LC 関係報告
2003年12月
1.会議など
ILC Task Force Subgroup(別途報告)
2003年12月3日から5日まで米国BNLにおいて開かれた。メンバーはBNL尾崎(議長)、Mike
Harrison(書記)、ヨーロッパ(独)Franz Peters、Nick Walker、アジア(日)浦川、横谷、北米(米)Dave Burke、Ted
Lavine (欠席)。会合では、まず、コスト評価およびR&D の予定について報告を行い、次に、今後のLC 計画の進め方、とくに財政当局との関係、予算の算定方法、予算の執行手順などについて議論し、まとめた。
ISG-XI(別途報告)
2003年12月16日から19日までKEKにおいて開かれた。米国からはSLACの他、LLNL、FNAL、BNLから28名の参加があった。今回の会合ではTRCのR1,R2達成の状況と今後の計画のレヴュー及び立案であり、もうひとつは
ITRP (International Technology Recommendation Panel) に向けて X-band technologyをどう Presentation
するかを協議した。
2. NLC / NLCTA /
SLED-II 試験(旧称8-pack 試験)状況
リニアコライダ主加速器の高周波源の実証試験が、11月10日(月)からSLACで開始され、日本側からは奥木、Lunineの2名がシフトに入り、実験を行った。この高周波源は、半導体スイッチ(IGBT)を用いた新型のパルス電源、4台の50MWXバンドクライストロン、新型の高周波パルス圧縮器(略称SLED-II)、大電力に耐える導波管システム、及び、無反射終端器などからなる試験装置である。約1ヶ月にわたる試験の結果、12月9日、4台のクライストロンの合計出力約180MW(1600ns)をパルス圧縮して、585MW(400ns)まで増幅することに成功した。これは、ほぼ設計通りのパルス圧縮率(3倍以上)であるとともに、当面の実証目標(TRC
Rank1相当)である475MWを大幅に上回る値であり、この目標出力では安定して運転できる可能性を実証したものである。
3. GLCTA
現状:AR南実験室からアセンブリーホールに移設した加速管高電界試験装置の立ち上げ中。大電力RFにより導波管系のRFプロセッシングを繰返し5Hzで行っており、パルス幅100nsの時クライストロン出力30MW程度+50MW程度のパワー合成、また使用予定の400nsパルス幅ではクライストロン出力25MW程度+40MW程度のパワー合成まで進んだ(12/14現在)。現在の使用加速管はSLAC から戻ったコンディショニング済みの加速管(T53VG3F)である。RFプロセッシングを制限している要因は導波管内表面汚れと耐電力性能不十分に起因するブレークダウンで、逐次新品に交換もしくは内部再洗浄を行って改善している。RFプロセッシングの目標は、パルス幅400ns、繰り返し50Hzでクライストロン出力40MW+60MWのパワー合成をして、途中の導波管損失によるパワー減衰を考慮し、加速管に60MW供給することである。プロセッシング終了後の2004年1月には新規KEK 加速管(H60VG3K1) を負荷として高電界試験を開始する予定で、到達目標は加速電界65MV/mでの長時間安定運転である。
4. ATF
運転:10月20
日から12月19日まで間に7週間の運転を行い、新規モニターの立ち上げや各種ビーム実験を行った。新年の運転は1月19日から2月6日まで3週間も予定。
運転状況および新規到達事項:
1.ビーム強度倍増運転(GLCバンチ強度のマルチバンチ)を調整中であり、リング各所に温度モニターを配置して温度上昇を監視しながら大電流運転を行っている。20バンチ、1トレインにて60mAが目標であるが、現在45mAが最高であり、リニアックでのエネルギー補正調整の強化を行う予定である。また、マルチバンチ低エミッタンスのためには大蓄積電流でのリング内の焼き出しが必要不可欠であるが、現在3トレイン運転での最高電流は123mAでありベローチェンバーの温度上昇で制限されている。現在その温度上昇の対策中である。
2.レーザーワイヤーモニターは光共振器を高次モードで運転できる様に改造してあり、高次モードでのビームサイズ測定に成功した。これにより低エミッタンスビームのビームサイズ測定を従来の半分以下の分解能で行う事ができるようになった。
3.回折放射光モニターは上流マグネットから発生する放射光バックグランドをマスクできる様に改造して、理論予測に近い放射分布が得られるようになり、測定分布からのビームサイズ測定に成功した。分解能は17μm程度であるが、測定角度分解能を上げかつバックグランド低減により5μm程度まで上げる事ができる予定である。
4.nmフィードバックを目指すファーストフィードバック研究のための専用のビーム位置モニターおよびストリップラインキッカーが取り出しラインに設置され、当面はμm程度以下のビーム位置制御を目指してビーム試験中である。現在ストリップラインキッカーの性能試験中であり、予定通りのビームキックを確認している。
5.マルチバンチ時に発生している縦方向振動の研究のため、マルチバンチマルチターンBPMが立ち上がった。各バンチのシンクロトロン振動を定量的に観測できるようになり、ストリークカメラ測定と合わせて縦方向振動の発生原因を追求中である。
6.RFgunからの低エミッタンスビームのエミッタンス保存加速の研究のため、リニアックの上流部に4台、下流部に4台のワイヤースキャナーが設置され、リニアック入出力のエミッタンスを高速に測定できるようになった。現在、BBAを行ったりQマグネットや加速管のアクティブムーバーを使用したりしてエミッタンスグロースの低減を研究中である。測定されている正規化エミッタンスはリニアック入力で1.7μmがリニアック下流部で4.2μmと2.5倍に増大している。
7.その他の加速器性能改善のための改造の詳細、各種ビームモニターの改造などについては省略。
5. X-バンド
5.1 PPM クライストロン
改造PPM2号機:12月末にPPM2号機は日本に戻り、現在東芝で改修中。改修が必要な部位の程度により、2004年2月初旬か3月中旬には改修が終わる予定。4-5月頃にはKEKで再試験となる。ITRPが日本を訪問する際にdemonstrationするのはこの2号機になる予定。
PPM4号機:新型TE01窓を装着して現在再試験中。試験が順調に進めば、1月中に試験を終え、SLACに送る。3月にSLACで繰り返し120Hzでの試験を行う。その後NLCTAに移され、4-5月から新型2パック変調器を使って長期運転試験を始める予定。
PPM5号機:SLAC製の窓を装着し、冷却構造とRF性能も改善したPPM5号機は2003年12月25日にKEKに納入された。4号機の試験が終わる2月頃から試験を始める予定。その後4月頃に4号機のバックアップとしてSLAC-NLCTAに送る。
5.2.パルス圧縮
SLED-II電力結合部:KEKで製作したシングルモードSLED-II
back-up電力結合部は、8-pack計画の第2フェイズにおける3dB電力分配器として利用される。現在SLACで他の部品とのロウ付けを行っている。2004年2月末に完成予定。
Phase-II用4.8dB及び6dB電力分配器:8-pack計画の第2フェイズである、SLED-IIから加速管への電力分配システム構築に必要な4.8dB及び6dB電力分配器をKEKが製作することになった。最初のsingle-height低電力モデルが製作され、測定の結果、良好な結果を得た。最終的な大電力モデルは2004年2月末-3月初めに完成する予定。その後SLACに送られ、Phase-IIに参加する。
8-pack commissioningへの参加:日米共同で8-pack計画を成功に導くために、現在非常勤Andrei
Lounineが8-pack commissioningに参加し大きく寄与しているが、当初の予定を延長し3月一杯までSLACに滞在し参加を続ける。
5.3.モジュレータ
線形インダクション変調器:現在実機の製作中。2003 年度末ごろまでの完成を目指す。
5.4 加速管
加速管の最終パラメータに基づく形状を有するR1目的の加速管(H60VG4S17)の高電界テストを11月23日開始した。現在まで180時間コンディショニングを行って、65MV/mでの放電頻度は1時間当たり1回程度である。この加速管は、KEKのセル加工プログラムミスによりセル間に約20ミクロンのギャップが生じ電力損失があるため、入力パワーは当初設計より5%多い70MWを入力している。放電頻度はまだ数倍の改善が必要であり、コンディショニングの継続により頻度の減少傾向を調べている。
この加速管の特性では最終判断ができない可能性があるので、完全なセルでの特性試験を早急に行うべく、同一設計パラメータによる加速管を2台追加製作することにした。今回はカプラーも含めてKEKで製作し、1台目は1月末までにSLAC送付、3月後半からの試験を目指す。R2目的の加速管はその後続いてすすめる。
6. C-バンド
コスト評価
11月14日のLC計画推進委員会で提案されたリニアコライダCバンドオプションの主線型加速器に関する見積り作業を開始した。11月28日、12月3日に会合をもち、これまでの評価状況についての意見交換および今後の方針、担当などについて議論を行った。