LC 関係報告
2003年11月
1.会議など
11/1,2 Laser wire
workshop(京都)
11/4,5 NanoBPM mini-workshop(KEK)
2. NLC / NLCTA / SLED-II 試験(旧称8-pack
試験)状況
11/5現在ベーキングの温度を下げ、真空を引いている状態。予定通り 11/10 を目処にコミッショニングを開始。
3. GLCTA
現状: 加速管高電界試験装置の立ち上げを行っている。大電力RFで運転できる様に導波管系のRFプロセッシングを継続して行っており、11月10日現在で、パルス幅100ns、繰り返し5Hzでクライストロン出力50MW程度+40MW程度のパワー合成で進めている。使用加速管はSLAC から戻ったコンディショニング済みの加速管(T53VG3F)である。この1か月間での問題は各所で発生している導波管内表面汚れおよび耐電力性能不十分に起因するブレークダウンで、逐次新品に交換もしくは内部再洗浄を行って改善してきている。RFプロセッシングの目標は、パルス幅400ns、繰り返し50Hzでクライストロン出力60MW+40MWのパワー合成にて加速管に60MW供給するところまで行う。この時加速管加速電界は65MV/mである。プロセッシング終了後、即座に、新規KEK 加速管(H60VG3K1) を負荷として高電界試験を開始する予定である。(トラペンにて報告)
4. ATF
運転:10月20 日から10 月31
日までの2週間の立ち上げ運転を行い、長期保守期間内に変更した箇所のチェックや新規モニターの立ち上げなどを行った。
立ち上げ状況:
1.ビーム強度倍増運転(GLCバンチ強度のマルチバンチ)を調整中であり、現在バンチ強度を上げてリングに入射できるようエネルギー補正調整やリング内の焼き出しなどを行っている。
2.レーザーワイヤーモニターは光共振器を高次モードで運転できる様に改造してあり、高次モードでの予備的ビームサイズ測定に成功した。これにより低エミッタンスビームの測定を高分解能に行う事ができるようになった。
3.nmフィードバックを目指すファーストフィードバック研究のための専用のビーム位置モニターおよびストリップラインキッカーが取り出しラインに設置され、ビーム試験が始まった。これらの機器は電極間距離が自由に変えられる様になっており、試験の時には電極をぎりぎりまでビームに近付ける事ができる。当面はμm程度以下のビーム位置制御を目指す。
4.その他の加速器性能改善のための改造、各種ビームモニターの改造などについては省略。
(トラペンにて報告)
5.
X-バンド
5.1 PPM クライストロン
改造PPM2号機:SLACに於いて繰り返し120Hz、パルス長1.7マイクロ秒、電圧500kV(出力電力72MW)で試験中に電子銃の真空が不安定になり、その後、電子銃の性能を回復すべく低い電圧から電子銃のエージングのやり直しを行った。電子銃の性能はある程度回復したので、10月20日に電圧500kVで出力電力を測定してくれるよう依頼したが、電子銃が十分安定しているとはいえないとのことで、結局、10月27日に連絡を受けたときには電子銃の性能検査だけを行って試験を終了してしまっていた。その後の連絡(10月28日)で、PPM2号機の装備をはずしている最中に鉛シールドのサポートを電子銃周りのセラミックにぶつけてしまい、セラミックが外れクライストロン全体が大気圧になる事故が起きたとのことであった。これで試験の継続は完全に不可能になったので、至急PPM2号機を窒素ガスを注入後送り返してくれるよう依頼した。結局今回の試験では68MWの出力電力をパルス長1.7マイクロ秒繰り返し120Hzで達成したのがベストな記録となった。PPM2号機を再度改造するためには溶接等の関係で電子銃はつくり直すしかないので、現在新規に電子銃を制作中。
PPM4号機:東芝において10月24日に新型窓を装着した改修PPM4号機の排気が終わり、最終的な真空リークテストを行ったところ、最初に製作した新型窓からわずかながら真空リークが観測された。結果的にこの窓のセラミック近傍を作り直す必要が生じ、納入が延期された。製作も完了し、現在は再び排気の最中である。11月17−18日はKEKに納入される予定。帰って来次第、試験を再開する。12月末までには試験を終える予定。試験の結果が良好ならば、その後SLACに送って繰り返し120Hzでの試験を行う予定。
PPM5号機:冷却構造を大幅に改良し、またRF性能も改善したPPM5号機を現在製作している。装着するSLAC製の窓もDLACから届いた。2003年12月末には完成の予定。
5.2.パルス圧縮
SLED-II電力結合部及びSLED-II
head:SLACが製作しているマルチモードSLED-II電力結合部及びSLED-II headのbackupとして、シングルモードのSLED-II電力結合部及びSLED-IIheadをKEKで製作していたが、最終的な大電力モデルも完成し10月29日にSLACに航空便で送られた。現在SLACにおいて他のSLAC製の部品と一緒にロウ付けして完成させる準備中。Phase-II用4.8dB及び6dB電力分配器:8-pack計画の第2フェイズである、SLED-IIから加速管への電力分配システム構築に必要な4.8dB及び6dB電力分配器をKEKが製作することになった。現在、低電力モデルを製作中。11月には完成予定。最終的な大電力モデルも2004年1月末には完成する予定。その後、SLACに送られ、Phase-IIに参加する予定。添付した図は加速管への電力分配システムにこれらの電力分配器とSLED-IIのback-up電力結合器が3dB電力分配器として使用されている様子を示している。
8-pack commissioningへの参加:日米共同で8-pack計画を成功に導くために、11月9日から3ヶ月間の予定で非常勤のAndrei
Lounineが8-pack commissioningに参加している。
5.3.モジュレータ
線形インダクション変調器:開発を引き続き行っている。電気的及び構造的設計は完了した。現在実機の製作中。2003 年末ごろまでの完成を目指す。
5.4 加速管
R1(H60VG4S17)セル加速管2本目の製作完了してSLACに送った。
先に送った1本目はSLACにて既に完成し、11/17の週にNLCTAにインストール、11/26からコンディショニングを予定している。
R1加速管セルの外注製作工程での問題点を改善し、R2(H60VG4SL17)用レギュラーセルのテスト製作を開始した。外注分は12月末までに完了し、1月中旬までにKEKの仕上げ加工を終了の予定。
6. Cバンド
6.1.加速器科学:KEK研究発表件数:3
1)C-band活動全般:松本
2)RF圧縮空洞:吉田(東大)
3)大電力SiC rfロード:Win
6.2.RF圧縮空洞:KEK
1)大電力試験
現在、出力電力は130-MWmで安定に運転中。C-bandではクライストロン電源が1台のため、150-MWまでの試験が可能。現在の状況から、RF圧縮空洞は問題ないと判断している。本機は試験終了後、SCSS@SPring8の加速管高電界試験に使用する予定。
2)低電力RF系の開発:KEK
現在使用中のI/Q回路は市販パーツを組み合わせてRF圧縮空洞への位相反転等の制御を行なっている。その為、RF圧縮効率を最適化するような繊細な制御を行なうことは考慮していない。2004年度はI/Qモジュールの開発を行なうことが必要である。この開発では従来のような複雑な回路構成とならない、新しい方式を考案することが必要である。
6.3.大電力SiCロード:KEK
HFSSにより設計した低電力モデルによる最終寸法決定作業を10月末に実施予定。同時にSiCサンプルによる誘電率およびロスの計測を行なった。サンプルの計測はKEKB入射器で実施させて頂いた。この結果、誘電率は前回使用したSiCの約半分程度(〜10)であり、サンプル間のばらつきも大きかった。このため、HFSSで決定した空洞法は変更が必要と思われる。スケジュールは約半月遅れで進行中。大電力試験は2004年1月後半から2月の始めになる予定。
6.4.加速管高電界試験:SCSS@Spring8
高電界試験の放射線遮蔽室、RF系(KEKで試験中のRF圧縮空洞を除く)、ビーム分析系および真空系の設置はほぼ終了。SCSSは1台のクライストロン電源を500-kV電子銃と大電力RF源と交互に使用している。今現在は500-kV電子銃の開発に使用中であり、最優先事項である。加速管の高電界試験の開始は2005年1月頃になる予定。高電界試験と同時進行ができるよう変調器電源の増強を行う予定。
6.5. SIサイリスタの現状
パルスクライストロンのようにピーク電流(dI/dT)が5000A〜8000Aと非常に大きい場合、IGBTでそれを実現するには多数個を直列および並列に接続して使用することになる。このため、従来のものはSLACで見られるように回路構成が複雑で大型である。SIサイリスタは、ピーク電流が300-kA/μsecと大きい。それで、電圧に応じた単純な1回路直列接続が可能である。勿論、既存のサイラトロン並にコンパクトであり、回路構成も単純である。SIサイリスタは高dI/dのパルス動作に優れた(唯一の選択肢)
特性を有している。西沢先生が開発した純国産品でもある。最終製造元である日本碍子(NGK)との会合において大型のSIサイリスタの製造は既に中止したとの報告がされた。この決定はNGKは35億円の開発費(約5年間)を投入したが、商業的に見通しが無いとの判断。今後は小電力SIサイリスタの開発を急ぎ、高速スイッチ特性を生かした小型の高電圧パルス発生器に活路を見出す方針で社内決定がされている。大電力SIサイリスタの製造はこの結果を見て再評価するとのこと。リニアコライダーは大電力RF源(クライストロン+変調器電源)は最重要装置の一つであり、C-bandでは4千台を使用される。このように優れた技術が消滅せぬよう何らかの対策が必要と思われる。
以上。