答した。)
また、本会合では引き続き、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの3 地域から議長・副議
長を選出することとし、議長には引き続き英国・PPARC のWade 氏が就くことになつた
ほか、副議長についてもこれまで通り米国、日本からそれぞれ1 人ずつの計2 人とした
いので来週以降連絡するとの発言があった。
これについては会議終了後にミカロフスキー氏に確認したが、これまではKEK の山田
前素核研所長が副議長であったが、これに代わる人選をお願いしたいこと、副議長の仕
事としては毎回本会合に出席し、議長が欠けた場合には代わりに議事を進行すること、
必要に応じて電話会議に出席したり本会合に係る案件についてメールでのやり取りをお
願いすることの話があった。
こちらからは、来週日本帰国後に、文部科学省とも相談して連絡する旨回答した。連
絡については、OECD に出向中の古田氏を通じて行うこととなった。
次回本会合の具体的な日時・開催場所の決定はなされていないが、来年10 月19 日に
CERN の設立50 周年記念式典があることから、その前後にCERN でやってはという意
見も出された。
(以上)
【参考】
- 議題5 各コミュニティからの報告の詳細
- ICFA
ITRP の12 人のメンバーは以下の通りである。
- Barry Barish (カリフォルニア工科大学教授米国) → 委員長
- Jonathan Bagger (ジョンズ・ホプキンズ大学教授米国)
- Paul Grannis (ストーニー・ブルック研究所米国)
- Norbert Holtkamp (オークリッヂ研究所米国)
- Jean-Eudes Augustin (LPNHE 仏国)
- Giorgio Bellettini (伊国)
- George Kalmus (元CCLRC 素粒子物理部長英国)
- Volker Soergel (DESY 独国)
- Gyung-Soo Lee (韓国基礎科学研究所韓国)
- 政池明(京都大学名誉教授奈良産業大学教授日本)
- 生出勝宣(高エネルギー加速器研究機構教授日本)
- 菅原寛孝(前高エネルギー加速器研究機構長日本)
なお、この情報については、本日(11 月20 日)ICFA のホームページに公開しているとの
こと。
メンバーの多くが既に引退しているが、外部からの影響を受けずに全く独立して協議す
るのかといった質問もあったが、これは外部と大いにコンタクトを持ち情報を得ることに
よって進めるものであるとの回答であった。
報告の後質疑応答がなされたが、仮に技術が決定されたとしても、FA がそれに見合う形
での財政支出が可能かどうかを懸念する質問が複数あった。それに対して、英国PPARC の
イアン・ハリデー氏からは、FA としてもこの動きに併せて案をつくって対応を検討してい
きたいことや、コミュニティに対してもFA と共同で議論を進めることに期待する旨の発言
があった。また、ICFA 代表からも技術の決定の際には費用も一つの判断基準になることが
述べられた。
費用以外では、LHC とのオーバーラップの関係(LHC とのオーバーラップは問題ではな
いという意見もあり、また、LHC とLC が分離できれば政治的にも楽になるという意見も
あった。)やLC の技術決定後のデザイン決定の過程についての質問や、ITER に絡めた意見
(FA の早い時期での関与が望ましい。ITER の時間がかかっている原因は技術的な問題では
なく政治的問題である。)も出されていた。
- HEPAP(米国)
LC に関する動きとして、現在行われているUSLCSG の3 つのサブコミッテイは、
- アクセレレーター・サブコミッティ・・・来年早々にも報告書を提出予定
- フィジクス・サブコミッティ・・・12 月の初めに最終報告書を提出予定
- インターナショナル・アフェアー・サブコミッティ・・・12 月に報告書を提出予定
また、技術の決定の後に何をすべきか議論するものとして4 つのタスクフォース(@ア
クセレレーター&テクノロジー、Aコスト・スケジュール、Bシビル・コンストラクショ
ン・サイティング、Cアベイラビリティ)の議論が進行しているとのこと。そのうちAの
中では、建設予定地の選定にはとても苦労しているが、カリフォルニア州、イリノイ州
などといった話が出ているとの話が紹介された。更に4 つのタスクフォースそれぞれか
ら人を出して、リスク・アセスメントをすることも紹介された。