読売新聞

ILC誘致期待 経済効果4.3兆、雇用25万人

記者会見する東北大の里見学長(右)と東経連の高橋会長(23日、仙台市青葉区の東北大で)

 大型実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の国内候補地に、本県を含めた北上山地が最適と評価されたことについて、県内各界が喜びに沸いた。実現への道のりはまだ遠いが、震災で疲弊した地域経済の活性化にもつながる巨大事業だけに、誘致に向けて関係者の期待は高まっている。

 北上山地への誘致を目指す「東北ILC推進協議会」で共同代表を務める里見進・東北大学長、高橋宏明・東北経済連合会会長(東北電力会長)は23日夕、仙台市青葉区の同大で記者会見に臨んだ。里見学長は、「岩手、宮城両県など、協力していただいた方々に感謝したい」と、喜びをかみしめるように話した。

 今回は科学者らでつくる「ILC立地評価会議」が、日本にILCを誘致した場合に北上山地と脊振(せふり)山地(福岡県、佐賀県)のどちらが適地かを評価したもので、国内への誘致に乗り出すかどうかは政府の判断に委ねられている。約8300億円に上るとされる建設費がネックとなる可能性もあるが、里見学長は、「日本初の国際実験場で、将来の子供に夢や希望を与える役割など、お金に換えられない効果もある」と強調した。

 一方、同協議会では、周辺への経済波及効果を約4・3兆円、雇用創出効果を約25万人と想定。高橋会長は「医療、IT、バイオといった分野を成長させるほか、新たな技術も生まれてくるだろう。初期投資は十分回収できるし、得るものは大きい」と話した。

 震災で甚大な被害を受けた本県にとって、ILCが復興に大きく貢献するとの期待も膨らむ。村井知事は「復興が進み、さらにILCが完成すれば、東北全体がにぎわう。震災からの新たなスタートを切ることができる」と歓迎。実験用トンネルの南端が差し掛かる気仙沼市の菅原茂市長も「この地に新たな産業が芽生えることは大きな光。人口流出にも歯止めをかけられるのでは」と手放しで喜んだ。

 また、同協議会が制作した北上山地へのILC誘致のPRビデオに出演した聖ウルスラ学院英智小・中学校(仙台市若林区)の伊藤宣子校長は、「子どもたちにとって素晴らしいことだ。東北の復興や経済の活性化にもつながる。課題を一つずつ解決し、誘致に向けて前進させてほしい」と語った。 (2013年8月24日 読売新聞)

毎日新聞

国際リニアコライダー:候補地、北上山地に決定 自治体や経済団体、祝福 実現へなお課題山積 /岩手

毎日新聞 2013年08月24日 地方版

 「国際リニアコライダー」(ILC)の国内建設候補地として北上山地が決まったことを受け、誘致に取り組んできた自治体や団体は喜びを表し、奥州市などでは祝福の横断幕を掲げた。ただ、巨額な建設費への懸念から政府は誘致を決めておらず、建設実現はまだ遠い。誘致活動の強化や、ILCの意義について広く国民の理解を深める取り組みが必要だとの声も上がっている。【金寿英、浅野孝仁】

 構想では、奥州市から一関市、宮城県気仙沼市に至る地下100メートルに、全長31〜50キロの素粒子実験施設を建設する。建設費は10年間で約8300億円に上る見通し。

 候補地のライバルだった九州の脊振(せふり)山地と比べ、北上山地は地形が優位で、地上から加速器につながるトンネルを短くでき、地下水の排水も容易など、工期の短縮が可能。近くにダムがないなどで許認可手続きも少ないと見込まれ、候補地を選定したILC戦略会議は「技術的観点で北上山地は大きく優位」と結論付けた。ただ、外国人の研究者や家族の受け入れの面では、大都市の福岡に近い脊振山地に軍配を上げた。

 経済団体などで組織する県ILC推進協議会の元持(もともち)勝利会長は「国内外の研究者らが集まり、経済の活性化や人材育成につながる」と歓迎。同協議会の玉山哲(さとし)理事は「経済効果は70兆円という試算もある」と期待する。一関市も市役所に「祝 ILC国内候補地 北上高地に決定」と書いた横断幕を掲げた。勝部修市長は「ILCは世界の財産。岩手には(世界遺産の)平泉という財産もある。二つを街づくりに生かしたい」と語った。

 一方、日本学術会議の検討委員会は今月6日、建設費や研究者確保に課題が残るとして「誘致は時期尚早」との見解を表明。県の大平尚(おおだいらひさし)首席ILC推進監は「誘致に対する責任も感じる。追加の地質調査などを進め、国に建設を要望する」と語った。金ケ崎町の高橋由一(よしいち)町長は「今回の評価は最終決定ではない。政府への働きかけなどに岩手、宮城両県や関係市町村と取り組みたい」と慎重姿勢を示した。

 岩手大学の藤井克己学長は「科学技術の予算が限られる中、全ての科学者の間でILCの優先度は高くない。基礎科学を育てるうえでもILCが必要だと、オールジャパンで理解を深める努力が必要」と指摘した。

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 ◇ILC誘致を巡る動き◇

日経新聞

次世代加速器の「悲願」官民で歓迎 候補地、東北に一本化 2013/8/24 12:00

 日本の研究者らが23日、次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の建設候補地を東北の北上山地(岩手、宮城県)に一本化したことで、東北では歓迎ムードが一気に広まった。関係者は地理的な優位性に加え、東日本大震災からの復興を強調した誘致活動が一定の成果をあげたとみている。最終的な決定はこれからだが、誘致の具体的な準備が今後、加速する。

 「20年来の悲願が達成された」。かつて岩手県職員として誘致にかかわった勝部修・一関市長は感慨深げに振り返った。岩手県の達増拓也知事も「東北の人々にとって、未来への希望を感じさせる大きなニュース」とコメント。岩手県ILC推進協議会の元持勝利会長も「東北の復興加速に大きな意味を持つ」と述べた。

 岩手県によると、誘致を競った九州・脊振山地に比べ、北上山地は「工期・コスト」面で勝り、地質面の評価が北上山地63対脊振山地37と大差だったとされる。宮城県の村井嘉浩知事も「(今後、政治力で九州になる可能性は)ないと思う」と強調した。

 東北ILC推進協議会はILCの建設開始から30年で4兆3000億円の経済波及効果が生まれ、25万人の雇用を生むと試算する。この日、福島県郡山市で開かれた講演会でも吉岡正和東北大・岩手大客員教授は、原子核物理学や超電導、がん治療機器などの研究の突破口としての役割に言及。「自動車や日用品など生活密着産業への活用も進む」とした。

 村井知事は「米国のシリコンバレーのような新たな産業を興せる都市を構築できれば、東北発の産業が日本、世界を動かしていく」と将来像を描く。その実現へ、岩手県も「最終的な建設決定は数年先になっても、事前にできる準備作業に取りかかる」(大平尚・首席ILC推進監)という。

 まず環境アセスメントの事前調査に着手する。7月に設置した「医療」「教育」「まちづくり」「産業振興」のワーキンググループも始動。例えば、研究に関連して海外から訪れる外国人研究者の家族などを考慮して、外国人子弟の教育のためにインターナショナルスクールを造るのか、通常の小中学校で受け入れるのかなどの検討を行う。

 研究者へのサポート体制の検討も不十分とされ、地元と協力した支援体制づくりが急がれる。国際間の費用負担などでも課題が残る。東北ILC推進協議会代表を務める里見進・東北大総長は「オールジャパンで誘致したい」と強調している。

毎日新聞

国際リニアコライダー:北上山地、建設候補 ILCに高まる期待 「震災復興にも効果」 /宮城

毎日新聞 2013年08月24日 地方版

 23日、宇宙誕生の謎に迫る超大型加速器「国際リニアコライダー」(ILC)の国内建設候補地に岩手・宮城両県の北上山地が選ばれたことを受け、大学や自治体、経済団体などでつくる「東北ILC推進協議会」(99団体)は記者会見し、「東日本大震災からの復興にも効果がある」との見方を示した。

 北上山地のILC計画では、岩手県奥州市・一関市から気仙沼市までの50キロの地下トンネルを建設。同会などは、工事や新産業の創出のほか、国内外の研究者が集まる国際研究都市の誕生などを想定し、国内経済波及効果4・3兆円を見込む。

 この日の会見で、同会代表の里見進・東北大学長は「世界を革命的に変える研究成果」への意欲を語った。一方、8300億円以上とされる建設費に対しては「未来の子供に夢を作る大きな仕事」と国を挙げて予算確保などを進める必要性を訴えた。同代表の高橋宏明・東北経済連合会会長は他国との費用負担交渉を必要とした。

    ◇

 一方、村井嘉浩知事は記者団に「財源は国内外から集めなければならず、岩手県を中心にして政府に働きかける。しかし、自治体の財政負担は無理」として、県は研究者らの住居やインフラ整備で協力する考えを示した。

 気仙沼市の菅原茂市長も記者団に「関連産業立地に伴う経済波及効果のほか、地域活性化、人材育成など各分野への寄与が期待できる」と歓迎。建設される際、同市は、海上輸送や一次組み立ての拠点、各国研究者の居住区になることなどが期待されている。

 また、日本への誘致そのものが決まっていないことについて菅原市長は、「宮城、岩手両県や一関市、奥州市など関係団体と一体となり、誘致活動を展開していきたい」と述べた。【久木田照子、井田純】

産經新聞

ILC候補地に北上山地 岩手・宮城「気を引き締め準備」

産経新聞 8月24日(土)7時55分配信

 ■「未来へ希望」沸く地元

 国際リニアコライダー(ILC)の国内建設候補地に研究者が北上山地を選んだ23日、岩手、宮城両県の関係者からは「東日本大震災からの復興に弾みがつく」などと歓迎する声が上がった。候補地は北上山地の岩手県奥州市から一関市にかかる部分で、将来的には施設が宮城県気仙沼市まで延伸される見通しだ。ただ、今回の選定で建設が始まるわけではなく、政府も誘致の是非を判断していないことから、両県は「気を引き締めて、できる準備をやっていく」として誘致態勢の強化を図る。

                   ◇

 岩手県庁では23日午前、ILC誘致を担当する県政策推進室の職員6人が、研究者の東京都内での記者会見をインターネット中継で見守った。全会一致で北上山地を候補地とすると発表されると、「よし」との声が上がった。

 大平尚首席ILC推進監は「ほっとした。(日本の代表となるので)責任感が大きい。復興にもつなげたい」と話した。同時に、文部科学省から意見を求められた日本学術会議が「誘致は時期尚早」との見解を示していることを踏まえ「政府への要望活動を行っていく」と表情を引き締めた。

 同日午後には、盛岡市の盛岡商工会議所で、県国際リニアコライダー推進協議会会長の元持(もともち)勝利県商工会議所連合会会長が会見。「ILC建設の意義が広く全国に理解され、オールジャパンの取り組みとなるよう、日本商工会議所を通じて働きかけ、政府が日本誘致の方針を決定するよう、さらなる要望活動を強力に展開したい」との談話を読み上げ、「岩手が発展する要因になる」と喜んだ。

 県政策推進室によると、研究者で構成する「ILC立地評価会議」の地質的な評価は、候補地を競い合っていた背振山地(佐賀、福岡県)の37点に対し、北上山地は63点だった。背振山地は、建設地の上に住宅地やダムがあるなど工期の長さやコスト面で課題が多かったという。

 ブラジル訪問で不在の達増拓也知事は「復興に取り組む東北の人々にとって、未来への希望を感じさせる大きなニュース」とのコメントを寄せた。

 建設候補地となる奥州市の小沢昌記市長は「決定は東北、そして奥州市の将来を考える上で、歴史的出来事だ」、一関市の勝部修市長は「政府がプロジェクトとして位置づけ取り組みを推進できるよう、地元自治体として役割を果たしていきたい」とのコメントを発表した。

 今年1月にILC推進会議を立ち上げた岩手大の藤井克己学長もこの日会見し、地元研究機関として、トンネル掘削に対する技術協力などを行う用意があることを説明した。

河北新報社

復興加速」東北期待 ILC候補地、北上山地に

北上山地のILC国内候補地選定の発表を受け、ホッとした表情を浮かべる岩手県の担当者=岩手県庁

 超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の国内建設候補地が23日、岩手県南部と宮城県北部にまたがる北上山地に決まり、誘致実現に向けた動きは大きく前進した。ただ、政府は国内誘致をまだ決めておらず、先行きには不透明感も漂う。両県の関係者は胸をなで下ろしつつ、誘致活動の一層の推進へ気を引き締め直した。

 南米・北米に出張中の達増拓也岩手県知事は「未来への希望を感じさせるニュースだ。政府には、誘致に向けた取り組みを進めるようお願いしたい」とのコメントを発表した。村井嘉浩宮城県知事は「シリコンバレーのように新たな産業を興す形になれば、世界を動かすことになる」と期待を膨らませた。

 誘致実現に向け両県を後押ししてきた経済界、大学の期待も大きい。  岩手県ILC推進協議会長の元持勝利岩手県商工会議所連合会長は記者会見し、「東北の復興を加速させる。産学官が連携し、まちづくりや受け入れ態勢の整備に取り組む」と力を込めた。  藤井克己岩手大学長は「大学として、可能な限り計画をサポートしたい」と語った。  東北ILC推進協議会代表を務める里見進東北大総長は「実現すれば、日本初の国際的なプロジェクト。世界の子どもに夢を与える仕事になる」と強調。同じく代表の高橋宏明東北経済連合会長は「計画実現に向けて新たなステージに入った。体制をグレードアップさせ、国に国家プロジェクトとしての誘致決断を働き掛けたい」と決意を新たにした。

◎「実現を」沸く地元

 ILCの国内候補地として選定された北上山地の地元の岩手県一関市や奥州市、宮城県気仙沼市では23日、喜びの声が広がった。  一関市の勝部修市長は市役所で臨時記者会見を開き、「うれしい。何とか実現したい」と述べた。現在の選定段階については「登山口で、まだ山に登っていない」と話し、関係機関と連携し、国への働き掛けを強める考えを示した。  奥州市の小沢昌記市長は「復興を目指す東北にとって朗報」との談話を発表。気仙沼市の菅原茂市長は「気仙沼港が資機材の搬入拠点となり、市内に部品の組立工場を誘致することも検討されている。新産業が芽生えれば、被災地の大きな光になる」と期待を込めた。  一関市は選定を受け、機構改革で「ILC推進室」の新設を決めた。同市と奥州市は、それぞれ庁舎に候補地選定を祝う横断幕を掲げた。  ILCのトンネルの中心点に想定される一関市大東町の自治会組織会長の菅原五三男さん(60)は「何もない所のただの岩盤が、世界的な施設の資源になると認められた。地域で勉強会を開き、機運をさらに盛り上げたい」と興奮気味に語った。  奥州市などの在日外国人でつくる「インターナショナルILCサポートコミッティ」の委員で同市胆沢区の遠藤ペルリタさん(49)は「英語表記の地図の作製や看板の設置、通訳ボランティアなどをしたい」と話した。

産經新聞

脊振落選、不満タラタラ ILC誘致、第2ラウンドへ 福岡・佐賀 2013.8.24 02:11

 ■「割り切れない気持ち…」 大逆転になお望み

 国際リニアコライダー(ILC)建設候補地として研究者組織「ILC立地評価会議」が北上山地(岩手県)を最適とする評価書を決定したことにより、脊振山地(福岡、佐賀両県)での1兆円プロジェクトは一気に遠のいた。熱心に誘致活動を続けてきた福岡、佐賀両県の関係者は不満タラタラだが、完全に夢が潰えたわけではない。政府の最終決定での大逆転に向けた第2ラウンドは今始まったばかりだ。(田中一世)

                   ◇

 「意外な結果で驚いてます…。国内外の研究者や家族に快適な環境を提供するには生活環境の整備状況などがもっと比較検討されなければならない。政府はさまざまな角度から総合的に判断していただきたい」

 福岡県の小川洋知事は23日、記者団に悔しさをにじませた。佐賀県の古川康知事も「割り切れない気持ちだ。早くきちんとした説明を受けたい」と語った。

 脊振への誘致活動を続けてきたILCアジア-九州推進会議代表の松尾新吾・九州経済連合会名誉会長(九州電力相談役)は、九州大の有川節夫総長と連名で「想定していない結果で驚いている。地震の頻度や社会的観点などももっと検討されなければならず、国が改めてさまざまな角度から検討されることを要望する」という悔しさ丸出しのコメントを発表した。

 とはいえ、国内候補地を最終決定するのは政府であり、ILC立地評価会議には権限はない。

 下村博文文部科学相は7月16日の記者会見で「研究者が『この場所がよいのではないか』と考えてもそれで決定ではない」と述べるなど、立地評価会議の評価書は参考にすぎないとの考えを重ねて表明してきた。

 しかも内閣府の特別機関である日本学術会議(大西隆会長)は、あまりに巨額な負担を伴うだけに「誘致判断は時期尚早」と慎重姿勢を崩していない。

 ILC計画の旗振り役である東京大の山下了准教授は「科学的、学術的観点で決めるべきであり、私たちの評価内容に間違いがない限り、政府にひっくり返されることはない」と自信を見せるが、過去には覆されたケースもある。

 平成14年には、国際熱核融合実験炉(ITER)の国内候補地選定をめぐり、政府は、茨城県那珂町(現那珂市)が最適とする研究者評価を覆し、青森県六ヶ所村を選んだ。最終的に仏カダラッシュに決まったが、政府が研究者評価を参考意見の一つとしか捉えていない証左だと言える。

 ということは、政府の最終決定で脊振が再浮上する可能性もある。九経連の担当者は「仮に今回の評価に非の打ち所がなかったとしても可能性は残されている。政府への働きかけは続けたい」と語る。

 ただ、ILCについては首相をはじめ政権中枢が冷淡だという現実もある。

 研究者組織が弾いたILC建設費は8300億円。関連施設を含めると優に1兆円を超える。研究者グループは「半分は立地国が負担し、残りは他国」というが、他国が負担する保証はどこにもない。

 ノーベル賞級の大発見が期待できるそうだが、核融合などと違い、成果を実社会にフィードバックしにくいことも政府を及び腰にさせる要因となっている。

 これに加えて北上山地は、安倍晋三首相率いる現政権幹部が忌み嫌う生活の党の小沢一郎代表の地元でもある。立地評価会議は政府の「やる気」を自ら削いだと言えなくもない。

 逆に言えば、政府を前向きに転じさせる「プラスα」を打ち出せれば、大逆転があってもおかしくはないということだ。それには福岡、佐賀両県だけでなく、オール九州の政財官界が結束して知恵を出し合う必要があるだろう。

日商ニュース

国際リニアコライダー(ILC)日本誘致に向けた岡村会頭コメント

2013年8月23日 20:03

 本日、ILC立地評価会議の科学的評価により、国際リニアコライダーの建設候補地が北上山地に決定し、一本化された。

 科学技術創造立国として世界を牽引していくために、世界最先端の科学研究施設であるリニアコライダーの誘致は、わが国にとって極めて重要であり、オールジャパンで実現することが必要である。

 今後、日本政府には、国内誘致を正式表明し、国際交渉を呼びかけるとともに、各省庁横断的な体制づくりを進め、国際リニアコライダー設置の実現を図られたい。

 日本への立地が実現すれば、東日本大震災で甚大な被害を受けた東北地方の復興に、大きな弾みになると期待している。

以 上

読売新聞

科学者組織の評価で、宇宙誕生の謎に迫る大型実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の国内候補地として北上山地(岩手、宮城両県)が最適と発表された23日、脊振山地(佐賀、福岡両県)への誘致に官民一体で取り組んできた県内の関係者は落胆し、選定理由に不満をあらわにした。

 県庁では、古川知事やILC誘致を推進してきた佐賀、唐津、神埼各地区の推進協議会の幹部ら約30人が集結。午前9時半頃から、大型モニターで動画サイト「Ustream(ユーストリーム)」による科学者組織「ILC立地評価会議」の記者会見(東京)の生中継映像を見つめた。

 開始から約10分後、「建設候補地は北上山地が最適」と発表されると、関係者は一斉に顔を曇らせた。モニターを見ていた古川知事は、ぶぜんとした表情を浮かべた。脊振山地が選ばれなかった理由として、活断層の存在などが挙げられると、県庁に集まった関係者からは、「北上山地の調査は十分に行われているのか」という声も漏れた。

 県は2月にILC推進グループを庁内に新設し、県民向けのパンフレット作成や国会議員への要望活動などを続けてきた。

 古川知事は報道陣に対し、「学者グループが検討した結果なので、尊重して、理解しないといけないという気持ちはある。だが、割り切れない」と納得いかない様子。脊振山地の活断層の評価については、「政府が示した厳しい新基準による活断層の調査結果が示されたのは九州だけの状況。福岡県側と調整し、きちんとした説明を聞きたい」と強調した。

 県庁で生中継を見た唐津地区のILC推進協の会長を務める宮島清一・唐津商工会議所会頭も「誘致に向けて、産学官が連携して活動してきたのでがっかり。活断層の評価に関しては、『それでいいのか』という思いはある」と指摘。同じく県庁を訪れていた神埼地区の推進協代表の神埼市商工会の古賀義治会長は、「建設が決まれば、長期間にわたる経済効果が期待でき、地域も活性化すると考えていたのだが……」と悔しさをにじませた。

 唐津市の坂井俊之市長もコメントを発表。「市民が大きな期待を感じていたので残念な結果。評価の詳細な説明を聞きたい。誘致活動を通じ、市民が科学技術に高い関心を持ったことは有意義だった」とした。

 2009年にスイス・ジュネーブにある素粒子物理学の世界的な研究拠点・欧州合同原子核研究機関(CERN)での研修に参加した佐賀西高の野田亮教頭は「残念だが、仕方ない」としながらも、「国内にILCができれば、最先端科学と子どもとのかかわりが近くなり、大きな効果が表れてくる可能性がある」と話した。 (2013年8月24日 読売新聞)

NHK

候補決定 岩手では安どの表情 8月23日 13時8分

最先端の素粒子実験施設、ILC=国際リニアコライダーを日本に誘致する場合の建設地に岩手県の北上山地が決まったことについて、岩手県の担当者は、ほっとした表情を見せていました。

岩手県庁では「ILC立地評価会議」の23日の発表を担当者6人がインターネット中継で見守りました。 そして、研究者が「北上山地が候補地にふさわしい」と発表すると、担当者からは「よし」などと声が上がり、ほっとした表情を見せていました。 ILC誘致を担当している県政策地域部の大平尚首席ILC推進監は「北上山地が認められてほっとしています。しかし、学術会議では時期尚早という判断があるので政府が決定できるように調査を積み重ねて働きかけていきたい。また、市民にも理解を得られるように説明していきたいです」と話していました。

奥州市長「大きな朗報」

岩手県奥州市の小沢昌記市長は「北上山地が科学者から評価され選ばれたことは、東日本大震災からの復興を目指している東北にとって大きな朗報であり、候補地を抱える自治体として念願がかない、非常に喜ばしく思っています。計画の実現には政府が日本誘致を表明するなど手続きが必要になるので、引き続き、誘致に向けてこれまで以上に取り組んでいきたい」とコメントを出しました。

福岡県知事「いささか驚いている」

一方、候補から漏れた、福岡と佐賀にまたがる脊振山地の誘致の関係者からは落胆や戸惑いの声が出ています。 このうち、福岡県の小川知事は「いささか驚いている。東北では国による活断層の調査・評価がまだ行われていない。安全・安心である環境を提供するという観点からもっと検討がされなければならない」とするコメントを発表しました。

福岡の若手経営者は戸惑い

福岡市博多区のIT企業のオフィスでは、誘致の署名活動を行ってきた若手経営者団体のメンバーから、ため息が漏れました。 メンバーの1人は「東京へのアクセスが良いと言われてもね」などと話し、戸惑った表情を見せていました。 立地評価会議の会見のインターネット中継で、北上山地が選ばれた理由について、「活断層との位置関係などで優位性が認められ、大型ダムや大都市などの人工物によって立地を制限される可能性がない」などと説明されると、メンバーはメモを取りながら聞いていました。 九州へのILC誘致を実現する会の岩木勇人事務局長は「最初から北上に決めていたという感じがしてしっくりしない。まずは、きょうの話をしっかり理解して今後の動きを決めていきたい」と話していました。

佐賀県の反応

福岡県と共に脊振山地への誘致活動を行ってきた佐賀県内では、候補地から漏れたことを残念に思う声が上がるとともに、日本への誘致に向けて、今後もこの計画を応援していきたいという声も出ていました。 佐賀県庁では、古川知事や担当の職員、県内の商工団体の関係者などおよそ30人が会議室に集まり、東京大学で行われた記者会見の様子をインターネットを通じて見守りました。 国内の候補地に岩手県の北上山地が決まったと発表されると、古川知事は腕を組んで前に乗り出し、残念そうにモニターを見つめていました。 このあと、古川知事は取材に対し、「ひと言で言えば残念だというほかない。詳しい理由が分からないので、福岡県と共に詳しい説明を聞いて、まずは今回の決定の内容を理解したいが、そのうえで、ちょっと違うのではないかと思うことについては日本学術会議や政府に意見を申し上げることもあり得る」と述べ、決定の理由に納得できない部分がある場合は、意見を表明していきたいという考えを示しました。 また、佐賀市の佐賀西高校では、スイスにある国際的な実験施設でも研修を受けたことがある物理教諭の野田亮さんが、授業の休み時間にインターネットを通じて発表の内容を確認しました。 野田さんは、「残念な結果ですが、日本に誘致されれば、日本の子どもたち全体に良い影響があると思うので、引き続き頑張ってもらいたいです」と話していました。 また、佐賀西高校で、素粒子物理学の分野への進学を目指している3年生の川原希彩さんは「佐賀が世界の中心となって研究をして行けたらそれはすごいことだと思っていたので残念ですが、日本で研究が出来るのならそれはすばらしいことだと思うので、これからもこの計画を応援したい」と話していました。

毎日新聞

リニアコライダー:岩手知事「未来の希望」 北上選定で

毎日新聞 2013年08月23日 20時09分

 ◇福岡、佐賀知事は不満表明

 「国際リニアコライダー」(ILC)の候補地に岩手・宮城両県の北上山地が選ばれ、佐賀・福岡両県の脊振山地が外れた選定結果について、誘致活動を展開してきた双方の地元は、いずれも政府に働きかけを強める意欲を示した。

 南米出張中の達増(たっそ)拓也・岩手県知事は「未来の希望を感じさせる大きなニュース。政府には誘致の取り組みを進めるようお願いしたい」とコメントを発表した。村井嘉浩・宮城県知事は経済波及効果が4.3兆円に及ぶとの試算に触れ「(東日本大震災の復興を進める)東北の再スタートに向けた非常に大きな事業」と強調。国内誘致を決めていない政府への働きかけを続ける姿勢を示した。

 一方、佐賀県庁では古川康知事がインターネット中継で発表の記者会見に見入り「(評価の)細かな内容が分からず、責任を持って県民に説明する気持ちになれず、割り切れない」と不快感をあらわにした。小川洋・福岡県知事も「結果は意外だ。新しい評価手法による国の活断層調査は東北では行われていない」と不満を述べた。両県や大学、地元経済団体などで作る「ILCアジア−九州推進会議」は「国に改めて総合的な検討をするように要望する」と再考を求める構えを示した。【浅野孝仁、久木田照子、田中韻、早田利信、中園敦二】

産經新聞

候補地一本化、国は誘致判断先送り  2013.8.23 17:00

 次世代加速器「国際リニアコライダー」(ILC)の研究者チームが国内候補地を東北の北上山地に決めたことで、今後は国が誘致の是非をいつ判断するかが焦点になる。地元の経済界などは早期誘致に期待を寄せるが、巨額の建設費に対する批判や、費用の負担率をめぐる国際的な駆け引きも予想され、国は最終判断を先送りする見通しだ。

 ILCは8300億円の建設費のほか、年間360億円の運営費が必要で、さらに人件費や土地代などを含めると総額は1兆円規模に及ぶ。研究者チームは建設費に占める誘致国の負担率を約半分とみているが、具体的な比率は今後の政府間交渉に委ねられる。

 文部科学省の担当者は「日本がやりたいと早々に言ってしまったら、他国に足元を見られ、負担額をつり上げられるのは間違いない。軽々しく誘致表明できない」と明かす。当面は欧米などの出方を注意深く見守り、条件闘争の機会をうかがうことになりそうだ。

 研究者チームの山下了東大准教授は「このタイミングを逃したらチャンスはない。国は早く一歩を踏み出してほしい」と話す。

 日本学術会議の検討委員会が今月示した「時期尚早」との見解も、誘致の判断を遅らせる一因だ。文科省の依頼を受けて議論を重ね、まとめた見解だけに同省も尊重する方針で、判断の時期は見えない。

 検討委の慎重論の背景には、他の科学予算が削減されることへの根強い警戒感がある。日本学術会議は多様な分野の科学者で構成されており、巨額の建設費のしわ寄せを受けてはたまらない、との思惑もにじむ。

 一方、国内候補地は北上山地で最終決着するとは限らない。過去には巨大プロジェクトの国際熱核融合実験炉(ITER)の誘致をめぐり、専門家が茨城県を最適地に選んだが、政治判断で青森県に覆った例があり、決着にはなお曲折も予想される。

産經新聞

候補地一本化 「割り切れない」説明要求 “落選”の佐賀、福岡 2013.8.23 15:55

背振山地のILC候補地“落選”が決まり、厳しい表情を見せる佐賀県の古川康知事(中央)ら=23日午前、佐賀県庁

 次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」建設の国内候補地に東北の北上山地が選ばれ、脊振山地への誘致を目指していた佐賀、福岡両県からは23日、“落選”理由の説明を求める声が相次いだ。

 古川康・佐賀県知事は「早くきちんとした説明を受けたい。割り切れない気持ちだ」と話した。

 国際研究都市の整備を期待していた地元経済界の落胆も大きく、唐津商工会議所(佐賀県唐津市)の宮島清一会頭は「判断基準には疑問があり、納得のいく説明がほしい」と話した。

 九州の経済界や大学関係者でつくる「ILCアジア-九州推進会議」は「想定していない結果で驚いている」とコメント。理由の一つとされた断層の評価をめぐり、脊振山地では最新の評価方法による地質調査が行われたが、東北では実施されていないと不満を表明した。小川洋・福岡県知事も「研究者の安全・安心の観点から、地表での地震の頻度と大きさ、生活環境の整備水準なども検討されねばならない」とした。

産經新聞

候補地一本化 「復興に弾み」と歓迎 岩手、宮城両県 2013.8.23 15:41

北上山地がILC候補地に選ばれ、笑顔を見せる岩手県の大平尚・首席ILC推進監(中央)ら=23日午前、岩手県庁

 次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の国内建設候補地に研究者が北上山地を選んだ23日、岩手、宮城両県の関係者からは「東日本大震災からの復興に弾みがつく」などと歓迎する声が上がった。

 岩手県庁では、ILC誘致を担当する県政策推進室の職員6人が、研究者の東京都内での記者会見をインターネット中継で見守った。全会一致で北上山地を候補地とすると発表されると、「よし」との声。

 大平尚・首席ILC推進監(55)は「(日本の代表となるので)責任感が大きい。復興にもつなげたい」と話した。同時に、文部科学省から意見を求められた日本学術会議が「誘致は時期尚早」との見解を示していることを踏まえ「政府への要望活動を行っていく」と表情を引き締めた。

 村井嘉浩・宮城県知事は「大変喜ばしい。一日も早く正式な国家プロジェクトとなるよう政府などに働きかけていきたい」とのコメントを出した

岩手日日新聞

宇宙誕生の謎の解明を目指す次世代大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の立地評価会議は23日、東京大で記者会見し、ILCの建設候補地を本県の北上山地(北上高地)に決定したと発表した。ILC建設に適した安定した岩盤が広範囲に分布していることなどが評価された。巨額の予算を伴うことなどから国はILCの建設を決めていないが、研究者による候補地選定は地元の受け入れ態勢の構築にも弾みとなりそうだ。

 ILCは地下約100メートルに全長30~50キロの直線トンネルを掘り、電子と陽電子を加速、衝突させ発生した素粒子を観測する施設。建設費だけで約8300億円が掛かると見込まれる。

 国内の候補地は最終的に北上山地と福岡、佐賀両県の脊振山地の2カ所に絞り込まれ、東北や九州の自治体や経済団体が中心となって誘致合戦を展開していた。

 北上山地の候補地は一関市大東町大原地内を衝突点がある中央部とし北西側は奥州市江刺区、南東側は宮城県気仙沼市に至る範囲を想定。中核研究拠点をはじめ、計測実験拠点、先端産業集積拠点、交流居住地区などを整備し、沿岸の被災地と内陸の中間に国際科学都市の建設を構想する。

 ILCの実験が実現すれば万物に質量を与える「ヒッグス粒子」の詳しい性質が解明され、現在の素粒子物理学の標準理論を超える観測結果が得られると期待される一方、文部科学省が建設の判断のため審議を依頼した日本学術会議の委員会はILCの科学的意義は高いとしながらも、巨額の費用が他の学術分野を圧迫する恐れがあり、日本が中心となって建設するかどうかについては数年かけて検討すべきだとの見解をまとめている。

 文科省は9月末にも正式回答を受け、建設の可否を判断する見通し。

中日新聞

ILC候補地に北上山地 宇宙の始まり探る 2013年8月23日 11時00分

 ILC計画を推進する日本の研究者らが建設候補地に選んだ北上山地(奥)=6月、岩手県一関市(後藤野航業撮影) 写真

 宇宙の始まりを探る次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の計画を推進する日本の研究者らが23日、東京都内で記者会見し、国内の建設候補地として岩手・宮城両県の北上山地を選んだと発表した。

 ILCが具体化すれば、北上山地が国際的に有力な候補地となり得る結果だ。ただ文部科学省は、研究者による選定結果を「参考」にとどめる考えで、誘致の是非や候補地はあらためて判断するとしている。

 候補地は北上山地と、佐賀・福岡両県の脊振山地が競い合っていた。

 研究チームは専門家8人で「立地評価会議」を構成。最大で長さ50キロの直線トンネルを建設できる敷地の確保などを調査。 (共同)

産經新聞

次世代加速器ILC、候補地は東北・北上山地に 研究者組織が発表 2013.8.23 11:22 (1/2ページ)

 宇宙誕生の謎に迫る次世代加速器「国際リニアコライダー」(ILC)の国内建設候補地について、研究者で組織する立地評価会議は23日、東北地方の北上(きたかみ)山地(岩手・宮城県)に候補地を一本化したと発表した。争っていた九州地方の脊振(せふり)山地(福岡・佐賀県)はダム湖の下に建設する技術的な困難さなどから外れた。研究者チームは今後、誘致を目指して政府への働き掛けを本格化させる。

 評価会議は北上山地について「仙台・東京へのアクセスの利便性があり、研究・生活環境に優れる新幹線沿線の立地を強く推奨する」とした。

 文部科学省は研究者チームと日本学術会議の意見を踏まえ、最終的な候補地や誘致の是非を判断する。ただ、約8300億円に及ぶ建設費の誘致国の負担率は決まっておらず、同会議は「誘致は時期尚早」との見解を近くまとめる予定で、誘致の実現は不透明だ。

 評価会議は素粒子や加速器などの専門家8人で構成。地質や建設コスト、電力供給などの技術的な評価▽研究者らの住居や教育、医療など社会環境の評価-の2つに大別して1月から検討を開始し、約300時間にわたり議論した。

 その結果、北上山地は建設コストや工期などの技術評価で大きく上回った。社会環境では両地域とも大きな差はなかった。

岩手県と宮城県は、経済効果や地域の活性化を東日本大震災からの復興につなげようと誘致活動を展開。福岡県と佐賀県は、都市機能の充実など社会基盤の優位性を訴えていた。

 ILCは全長約30キロの巨大な直線形の加速器。地下約100メートルのトンネル内で電子と陽電子を衝突させ宇宙誕生直後の状態を再現し、未知の素粒子の検出を目指す。2020年代半ばに稼働させる構想で、欧米は財政難から日本での建設を期待している。

◇【用語解説】国際リニアコライダー(ILC)

 日米欧露などの物理学者が建設を計画する素粒子研究施設。地下約100メートルのトンネルに設置する全長約30キロの直線形加速器で、電子と陽電子をほぼ光速で衝突させて新たな物理現象の発見を目指す。15年以上前に建設地の検討を開始。国内では平成15年に十数カ所の候補地が公表され、22年に北上山地と脊振山地に絞られた。

NHK

ILC候補地は岩手北上山地, 8月23日 11時47分

最先端の素粒子実験施設、ILC=国際リニアコライダーを日本に誘致する場合の建設地に、岩手県の北上山地が決まりました。 ILCについては、国際的な費用の分担方法などがこれから明らかになるため、日本が実際に誘致するかどうか決まるのは、数年先の見通しです。

ILC=国際リニアコライダーを日本に誘致する場合の建設地には、▽岩手県の北上山地と、▽福岡県と佐賀県にまたがる脊振山地が候補となっていて、関係する自治体が盛んな誘致活動を行ってきました。 この2つの候補地のうち、どちらを選ぶかの選定作業は、国内の物理学者でつくる「ILC立地評価会議」がことし1月から進めてきましたが、岩手県の北上山地を選ぶことを決め、23日、発表しました。 ILC=国際リニアコライダーは、2020年代半ばの完成を目指して計画が進められている巨大な素粒子実験の施設で、日本が有力な建設の候補地となっています。 国内に建設されれば大きな経済効果が見込まれる一方、8300億円とされる建設費の少なくとも半額を負担しなければなりません。 このため、国から誘致について諮問を受けた日本学術会議も、「国際的な費用の分担方法など決まっていないことが多く、現時点で誘致に踏み切るのは、時期尚早だ」とする慎重な見解を公表していて、日本が実際に誘致するかどうか決まるのは数年先の見通しです。 ILC・候補地決定までの経緯は

ILC=国際リニアコライダーの建設候補地の検討は、15年ほど前から、国内外の研究者を中心に進められてきました。 当初、国内の候補地には10か所余りが挙げられましたが、3年前の平成22年に▽岩手県の北上山地と▽福岡県と佐賀県にまたがる脊振山地の2か所に絞り込まれました。 最終的な候補地を選ぶにあたり、まず、行われたのが、現地での詳しい地質調査です。 ILCを建設するには、地下に長さ30キロの直線のトンネルを掘る必要があるため、平成23年度の補正予算で国が調査費をつけて、それぞれの地域でボーリング調査などが行われました。 こうした調査結果を基に、候補地の選定作業を進めたのが「ILC立地評価会議」です。 この会議は、国内の物理学者など8人がメンバーとなっていて、九州大学の川越清以教授と、東北大学の山本均教授が共同議長を務めました。 会議はことし1月に設置され、今月までの間に合わせて60回の会合を重ね、「技術評価」と「社会環境基盤評価」という2つの観点から評価を行ってきました。 このうち「技術評価」では、現地で行われた地質調査の結果をもとに▽地盤の安定性や、▽地震を引き起こす活断層までの距離などの検討が行われました。 また、「社会環境基盤評価」では、外国人研究者やその家族が暮らしていく際の生活環境などについて評価が行われました。

ILCとは

ILC=国際リニアコライダーは、2020年代半ばの完成を目指して計画が進められている最先端の巨大な素粒子実験施設です。 地下およそ100メートルに掘った長さ30キロのまっすぐなトンネルの中で、電子と陽電子を光とほぼ同じ速さで衝突させ、宇宙が誕生した直後の状態を作りだします。 それにより、すべての物質に質量を与えたとされる「ヒッグス粒子」の詳細な性質を調べるほか、未知の粒子の探索も進め、宇宙がどのようにできたのか解明を目指します。 ILCが建設されれば、世界中から研究者が集まる国際的な研究拠点となり、最先端の研究成果が期待されるほか、地元に大きな経済効果をもたらすと試算されています。

今後の課題は

その一方で、建設にはおよそ8300億円のコストがかかり、この少なくとも半額を施設を誘致した国が負担することになります。 建設コストには、およそ900億円かかる測定器や土地代、人件費などは含まれておらず、それらを合わせた総額は、1兆円前後に上るとも見られています。 建設後も、運転のための経費が年間300億円を超えると試算されています。 こうした巨額のコストを国際的にどのように分担するかはまだ決まっておらず、計画の実現を目指すうえで大きな課題となっています。

毎日新聞

リニアコライダー候補地:北上山地、大差で選出

毎日新聞 2013年08月23日 11時37分(最終更新 08月23日 12時22分)

 宇宙誕生の謎に迫る超大型加速器「国際リニアコライダー」(ILC)を推進する国内の研究者組織「ILC戦略会議」(議長=山下了・東京大准教授)は23日、東京都文京区の同大で記者会見し、岩手・宮城両県の北上山地を建設候補地として選んだと発表した。現在、海外で具体的検討はなく、ILC実現が決まれば北上山地が有力な候補地となる。

 もう一つの候補地だった佐賀・福岡両県の脊振(せふり)山地と比較。交通の便や研究・生活環境で脊振がやや優位だったが、地形や自然災害などの技術評価の得点では「63対37」の大差で北上が適地と判断した。脊振では施設がダム湖や都市部の地下を通ることなどが懸念された。北上は東日本大震災級の地震に対しても耐震性があり、工期や費用が縮減できると判断した。

 同会議は今年1月に委員8人の評価会議を設置。将来の拡張を考慮して延長50キロの一直線のトンネルを全く迂回(うかい)せずに造れることや、1都市の消費電力に相当する24万キロワットもの電力や毎時700トンの冷却水を実験装置に供給できることなど、数多くの立地条件について両候補地を比較してきた。今後、海外に向けて適地だとアピールする。

 計画が実現すれば数千人規模の国際研究都市が生まれるとの期待から、双方の地元では誘致活動を展開してきた。一方、政府は誘致を決めておらず、実現性は未知数だ。【斎藤有香、野田武】

 【ことば】国際リニアコライダー(ILC)

 欧州合同原子核研究所(CERN)の加速器LHCの次世代を担う日米欧などの構想。東京−横浜間にあたる約30キロの地下トンネル内に直線状の加速器を設け、両端から発射した電子と陽電子を衝突させて「宇宙誕生の1兆分の1秒後」の状態を再現する。

 ◇解説 巨額建設費に政府は二の足

 国際リニアコライダー(ILC)は、国際宇宙ステーションや国際熱核融合実験炉ITERと並ぶ巨大プロジェクトとして1980年代から構想されてきた。実現すればアジア初の大型国際研究所となる。しかし、8300億円以上とされる巨額の建設費から各国政府は二の足を踏んでいるのが現状だ。

 建設費は立地国が半額負担することが想定され、財政悪化で米欧は消極的。他分野の研究資金を圧迫するとの懸念から、日本学術会議も「時期尚早」との見解を示している。

研究者らが今、候補地を発表したのは、2015年着工、20年代半ばの運用開始を目指すからだ。しかし、欧州の加速器LHCがまだ現役で、建設に必要な1000人規模の研究者の参加が見込める保証はない。東日本大震災や茨城県東海村で5月にあった加速器施設の放射性物質漏れ事故などで安全性を巡る国内外の目は厳しい。

 また、かつてITERの候補地選定では、同県旧那珂(なか)町が最高評価を得ていながら、その後の政治判断で青森県六ケ所村が候補地とされ、最終的に誘致を断念した経緯もある。復興の起爆剤として誘致を進めてきた北上山地の地元にとっては手放しで喜べず、研究者組織が今後、理解を求める努力が不可欠だ。【斎藤有香】

西日本新聞

「候補地は東北」と九州側に伝える ILC評価会議 [福岡県] 2013年08月23日(最終更新 2013年08月23日 00時27分)

 宇宙の始まりを探る次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の日本誘致を目指す研究者グループのメンバーが22日朝、福岡市の九州経済連合会を訪れ、佐賀、福岡県境の脊振山地への誘致に取り組む松尾新吾同会名誉会長や小川洋福岡県知事らに国内建設候補地を北上山地(岩手、宮城県)に一本化したことを伝えた。

 関係者によると、脊振山地と北上山地の2カ所を比較・検証してきた「ILC立地評価会議」のメンバーを務める九州大の研究者らが、最終的に北上山地を候補地に選んだことを報告した。23日に正式発表する。

 ILCをめぐっては、日本学術会議が9月にまとめる報告書を受けて政府が誘致の是非などを判断する予定。

 同会議は「現時点で日本への誘致は認められない」との中間意見を出している。 =2013/08/23付 西日本新聞朝刊=

読売新聞

宇宙の起源再現「ILC」、北上山地に候補絞る

 宇宙の始まりを再現する大型実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」について、国内の科学者らで作る「ILC立地評価会議」が、北上山地(岩手県、宮城県)を国内候補地に絞ったことが分かった。

 関係者が22日、明らかにした。併せて可能性が検討されていた脊振(せふり)山地(福岡県、佐賀県)は活断層の存在が懸念されるとして候補地から外れた。同評価会議の上部組織「ILC戦略会議」が23日、正式発表する。

 発表を受け、政府は誘致の妥当性の検討を行う。誘致を決めた場合、最終的な候補地も政府が判断する。

 立地評価会議は、北上山地と脊振山地について、1月から候補地の妥当性を検討。その結果、脊振山地にある活断層の存在が懸念されたという。

 ILCは地下約100メートルにある長さ約31キロのトンネルで電子と陽電子を衝突させる物理学の実験施設。 (2013年8月22日17時44分 読売新聞)

西日本新聞経済電子版

LC誘致、研究者側は「東北」
qBiz 西日本新聞経済電子版  8月22日(木)10時45分配信

ILC誘致をめぐる最近の動き

 宇宙の始まりを探る次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の日本誘致を目指す研究者グループが、国内の建設候補地を北上山地(岩手、宮城県)に一本化したことが21日分かった。

 佐賀、福岡県境の脊振山地も候補地に挙がっていたが、活断層の影響が懸念されることなどから漏れた。政府は、幅広い分野の研究者でつくる日本学術会議が9月にまとめる報告書を待って、誘致の是非と候補地について判断する。

 国内の誘致候補地に挙がっていたのは北上山地と脊振山地の2カ所。研究者で組織する誘致団体「ILC戦略会議」が設けた「ILC立地評価会議」が、今年 1月から両候補地を比較。地質や水、電力の供給体制に加え、研究者の住居や医療、教育など社会環境基盤を含む約50項目について300時間以上かけて検証 してきた。結果は23日に正式発表される。

 ILCは地下100メートルに建設されるため、安定した地盤が条件となる。関係者によると、脊振山地が候補から外れた最大の理由は地下の活断層の存在 だったという。一方、東北では東日本大震災の復興を加速させる事業にILC建設を位置付け、地元自治体を中心に誘致を訴えていた。

 戦略会議は今後、政府に対しILC誘致を積極的に求めていく方針。ただし、約8300億円という巨額の建設費が必要な上、完成後も年間300億円以上の運営費がかかると試算される。誘致国はその半額の負担を求められることなどから、政府には誘致に慎重な声もある。

 日本学術会議では12日、「現時点で日本に誘致することは認められない」とする中間意見が出た。

 ■建設1兆円、政府慎重 地元は期待先行

 宇宙の始まりを探る次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の国内候補地が、北上山地(岩手、宮城県)に一本化された。研究者グループは政府に 対し、日本誘致を強力に働き掛ける構え。ただし、建設費が1兆円近い巨大プロジェクトだけに政府は慎重姿勢だ。9月にまとまる日本学術会議の報告書も踏ま え、ILCを誘致するか否か、候補地は北上山地でいいのか、最終決定する。 

 「日本がリードして各国政府と(建設費や運営費の)分担交渉を進めてほしい」。国内の研究者で組織する「ILC戦略会議」の山下了議長(東京大准教授)は20日、政府に積極的な誘致を訴えた。

 ILCは1980年代半ば以降、北米や欧州、アジアの高エネルギー物理学研究者が開発を提唱。巨額の建設費が必要なため、2003年に各国で資金を出し 合うことを決めた。当初は欧州や米国が誘致に積極的だったが、債務危機やイラク戦争の戦費負担の影響でいずれも断念。関係者によると「ここ2、3年で候補 地は日本だけになった」という。

 国内の研究者グループは10年までに、北上山地と、佐賀、福岡県境の脊振山地の2カ所に絞り、昨年5月には戦略会議を設立。各国の研究者も今年2月に「リニアコライダー・コラボレーション」を結成し、戦略会議と協力して調査や政府への働き掛けを行っている。

     ■

 戦略会議が候補地を一本化したことで、次の焦点は政府の判断に移る。文部科学省は、ILC誘致の是非や進め方について、日本学術会議に審議を依頼中。下村博文文科相は21日、9月末にまとまる学術会議の報告書を待って「トータルで検討する」と慎重な姿勢を崩さなかった。

 誘致する際の最大の障害は巨額の費用負担。ILCの建設費は約8300億円と試算され、土地代や人件費を含めると、総額は1兆円を超えるとみられる。

 戦略会議によると「誘致国の負担は建設費の半額程度」になる見込み。残りは研究に参加する他国が分担するが、「誘致に積極的な姿勢を示すと、他国に足元を見られ、多額の負担を求められる」(政府関係者)との見方もある。

 文科省から意見を求められている日本学術会議の検討委員会(委員長・家泰弘東京大教授)は「日本が80%以上の経費負担を求められる可能性がある」と指摘。負担が膨らめば他の研究分野に影響が出る恐れもあり、「現時点では時期尚早」との立場だ。

     ■

 ILC建設による地元への経済効果は大きい。佐賀、福岡両県などは計画が実現したときの波及効果を、8年間の建設期間中で1・1兆円(うち九州分3400億円)と算出。運用期間中は年630億~670億円(同460億~490億円)と試算する。

 ただし、誘致には負担も伴う。施設本体は地下100メートルに建設されるが、道路や上下水道など新たなインフラ整備も必要になる。ある政府関係者は「立地地域も当然、相応の費用負担を求められる」と期待先行にくぎを刺す。

 日本学術会議検討委の家委員長は「地域振興に関して一部に過度な期待がある」と戒めた上で、「誘致をめぐっては、冷静な議論が必要だ」と呼び掛けている。 

■国際リニアコライダー(ILC) 「直線型衝突加速器」の意味。地下100メートルに30~50キロの直線のトンネルを建設する。その両端に設置した装 置からそれぞれ電子と陽電子を発射し、光速近くまで加速した上で衝突させ、宇宙誕生の大爆発「ビッグバン」直後を再現。宇宙創成の過程や新しい素粒子の発 見が期待される。研究者グループは、早ければ2020年代半ばの完成を目指している。

西日本新聞社

胆江日々新聞 :候補地、来週末に公表(研究者組織トップが見通し) tanko 2013-8-13 7:20

 高エネルギー物理学研究者会議の駒宮幸男委員長(東京大素粒子物理国際研究センター長)は12日、国内候補地の選定結果公表について「来週末(23日ごろ)ぐらいにはできるのではないか」との見通しを示した。

 日本学術会議・検討委の傍聴に訪れた駒宮委員長は会合終了後、報道陣の質問に応じた。駒宮委員長は「完全に決まったわけではないが、来週末にはできると思う。公表場所や時間については未定だが、どのような理由で選定したかを納得できる形で示したい」と述べた。

ILCの意義「十分」 学術会議検討委が骨子案まとめる(文科省に回答へ) tanko 2013-8-13 7:00

 【東京=報道部・児玉直人】 北上山地などが有力候補地となっている、国際リニアコライダー(ILC)の国内誘致について協議している日本学術会議(大西隆会長)のILC計画に関する検討委員会(委員長・家泰弘東京大学教授)は12日、東京都内で第6回会合を開き、文部科学省から求められていたILC計画に対する回答案を協議。学術的意義が「十分に認められる」とする骨子案をまとめた。これまで指摘されていた予算面などの懸案については、素粒子研究者レベルの協議では対応しきれないと指摘。政府も加わった形で関係国との予備交渉を進めながら、2~3年のうち集中的に調査することを求める方針だ。

 会合は公開で行われた。これまでの論点をもとに回答文章の骨子案を中心に協議。取りまとめた案では、ILC計画そのものについて否定せず、検討委として学術的意義を十分に認めていることを前面に打ち出した。

 その上で、委員の間から指摘された人材確保や建設費用負担などの予算面については、研究者レベルの協議だけでは話が進まない面があると指摘。2、3年の時間をかけて当該分野以外の研究者や関係政府機関も参加した集中的な調査を求め、ILC計画を最終的に判断する上では、これらの課題について明確な見通しを得ることを求める方針だ。

 検討委は、回答文の表現などを再度整理した上で、29日に開く会合で文科省への回答文を決定。学術会議内での査読作業や幹事会承認などを経て、早ければ9月末にも文科省に提出される見通しだ。

国内誘致「スタート地点に」 (東大・研究機構の村山機構長)

 日本学術会議ILC計画に関する検討委員会の第6回会合では、ILC計画の推進に深く携わっている、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構の村山斉機構長が、参考人の立場でILC計画の科学的意義などを説明した。

 村山機構長はスイス・ジュネーブにある素粒子研究施設・CERNが所有するLHC(大型ハドロンコライダー)を引き合いに、「LHCの精度をどんなに強化しても限界があるが、ILCの精度はLHCのさらに上を行く。無敵、最適の加速器だ」と強調。「このような実験施設があることにより、大人も子どもも科学の世界に興味を抱く。将来の日本の科学界を支えてくれる人材を育てる事にもつながる」と社会的な意義についてもアピールした。

 会合終了後、村山機構長は報道陣の取材に応じ「学術会議においてILC計画の意義を認めてくれたことは喜ばしいこと。また、どのような問題点があるかも洗い出してくれた。こういう指摘は、悲観的にではなく、むしろスタート地点に立つことができたと前向きに捉えたい」と述べた。

 「もし本当に意義がない計画だったら、『無理ですね』と言うだろうし、ここまで解決すべき事柄を丁寧に考えてはくれない」とも付け加えた。

佐賀新聞: ILC候補地、来週にも決定

 ILC計画をめぐっては、佐賀、福岡両県が脊振山地に、岩手、宮城両県が北上山地に誘致の名乗りを上げている。候補地の選定は、日本学術会議の議論とは別に、国内の研究者による推進組織が検討を進めている。推進組織の中心メンバーの駒宮幸雄東京大教授は12日、佐賀新聞社の取材に「二つの候補地には、熱心に努力してもらっている。早ければ来週末、遅くとも月内に決定先を発表できるように調整している」と述べた。 2013年08月13日更新 2013/08/13 01:30

日経新聞: 宇宙の起源探る次世代加速器、財源確保焦点に; 2013/8/12 22:44

 宇宙誕生の謎に迫る次世代の巨大加速器「国際リニアコライダー」(ILC)の国内誘致の是非を検討してきた日本学術会議の有識者会議は12日、2~3年をかけて計画を精査し判断すべきだとの意見をまとめた。4000億円を超える日本の建設費負担が他分野の研究費を圧迫するとの懸念がある。文部科学省は今回の意見を参考に総合判断するが、誘致に前向きな姿勢を崩していない。

 ILCは質量(重さ)の起源とされるヒッグス粒子を発見した欧州合同原子核研究機関(CERN)の加速器の次世代機にあたる。文科省は国内誘致の方針で、学術会議に意見を求めていた。  12日の議論ではILCが宇宙の成り立ち解明に役立つ意義を認めた。ただ、10年間で8300億円という巨額の建設費に関する参加各国間の負担比率交渉はこれから。誘致国が半額を負担する見通しだが、額が膨らむ可能性もあると指摘した。国内の財源の確保が見通せないため、他分野の研究費が減るなどしわ寄せを懸念する声も出た。

 このほか、費用対効果の問題や、建設に必要な研究者や技術者を確保できるかなどを「不確定要素」として挙げた。学術会議は現時点では時期尚早で、慎重に2~3年検討する必要があるとの見解を9月に文科省に正式回答する。

 今回の意見に対し、文科省は「ILCは日本が初めて国際的な共同研究プロジェクトを率いる好機」として前向きな姿勢は変わらない。より広い議論をするため、政府の総合科学技術会議などに改めて意見を求める可能性もある。早ければ今秋を予定していた総合判断の時期は遅れそうだ。

 ILCを推進する「リニアコライダー国際推進委員会」の委員長を務める駒宮幸男・東京大学教授は「新しい科学は費用がかかる。既存の学問分野の維持だけにとらわれるのはどうか」と指摘。村山斉・東大特任教授は「ILC実現に向け解決すべき課題を洗い出したのは意味がある」と話している。

日テレ : 日本学術会議が「ILC誘致の判断は時期尚早」と慎重姿勢(岩手県)

北上山地への誘致活動が展開されている「国際リニアコライダー」を日本に誘致するかを検討する日本学術会議は、誘致には課題があり、数年間の準備期間が必要だとする見解をまとめた。「国際リニアコライダー」は宇宙誕生の謎を探る大型実験施設で、建設費用は10年間でおよそ8000億円で建設を誘致する国がおよそ4000億円の費用負担が見込まれている。12日の検討委員会では、技術者などの人材や予算の確保の見通しが乏しいことから日本誘致は「時期尚早」との判断で合意し、2,3年かけて調査を行うことを勧めるという見解を示した。岩手県は北上山地への誘致を積極的に働きかけてきたが、達増知事は会見で「オール東北として万全と言っていい水準に用意がされている。今は最善の結果を待つばかり」と話していた。検討委員会は今月29日にも国に提出する答申をまとめる方針。 [ 8/12 19:22 テレビ岩手]

静岡新聞:巨大加速器、ゴーサイン時期尚早 日本誘致検討の日本学術会議 (2013/8/12 11:10)

 巨大加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の日本誘致の是非を検討している日本学術会議の検討委員会が12日に開かれ、「計画には不確定要素が少なからずあり、現段階で本格実施のゴーサインを出すことは時期尚早と判断せざるを得ない」とする見解案を示した。

 文科省は学術会議の意見を踏まえて誘致の是非を判断する方針。これとは別に、計画を推進する研究者チームは8月中にも国内の建設候補地を選ぶ方針だ。

 議論では総額1兆円を超えるとの試算がある巨額の費用や、建設に必要な多数の専門家の確保を懸念する声が出ていた。検討委の意見がまとまれば、審議を経て正式な報告になる。

読売新聞 :ILC誘致に慎重見解「体制、経費に不確定要素」

 宇宙誕生の謎に迫る大型実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の意義や国内誘致について検討する日本学術会議の検討委員会(委員長=家泰弘東京大教授)は12日、「本格実施のゴーサインを出すことは時期尚早」などとする提言案をまとめた。現時点での誘致は適当でなく、十分な検討期間が必要との見解を示したもので、同会議幹事会に諮った上で、審議を依頼した文部科学省に提出される。

 検討委では6月から6回にわたり、約8300億円とされるILC建設費の各国の負担の見通しや、国内誘致のメリットやデメリットを議論した。

 提言案は、素粒子物理学分野におけるILCの学術的意義は十分に認められると評価する一方、「国内の実施体制、必要経費の国際分担など重要事項に関して不確定要素がある」と指摘した。今後2~3年かけて、有識者や政府が集中的に調査を進めることも提言した。

 ILC計画に関わる国内の研究者らによる「立地評価会議」は近く、国内候補地を北上山地(岩手県、宮城県)か脊振(せふり)山地(福岡県、佐賀県)に一本化し公表する予定。誘致を最終的に決めるのは政府だが、科学者の集まりである日本学術会議が慎重な姿勢を示したことが政府の判断に影響する可能性もある。 (2013年8月12日18時50分 読売新聞)

全国ニュース:サイエンス :巨大加速器、ゴーサイン時期尚早 日本誘致検討の日本学術会議

 巨大加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の日本誘致の是非を検討している日本学術会議の検討委員会が12日に開かれ、「計画には不確定要素が少なからずあり、現段階で本格実施のゴーサインを出すことは時期尚早と判断せざるを得ない」とする見解案を示した。

 文科省は学術会議の意見を踏まえて誘致の是非を判断する方針。これとは別に、計画を推進する研究者チームは8月中にも国内の建設候補地を選ぶ方針だ。

 議論では総額1兆円を超えるとの試算がある巨額の費用や、建設に必要な多数の専門家の確保を懸念する声が出ていた。検討委の意見がまとまれば、審議を経て正式な報告になる。 (2013/08/12 11:10 更新)

NHK :「ILCの国内誘致は時期尚早」 8月12日 16時33分

最先端の実験施設、ILC=国際リニアコライダーの誘致について検討していた日本学術会議は、「費用負担など未確定の部分が多いため、誘致に踏み切るのは時期尚早で、2、3年後に改めて判断すべきだ」という見解を公表しました。

ILC=国際リニアコライダーは、2020年代半ばの完成を目指して計画が進められている最先端の巨大な実験施設で、国内に建設されれば大きな経済効果が見込まれる一方、8300億円とされる建設費の半額を負担しなければなりません。

日本学術会議は、国から諮問を受けて、この施設を誘致すべきかどうか学術的な観点から検討を行ってきましたが、12日の会合で、「費用の国際的な分担など未確定の部分が多く、現時点で誘致に踏み切るのは、時期尚早だ」とする見解を公表しました。

そのうえで、「日本に誘致すべきかどうかは、今後2、3年かけて国が関与する形で、課題の調査や国際交渉を進めたあと、改めて政府が判断すべきだ」としています。

検討委員会は、12日公表した見解を基に、早ければ来月にも最終的な内容をまとめ、文部科学省に答申を行う予定です。
「誘致実現に努力」

日本学術会議の見解について岩手県ILC推進協議会の理事をつとめる盛岡商工会議所の玉山哲副会頭は、「日本の財政が厳しいことから学術会議として誘致に慎重な結論になるのはわかるが、誘致を実現するためには、ILCの有用性を国民に理解してもらえるよう努力しないといけない。政府にも誘致に名乗りを上げることを決断をしてもらえるように働きかけていきたい」と述べ、引き続き誘致に向けて活動していく考えを示しました。

西日本新聞 :巨大加速器、ゴーサイン時期尚早 日本誘致検討の日本学術会議 2013年08月12日(最終更新 2013年08月12日 11時11分)

 巨大加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の日本誘致の是非を検討している日本学術会議の検討委員会が12日に開かれ、「計画には不確定要素が少なからずあり、現段階で本格実施のゴーサインを出すことは時期尚早と判断せざるを得ない」とする見解案を示した。

 文科省は学術会議の意見を踏まえて誘致の是非を判断する方針。これとは別に、計画を推進する研究者チームは8月中にも国内の建設候補地を選ぶ方針だ。

 議論では総額1兆円を超えるとの試算がある巨額の費用や、建設に必要な多数の専門家の確保を懸念する声が出ていた。検討委の意見がまとまれば、審議を経て正式な報告になる。

産經新聞 :次世代加速器の日本誘致は「時期尚早」 日本学術会議が見解 2013.8.12 13:07

 宇宙誕生の謎に迫る次世代加速器「国際リニアコライダー」(ILC)の国内誘致の是非を審議している日本学術会議の検討委員会は12日、誘致の判断は時期尚早で2、3年かけて調査・検討すべきだとする見解をまとめた。秋までに文部科学省に提出する予定で、政府の誘致表明は当面、困難な見通しとなった。

 検討委は、ILCが巨額の経費を必要とする問題点を指摘。震災復興やエネルギー問題などの国家的課題が山積し財政が逼迫(ひっぱく)する中で、国民的理解が十分に得られていないとした。既存の学術予算に影響しない枠組みも必要だとした。

 約8300億円とされる建設費は、検出器や土地などの費用を含んでおらず、さらに増える可能性に言及。国際的な費用負担の割合は白紙で、日本が80%以上を強いられる可能性もあるとした。

 千人規模に及ぶ研究者や技術者は、国内だけでは大幅に不足するため、海外からどれだけ動員できるかを見極める必要があると指摘。誘致の判断には、これらの課題についての明確な見通しが必要だとした。

 検討委は文科省の依頼を受け6月に議論を開始。文科省は同会議の意見を踏まえて誘致の是非を判断する。

 ILCの建設は、国内では岩手・宮城両県の北上山地と福岡・佐賀両県の脊(せ)振(ふり)山地が候補地に上がっており、研究者組織は8月中にも候補地を一本化して発表するが、建設の見通しは不透明感が強まった。

産經新聞 :中本哲也 「次世代加速器」誘致の課題 2013.7.27 07:55 (1/2ページ)[一筆多論]

 宇宙と物質の根源に迫る巨大実験施設「国際リニアコライダー」(ILC)の建設地として、日本が有力視されている。

 ILCは、昨年7月に「ヒッグス粒子」とみられる新粒子を発見した欧州合同原子核研究所(CERN)の円型加速器(LHC)の次世代機として、日米欧などの科学者が国際協力による建設を計画している直線型加速器だ。

 計画では東京-横浜間に相当する全長30キロの直線型加速器を地下に建設し、光速近くまで加速した電子と陽電子を正面衝突させる。宇宙誕生のビッグバン直後の高エネルギー状態(約1京度)を再現でき、ヒッグス粒子の先にある「新しい物理」を切り開く成果が期待されるという。

 建設費用は10年間で約8300億円で、その半額程度が立地国の負担となる見通しだ。国内の建設候補地は、岩手県の北上山地と福岡・佐賀県境の脊振(せふり)山地の2カ所で、8月中に一本化される。

 米欧露もそれぞれ候補地を挙げているが、今のところ誘致に積極的なのは日本だけだ。ILC計画を進める国際組織の責任者で英国人のリン・エバンス氏は、6月に東京大学で開催された式典で「私は日本人の力量に常に感銘を受けてきた。日本は非常に信頼されている」と述べた。世界の科学者は、日本政府の誘致表明を待ち望んでいる。

 国内誘致は、ILCの科学的意義や経済波及効果などを冷静に見極めて判断すべきだ。ILCの意義を審議する日本学術委員会の検討委員会では、「他の研究分野の予算が圧迫されないか」といった懐疑的な意見もあがった。

 数千億円の国費が投入されるからには、「予算の裏付け」と「国民の理解」が、誘致する場合の最低条件である。

一方、ILCが建設されると世界各国から数千人の研究者が参加し、家族を含めて約1万人が暮らす「国際科学都市」が創成されることになる。陸続きの国境を持たない日本が「内側からのグローバル化」を図る千載一遇の機会になるかもしれない。東北が「震災復興の象徴」と位置づけるなど、地域再生のモデルとしても自治体などの期待は大きい。

 グローバル化と地域再生は日本が長く直面してきた課題だ。物理学に革命を起こそうとする巨大実験施設は、日本の変革を促す壮大な社会実験の舞台装置としても機能し、困難な問題の突破口を開いてくれるかもしれない。

 問題は、壮大な計画に見合う気概や創造力を、日本政府が持っているかどうかだ。

 6月に閣議決定した「科学技術政策イノベーション総合戦略」で、政府はiPS細胞(人工多能性幹細胞)による再生医療など日本の強みを成長につなげる構想を示した。経済効果が見込める分野が重視された結果、小さくまとまった印象が否めない。科学技術政策の萎縮は、技術や人材の先細りにつながりかねない。

 ILCを誘致するにしても、見送るにしても、新たな分野に挑む覚悟と、日本の将来像を描くスケールの大きな構想力が、政府には求められよう。(論説委員)

胆江日々新聞 :国際交渉「構わない」 学術会議の家委員長、見解の趣旨語る tanko 2013-8-9 8:50

 国際リニアコライダー(ILC)の国内誘致に関連し、日本学術会議(大西隆会長)の検討委員会の家泰弘委員長(東京大学教授)は8日、ILCの国内誘致に慎重な姿勢を示したことの趣旨について、胆江日日新聞社の取材に応じ「政府が『ILCを日本に作ることを決める』というのがまだ早いということ。国際的な交渉を進めることは構わないという意味だ」と答えた。

 家委員長は今月6日の検討委終了後、個人的な総合所見と前置きした上で「数年かけて懸案事項をもう少しクリアにし、国際的な合意も詰めた上で、しかるべき時期にもう一度誘致の是非を考えるべきではないか」との考えを示していた。

 この発言の趣旨について家委員長は、「政府が『ILCを日本に作るのを決める』というのが早いという意味だ」と強調。その上で、さまざまな問題点をクリアにするため、関係国間で協議や交渉すること自体は「構わない」とした。

 6日の検討委第5回会合では、誘致に対する慎重姿勢が色濃く示された。会合終了後の家委員長の会見を受けた報道により、ILCの国内建設そのものにブレーキがかかったかのような印象が、有力候補地・北上山地を擁する本県の誘致関係者の間にも広まった。

 ただ、検討委で指摘されたような費用負担や人材確保などの懸念事項は、国際交渉の中で合意形成すべき点であることは明らか。これらの作業が数年単位かかることは事前に分かっており、関係者の間では「今すぐ日本に作ること決めるとが時期尚早と言われるのは、当然と言えば当然。やるならば、十分に検討するように――とのことだろう」との見方もある。

 国際交渉を進めること自体は否定しなかった家委員長だが、「まだ政府レベルにはならないと思う」とも述べている。

 各国の費用負担や人材的な協力の在り方などについては、素粒子研究者や各国の科学担当省庁の中だけでは対応しきれない面も多い。いずれ政府間レベルの交渉テーブルが設置されなければ、計画が前進しないのは明らかで、学術会議の検討結果を受けた政府がどう対応するかが注目される。 (児玉直人)

河北新報 :政府のILC誘致表明 「秋の臨時国会以降に」 文科相

 下村博文文部科学相は8日、閣議後の記者会見で、超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致に関する政府の意思表明が、予定していた秋の臨時国会よりさらに遅れるとの見通しを示した。下村氏はこれまで、臨時国会で表明したいと述べていた。  表明が遅れる理由として下村氏は、研究者でつくるILC立地評価会議の国内候補地の発表が予定していた7月末からずれ込んでおり、誘致の是非を審議する日本学術会議の結論も出ていない点を挙げた。

 日本学術会議の検討委員会が6日の会合で、数年の調査研究を経て判断すべきだとする答申の方針を固めたことについては「まだ正式な報告が上がっていない。学術会議の議論の結果を受けてから対応を考えたい」と語った。

 ILCの国内候補地は岩手県南部の北上山地と九州の脊振山地の2カ所。

河北新報 : 国内候補地選考 誘致推進議連総会 戦略会議の方針判明、2013年08月09日金曜日

 超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の国内誘致先の発表について、研究者組織ILC戦略会議は、誘致の是非を審議する日本学術会議の文部科学省への答申を待って公表する方針であることが5日、明らかになった。

 東京・永田町の衆院議員会館であったILC誘致を推進する超党派の国会議員連盟の総会で、戦略会議の一員で、誘致計画の中心を担う高エネルギー加速器研究機構の鈴木厚人機構長が見通しを示した。

 候補地となっているのは、岩手県南部の北上山地と九州の脊振山地。鈴木氏によると、戦略会議の選定作業は地盤や地質、社会インフラの評価が終了し、最終報告の作成段階にあるという。

 鈴木氏は「国内候補地を8月末にも発表したいが、学術会議の答申を待ちたい」と語った。

 日本学術会議の文科省への答申は、現段階で9月末以降の見込み。候補地選定作業に合わせ審議が加速すれば、答申が早まる可能性がある。

 総会ではまた、議連がまとめた建設推進政策リポート「日本成長戦略のビッグバン」を了承。目標を2018年着工、28年運用開始としたほか、年360億円を見込む運転経費や経済効果を盛り込んだ。政財界などへの説明資料として活用する。 2013年08月06日火曜日

Japan Needs Years to Make Decision on ILC Building: Science Council Panel

Tokyo, Aug. 6 (Jiji Press)--Members of a Science Council of Japan panel agreed in principle on Tuesday that Japan should spend several years to examine the significance of leading the proposed international project to construct a next-generation large-scale particle accelerator.

After the day's closed-door meeting, University of Tokyo Prof. Yasuhiro Ie, head of the panel reviewing the international liner collider (ILC) project, said at a press conference that there are uncertain elements to be removed before the panel gives the green light.

"It is yet to be known if the Japanese public will appreciate huge government spending for such a basic scientific study despite Japan's severe fiscal condition," Ie said. He also expressed concerns about possible cuts in outlays for other research field and difficulty securing more than 1,000 scientists and technicians for the project.

The ILC construction is estimated to cost 630 billion to 830 billion yen, half of which Japan is asked to put up.

An international group of physicists proposed to build the linear collider in either the Kitakami mountains in northeastern Japan or the Sefuri mountains in southwestern Japan. (2013/08/06-23:28)

岩手日報 :ILC「数年かけ調査を」 学術会議委員長、判断先送りも

 【東京支社】日本学術会議の第5回国際リニアコライダー(ILC)計画に関する検討委員会(委員長・家泰弘東京大教授)は6日、都内で開かれ、家委員長は意見集約の方向性として「各国の費用分担など不確定要素があるので、数年かけて調査研究した上で(誘致するかを)判断すべきだ」とする見解を示した。検討委は計画そのものを否定するのではなく細部を詰めるよう検討を求めるとみら れる。政府はILC誘致の是非について同会議の答申などを踏まえて決めるとしており、判断が先送りされる可能性がありそうだ。

 非公開で、意見集約に向けた論点整理を行った。終了後に会見した家委員長は▽各国との経費分担や研究者ら人員確保の見通しが不確定▽欧州合同原子核研究所(CERN)の大型円形加速器の高度化の状況を見極める必要性がある―などと指摘。「懸案事項があり、実行可能だからゴーサインを出すという段階になっていない。数年かけて検討する必要がある」と述べた。  今後の調査研究に向けて家委員長は「巨額の予算が絡むので外部の人も入った場で検討するプロセスを経た方が国民理解を得やすいのではないか。その間に海外との経費分担の交渉が進めば見通しが出てくる」と素粒子の研究者以外も入れた検討機関の設置も提案した。 (2013/08/07)

河北新報 :学術会議検討委「ILC誘致判断、数年後に」答申方針固まる

 日本学術会議は6日、超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の国内誘致の是非を審議する検討委員会の第5回会合を都内で開いた。委員長の家泰弘東大物性研究所教授は「誘致は数年かけて判断するのが適当」とする答申方針を明らかにした。

 会合は非公開で行われ、終了後に家氏が取材に応じた。

 家氏はILC誘致の不確定要素として、委員から(1)研究の成果見通し(2)建設・維持予算の裏付け(3)各国の協力の可能性(4)研究スタッフの確保-などが挙がったと説明。「不確定要素が少なくない。調査研究して見通しをクリアにしてから判断すべきだ」と語った。

 判断時期に関しては「ILC誘致の賞味期限がある。調査に何年もかけて良いものではない」と述べた。

 検討委は8月中に答申案をまとめる。日本学術会議は幹事会などを経て、9月末に文部科学省に答申する予定。

朝日新聞 :巨大加速器の誘致「現時点では認めず」 日本学術会議

 総額8300億円をかけ、宇宙の成り立ちのなぞに迫る巨大加速器「国際リニアコライダー」(ILC)を国際協力で建設する計画について、学術界を代表する日本学術会議の検討委員会は6日、国内への誘致は現時点では認められないとの見解を大筋でまとめた。政府は同会議の合意を誘致の条件の一つと位置づけていたため、早期誘致は困難な情勢になった。

 ILCは全長31キロの直線のトンネルに設置され、電子と、正の電気を帯びた陽電子を光速近くまで加速して正面衝突させ、物質に質量を与えるとされるヒッグス粒子などの性質を調べる。素粒子物理学の研究者の国際組織「国際リニアコライダーコラボレーション」(LCC)が推進している。  建設費の半分程度を立地国が負担するため、財政難の欧米各国の政府は誘致に消極的で、LCCは日本に期待している。岩手・宮城両県にまたがる北上山地と、佐賀・福岡両県にまたがる脊振山地の地域が名乗りを上げ、地元の大学や自治体、経済界が誘致運動を繰り広げている。

 下村博文・文部科学相は誘致について、学術会議での検討結果や国際動向を踏まえて政治判断するとし、同会議の検討委が6月から議論した結果、巨額の建設費が他の学問分野を圧迫する恐れがあるなどと判断した。6日、会合後に会見した家泰弘委員長は「建設を推進する人たちも、他の分野へ影響を及ぼしたくはないだろうが、そうならない方法は答えられなかった」と説明。「現時点でゴーサインを出すには不確定要素がある。数年かけて調査研究し、課題を克服する見通しをつけてから、再度、誘致の是非を検討するべきだ」と述べた。 続きを読む

朝日新聞 : 岩手か九州か「加速器候補地は政治判断」 下村文科相, 2013.7.10

■下村博文・文部科学相
 (巨大な加速器を使って宇宙の成り立ちのなぞに迫る)国際リニアコライダーの候補地を岩手を中心とした北上山地と九州の脊振山地の二つで争っている。(建設費は)総額1兆円くらいかかる。岩手になる可能性もあるかもしれない。今度の選挙(の結果)が直接つながるとも言えないが、専門家が調査をしながら、しかし、最終的な候補地は政治的判断がある。岩手県にできたとしたら、ある民間シンクタンクは経済的波及効果を20兆~30兆円と言っている。

 震災復興を一日も早く達成するだけでなく、前向きにこの地域の発展のために頑張っていこうというビジョンを我々は持っている。(盛岡市内の演説で)

NHK :学術会議 ILC誘致に慎重姿勢; 8月7日 11時46分

最先端の実験施設、ILC=国際リニアコライダーの誘致について検討していた日本学術会議は、「費用負担など未確定の部分が多く、数年かけて判断すべきだ」という誘致に慎重な見解を大筋でまとめました。

この日本学術会議の見解は、誘致に乗り出すかどうか検討している国の判断にも影響を与えそうです。

ILC=国際リニアコライダーは、2020年代半ばの完成を目指して計画が進められている最先端の巨大な実験施設で、国内に建設されれば大きな経済効果が見込まれる一方、8300億円とされる建設費の半額を負担しなければなりません。

日本学術会議は国から諮問を受けて、この施設を誘致すべきかどうか、学術的な観点から検討を行ってきましたが、6日の会合で、「費用負担や研究者の受け入れなど未確定の部分が多く、誘致を進めるかどうかはこれから数年かけて改めて判断すべきだ」と誘致に慎重な見解を大筋でまとめました。

ILCを巡って国内では現在、東北の北上山地と九州の脊振山地の2か所が建設の候補地となっていて、国内の研究者でつくる会議が、今月中にもどちらかに一本化する見通しです。

しかし、今回、国から諮問を受けた日本学術会議がILCに慎重な姿勢を示したことは、誘致に乗り出すかどうか検討している国の判断にも影響を与えそうです。

時事通信 :ILC日本建設「数年検討」  =予算、人員確保に問題―学術会議  (時事通信) - 2013年8月6日(火)19:58 

 次世代の大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」を日本が中心になって建設する意義があるかについて、文部科学省から審議を依頼された日本学術会議の検討委員会は6日、今後数年かけて調査検討すべきだとの見解を大筋でまとめた。

 非公開の会合後、記者会見した家泰弘委員長(東京大教授)は「ゴーサインを出すには不確定要素がある」と指摘。「国の財政が厳しい中、基礎研究に巨額の予算をかける理解が得られるか。他の学術分野に影響する懸念もある。建設に必要な1000人規模の研究者・技術者を確保する見通しもはっきりしない」と説明した。

 ILCは国際的な物理学者グループが建設を計画。岩手、宮城両県の北上山地と福岡、佐賀両県の脊振山地が候補地に挙がっている。この検討委員会の結論にかかわらず、8月後半に選考結果が発表される見込み。

 学術会議は9月末にも文科省に審議結果を回答し、同省が建設の可否を判断する。

毎日新聞 :リニアコライダー:学術会議の検討委「誘致は時期尚早」; 毎日新聞 2013年08月06日 20時40分(最終更新 08月06日 23時55分)

 宇宙誕生の謎に迫る超大型加速器「国際リニアコライダー」(ILC)の建設を日本に誘致するかどうかについて、日本学術会議の検討委員会は6日、誘致は時期尚早とする見解を大筋でまとめた。巨額の建設費や、世界中から研究者の参加を見込める保証がないなど課題が多く、数年かけて調査した後に判断すべきだとした。

 非公開の会合後、取材に応じた委員長の家泰弘・東京大物性研究所教授が明らかにした。最終見解を12日の次回会合で示す予定。

 ILCは日米欧の科学者が進める計画で、欧州合同原子核研究所(CERN)の加速器の後継とされる。建設費は10年間で約8300億円に上り、日本の負担は半額程度となる見込み。岩手・宮城両県と佐賀・福岡両県が誘致しているが、政府は誘致を決めておらず、文部科学省が同会議に検討を依頼している。

 この日の会合では、巨額投資に国民の賛同が得られるかや、建設に必要な1000人規模の加速器研究者の参加が保証されていないことなどが指摘された。この分野の日本の研究者は300人程度で、多くを海外から呼ぶ必要があるという。家委員長は「国民の理解を得るため、今後専門家以外も入れて検討する必要がある」と話した。【野田武】