第2回ATF2ミーテイングのメモ
(1) New FF optics(黒田)
トラペン、4ページ、PDF,85kb。
最初の試みとして、とにかくPantaleoのopticsをビームエネルギー1.5GeVで作ってみた。L*=1m,βy*=100μm,βx*=2mで、全長30m弱でσy=35nm,σx=45μmのIPビームサイズを得ることができた。また、エネルギーの広がりはATFビームの0.1%を仮定した。ここで、QC1の長さを40cmとしたが、その磁場の強さはそれほどでもないのでかなり短くできる。このようにビームサイズを30nmぐらいすることだけを目指すならいろいろの可能性があるので、どのような方針で進めたらよいのかの議論を行なった。目的は、JLC-1でのビームエネルギー250GeVでのoptics構築であるので、それにできるだけ近いものでなければならない。
そこで、パラメーターとして、
- (a) σx / σy = 100 (βy*=100μm,βx*=1cm )
- (b) ΔE/E< ±0.5% ( Chromaticity correction )
- (c) L* = 4m ( toleranceが最も厳しいが、この大きなL*はnew opticsの特徴の一つで
QC1のapertureが広くできbackgroundに対しては魅力的なもの。)
を用いて、Ebeam= 1.3GeV, 45GeV(SLC), 250GeVの3つのビームエネルギーに対してopticsをデザインすることになった。ここで、tunability、toleranceなど比較し、それぞれのエネルギーでの特殊なことがあるのかないのかを調べる。理想的には、ビームエネルギーでスケールしてこれらを議論できれば、ATF-2でFFTBを行なう意義はさらに大きくなる。
(2) BC1 (奥木)
トラペン、6ページ、PDF, 283kb
BC1は、L-band(1.4GHz)のRF-cavity(low and high energy at head and tail in a bunch)とchicane (compress by orbit difference)からなり、z-E位相空間での90度回転でバンチ長を数分の1にする。その後、pre-linac(reduce the energy spread)ひF-cavity,chicaneでBC2を形成し、さらにバンチ長は1/10になる。
先ず、ビームテール(ハロー)のコリメーション方法について調べた。(a)BC1に入射してくるビームのlongitudinal(z)方向のテール
dispersionの大きなchicaneでコリメーションを行なう。DRビームが±5σz, ±4σz, ±3σzのコリメーションについて評価した。BC2の出口でのテールの大きさは、それぞれについて±400μm, ±150μm, ±50μmと計算された。このとき、エネルギーの広がりはないものとした。
(b)BC1に入射してくるビームエネルギーのテール
DRビームのエネルギーの広がりは0.086%と小さいが、そのアクセプタンスが1.25%もあり、最大15σ(E)のテールを持つことができる。ただし、それはlongitudinalテールのchicaneで作るエネルギーの広がりの数分の1程度であるため同様のコリメーションはできない。したがって、BC1の直前にdispersionをつくりコリメーションを行なうものとした。その結果、±5σ, ±4σ, ±3σのエネルギーコリメーションに対して、BC2の出口でのテールの大きさは、それぞれについて±450μm, ±350μm,±250μmと計算された。
久保さんによるとlongitudinalテールによるmain linacでのemittance増大を避けるためには±5σz(すなわち、±500μm)のコリメーションが必要とのことで、それぞれ±5σのコリメーションで十分である。このときのwake fieldの影響は別途評価しなければならない。
その他の重要な問題(これらがBC1-R&Dの本題)
(A) Multi-bunch longitudinal position shift
ダンピングリング(DR)中の RF cavityに Phase modulation をかけてバンチ間の距離を一定にするという"菊池アイデア"がコメントされたが、DRでのbeam loading効果で生ずるBC1 cavity内の加速位相のズレによってバンチ間隔が乱れる。ズレの大きさはDRのRF周波数を714MHzとすると最大5mm程度である。これに対して、その周波数を357MHzに下げ入力パワーを上げ相対的にbeam loading効果を下げて対処することもできる。この場合、エネルギーアクセプタンスが増えテールを大きくするかもしれない。DRでのbeam loading効果如何に拠らずこの問題を避けるためには、位相を1度以内に制御しなければならない。したがって、BC1 cavityの位相、振幅に対するtolerance叉はそれらを積極的に制御するmodulation、そして、バンチ間隔などのモニター方法について検討することになった。
(B) Coherent radiationによるemittance増大
chicane入口で放出された放射光が出口で自身のバンチで散乱されemittanceを増大させる。デザインによりその大きさは200%から10%となる可能性がある。この増大を最少にするデザインが必要で、その実験による検証は重要である。このため、複数(少なくとも3通り)のchicaneのあるテストビームラインを設計しなければならない。全長は40m程度であろう。
(3) positron beam instability (久保)
トラペン、2ページ,PDF, 85kb
positron(e^+)ビームの放射光によって作られる電子雲の密度(ρ)をKEK-B(LER)とATFとで比較し、 ATFでのその密度を推定してみた。ρはe^+のバンチ強度(N)、エネルギー(E)、周回周波数(f_rev)に比例し、バンチの時間間隔(S_B)に反比例する。KEKBのρの評価は大見とZimmermannのシミュレーションによるもの(ρ_1, simul.)と家入のe+ビームの電子雲通過中の局所的な収束効果によるチューンシフトの測定によるもの(ρ_2, measur.)がある。また、strong head-tail instabilityの密度のしきい値(ρ^th)は、Eとシンクロトロン周波数(f_s=10/1kHz at ATF/KEKB )に比例しβ_y の平均値(<β_y>= 3.5/10m at ATF/KEKB )に反比例している。これらを一つの表にまとめると次の表になる。
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simul. measur.
Acc. N E f_rev S_B ρ_1 ρ_2 ρ^th
/単位 10^10 GeV MHz nsec 10^12 10^12 10^12
KEKB 3.1 3.5 0.5 8 1.1 - 0.53
KEKB 1.25 3.5 0.5 8 - 0.78 0.53
ATF 1.0 1.3 2.2 2.8 8 15 5.6
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表中、ATFでのρの評価値としてsimulationと測定値からのスケーリングで求めた2つ(ρ_1、ρ_2)がある。その差がこの評価法の誤差の目安を示していると思われるが、このような単純なスケーリングによる評価では、ATFでも十分にこのinstabilityが起きる可能性があるといえる。ただし、ビームパイプの構造が強く関係しているため、この直接比較には注意を要する。そこで、KEKBとは違って、放射光が直接ビームパイプをたたかない構造をしているPEPIIについても同様の評価を行ない比較してみることになった。
(4) Ground Motion (田内)
トラペン、9ページ,PDF, 560kb
一般に、地盤振動はその周波数(f)によって2つの領域に分類される。f>0.1Hzでは、f=0.2Hzの海洋のうねり、f=1〜100Hzのcultural noisesなどelastic waveでモデル化できる。この特徴はelastic waveの位相速度がわかれば2点間のcoherence、相関を0次のベッセル関数として記述できることである。この領域の地盤振動はリニアコライダーで主にビーム位置のオフセットを与える。f<0.1Hzでは、2点間の変動の2乗平均が経過した時間(T)と2点間の距離(L)に比例するというATL則に従うdiffusiveな振動でモデル化されると考えられていた。最近のLEPやSLAC(過去17年間の地盤変動)での測定によるとf<0.0001Hz (tで日変化より長い周期)では変動そのものがTに比例するsystematicな振動が支配的であることがわかってきた。また、1999年12月より2000年1月にSLC-tunnelで測定された地盤振動は上下左右両方向ともに大気圧とひじょうによい相関があることがわかった。そのスペクトラム分布などからこの大気圧の変動による地盤振動はdiffusiveであると言える。SLCのような浅いトンネルでは大気圧変動がdiffusive振動の主な原因である。このようなことから、LEPのように深いトンネルではこのように気圧変動による大きなdiffusiveな振動はひじょうに小さい、すなわち、Aは小さいと推察できる。この場合、トンネル内のcultural noisesのisolationが重要となる。diffusive/systematicな振動の低周波数領域では、ビームのemittanceの増大としての影響が問題となる。サイトに固有な地盤振動のモデルができれば、加速器のopticsによるresponse関数そしてfeedback関数とのconvolutionによってIPでのビームの安定性(emittance増大とオフセット)を計算することができる。また、逆に、安定性を得るためサイトに特有なfeedback法なども考案されなければならないであろう。実際にTESLAやNLCグループではそのようなことが行なわれている。
この議論の中で、測定に基づく『KEKモデル』と我々の計算手法の確立がぜひ必要であることが強調された。
(5)次回の日時、場所
日時:10月2日(月曜日)、午後2時より午後5時頃まで。
場所:ATF 第2コンテナ