物理に関してツェルバス(P.Zerwas)が初日のプレナリ−セッションで一般的なレビユ−を行 った。リニヤ−コライダ−を電子陽電子重心系エネルギ−により(a)phase-I 300-500GeV そして (b)phase-II 1-2TeV の 二つに分類し、phase-Iはトップ、ヒッグス (特にSUSY)の物理でSSC/LHCのハドロンコライダ−と相補的であり、phase-IIはWW散乱 及び新粒子発見で対等又は競合することが強調された。この二つの種類の加速器の概念は、 我々と共通のものであり、phase-I マシ−ンとしてSSC/LHCと同時期に稼働するリニヤ コライダ−(例えば JLC-I)の必要性が広く国際的に認知されるようになった。
このワ−キンググル−プ最初の話として松井がJLCワ−キンググル−プを代表し、JLC −Iでの物理と実験装置の概念設計について発表した。 この内容はほぼWG8の結論的な もので、その詳細が書かれている我々の『JLC−I提案書』に強い興味がもたれ、その完 成後の配布の請求が多数あった。 特に松井の最後の結論である「西暦2000年までに最 小のR/Dで重心系エネルギ−300−500GeVのリニヤ−コライダ−を建設すべきで ある。」には、WG8内で多数の共感が得られ、最終日のバ−ク(D.Burke)によるサマリ− ト−クの中に『WG8の結論』として引用された。
次に、このワ−クショップのトピックスを簡単に述べる。先ず唯一の現存するリニヤ−コラ イダ−であるSLCの経験が数々の苦労話(シンクロトロン光、ミュ−オンバックグラウン ド)を交えてコザネツキ−(W.Kozanecki)とバ−クにより報告された。苦労話の多くは予想 されなかったビ−ムのテ−ルによるものであった。ここで注目されたのは通常の実験中(S LD)のビ−ムテ−ルの測定値が示されたことで、彼らの言う『1%テ−ル』がほぼ実証さ れたことである。このビ−ムテ−ルの発生機構について様々な議論があったが、未だ決定的 な説明は得られていない。しかし、最終収束系の最上流でのビ−ムのコリメ−ションの必要 性が、ビ−ムテ−ルによるバックグランドの制御の上で重要であるとの一致点は得ることが できた。 ビ−ムビ−ム衝突時に発生する電子陽電子対のQEDバックグラウンド及びミ ニジェットのQCDバックグラウンドはKEKで精力的に評価され、リニヤ−コライダ−の パラメ−タ−の最適化(偏平なビ−ム、バンチ数の増加等)と衝突点付近のマスキングによ り実験に対する影響がほぼ無視されるほど小さくできることが示された。唯一この電子陽電 子対の影響を受ける測定器はバ−テックスデテクタ−であり、ピクセルタイプのものの必要 性が強調された。ダムレル(C.Damerell)によるSLDでのピクセル(CCD)バ−テックスデ テクタ−の性能の発表はそのノイジ−な環境での他を寄せ付けない優秀性を示し強い印象を 与えた。 ミニジェットはphase-Iのリニヤ−コライダ−では無視できるが、phase-IIや高い エネルギ−の光子光子衝突器で問題となるであろう。 しかしながら、その発生機構や断面 積の評価について現在 議論が沸騰しているところで トリスタンそしてHERAでの実験結果 が待たれている。特にWG8のまとめ役の一人であるテルノフ(V.Telnov)がサマリ−ト− クの中で今迄の計算はすべて間違っておりミニジェットバックグラウンドは光子光子衝突器 でそれよりかなり少ないはずであると言い切ったのには驚かされた。
その他に、前に述べたようにリニヤ−コライダ−を用いたバライティ−ある衝突器とその興 味ある物理の提案が多数あったが、次の機会に紹介する。 このLC92で特に印象に残っ たことは、我々も含めてだれ(物理屋)もが重心系300GeVのリニヤ−コライダ−を『 SUSYヒッグスハンタ−』として言い出したことである。