以下、メモ(敬称略)です。ここで、Q(質問)、A(答え)、C(コメント)です。
APD-2 : 241Am (~100Bq)のXeガス(約4気圧)中、そして、22Na (100kBq)のXeガス(約4気圧)と液体キセノン中のγ線スペクトラムをAPD/MCA-K102で測定した。バイアス電圧はガスと液体でそれぞれ290-410V(4点), 300-333V(4点)に設定した。ここで、出力の飽和のバイアス電圧はそれぞれ420Vと334Vであった。データ収集時間はそれぞれ1,800秒であった。241AmのXeガス中のものはそれぞれ1つのピークを持つ分布が得られた。液体中に見られた余分の肩は見られなかった。22Naでは、線源強度が高いため、プリアンプ出力に複数のシグナルが重なるのが観測されたが、shaping(~2us)されたポストアンプ出力ではそれらの多くは分離されていた。また、ガスと液体両方で、ピークのない指数関数的減少のシグナル分布であった。241AmのXeガス中で測定された4点のピークのバイアス電圧依存性から相対ゲインを求めた。
XEMIS2シミュレーション : ピーク探索のプログラムとして、ROOTのTSpectrum(1次元)とTSpectrum2(2次元)を採用することとした。先ず、rootのsample programのpeaks2.cで基本動作を確かめた。次に、XEMIS2シミュレーションで得られた2γ事象のPMT分布を用い、TSpectrumにより1次元分布でのピークを見つけることを確かめた。TSpectrum2による2次元分布でのピークを見つけるにはパラメータの最適化等をする必要があるのがわかった。したがって、これらのプログラムのコードの詳細を理解し、2次元でのピーク探索を成功させるようにしたい。
添付のファイルでは、先ず、S8664-55の開発モデルとなったCMSグループによるAPDの試験結果のNIM論文を参照している。以下、ページごとに説明を示す。
2ページ:CMSの電磁カロリメータCsI用で4Tのソレノイド磁場中で使用可能な光センサーとして開発された。S8664-55は同じ構造のそのカタログ製品である。CMSでは、gain=50(バイアス電圧=約+330V)で使用している。このゲインはノイズの大きさと安定性から決定された。また、PIN diodeと比較して、荷電粒子が直接APDを通過し電離して得られるシグナル(測定値)に相当する厚さが5.6umと評価されている。
3ページ:窓無しAPD S10937-9390(X)の構造図で、ボンディング用のワイヤは1本である。Vincentがインターンシップで試験していたときのAPD(no.2, http://zenon.kek.jp/APD/57)は、ワイヤがチップにかなり近接した状態でAPD動作が不安定であったと思われる。また、APD no.3, no.4はこのワイヤが切断されていた。no.1とno.2は上のような接続状況であった。これらのワイヤーボンディングをやり直して、今回の試験が行われた。ただし、no.3とno.4は特性が大きく変わってしまった。試験には再びno.2を用いた。
4ページ:CMSグループによる試験結果(25℃, 420nmのLEDの連続光)でゲインのバイアス電圧と温度の依存性、Excess noise factor(F, 過剰雑音係数)のゲイン依存性を示している。過剰雑音係数はアバランシュ増幅時に生ずる統計的なゆらぎで、F=1は過剰雑音がないときに対応する。NoはAPDでの光電子数である。CMSでのゲイン設定値は50であり、そのときのFは2である。
5ページ: 241Am-NaIのシンチレーション光を照射したS8664-55の出力から測定したゲインカーブ(8ページ)を重ねた。同じような振る舞いをしている。
6ページ:ゲインのバイアス電圧依存性の指数関数係数の図に液体キセノン+241Amで得られた値, 4.7%(18ページ)を指定したとき、ゲイン値=90が得られることを示している。
7ページ:CMSグループによるもので、大きなゲインまでの測定結果をまとめたもの。ゲインが2,000くらいまで「予想通り」のものである。
8ページ:241Am-NaIのシンチレーション光を照射したS8664-55の出力から測定したゲインカーブ(5ページの元データ)。ゲインはバイアス電圧30Vのものを1として計算した。
9ページ:S8664-55のカタログデータ図から数値を読み取り、液体キセノン温度の温度-105℃でのゲインを評価した。
10ページ:S8664-55のカタログデータ図から読み取ったゲイン値を各バイアス電圧で温度の関数としてプロットし指数関数でフィットした。この指数関数の係数はCMSのNIM論文のものと比較でき、ほぼよい一致を示している。
11ページ: NIM論文からの引用で、型番は違うが同じ構造のAPDを窒素温度まで冷却して得られた結果を示している。170K, バイアス電圧=270Vでゲイン=100が得られている。
12〜15ページ: 濱西さんにより報告済の試験結果。ただし、14ページにEDIT2013で、ほぼ同じセットアップでPMTによる測定されたγ線スペクトラムを示した。
16ページ:241Amのキセノンの液体とガス中でのピーク値を用いて、バイアス電圧290Vでの値で割った相対ゲインをバイアス電圧の関数としてプロットした。ここに、温度=20℃, 60℃のカタログ値と-10℃に外挿したときのものを曲線で示した。また、290Vでのバイアス電圧依存性の指数関数係数をフィットから0.0471と求めた。測定値はカタログ値のものと同じような振る舞いを示している。
17ページ:241Am, 137Csの線源をAPDにNaI結晶(常温)と液体キセノン中で照射して測定されたPreamp出力の波高(PH)と、シンチレーション光子数, APDの立体角(アクセプタンス), APDの量子効率などからの期待値をて計算したものを表で比較した。測定値はバイアス電圧290Vでのものである。ここで、APDゲインは常温では1とし、液体キセノン中では全ページの指数関数係数の4.7%から6ページの図から90とした。立体角はAPDと線源までの距離(d)の関数で表中のように評価した。最後の二つのコラムに期待値と測定値を示した。オーダーで測定値を再現している。
18ページ: 上のように得られた「絶対」ゲインのバイアス電圧依存性をカタログ値とともにプロットした。
19〜21ページ: Advanced Photonix製のLAAPD(0.2cm2)の我々とよくにたセットアップでの液体キセノン中の試験結果。ゲイン, そして、α線源のスペクトラム,エネルギー分解能(ゲイン120)と22Na使用によるとタイミング(ゲイン605)の測定を行っている。LAAPD上の光電子数(No)をテストパルスによる較正、APDゲインから、No=2,400±100とした。これは17ページの表中の1,862と比較することができる。エネルギー分解能のバイアス電圧依存性の測定値より、過剰雑音係数 F, アンプ雑音 Ne,などのパラメータをフィットから計算している。さらに、液体キセノン中、241Amのα線の5.5MeVによるシンチレーション光子数( 5.5MeV/ 16.3eV )そして立体角度からAPDに入射する光子数の期待値と測定値を比較して、量子効率を100%と結論している。タイミングはゲインが大きいほどその分解能がよくなることを測定で示している。最高の分解能として、ゲイン605で0.9nsが測定された。
22〜23ページ: Advanced Photonix製のLAAPD(直径16mm)の試験結果(ゲインと207>Bi, 241>Am からスペクトラム)で、3mm gap, 1kV/cmの電場中の電離電子の測定結果(同様のスペクトラムと電荷収集効率)も示している。ここで、量子効率は約23%と評価している。これが100%と大きく違っている原因として、この試験の前にLAAPDが約1年間空気中に放置され、その表面に空気から水分子が吸収され、electron hole対の生成を妨げていることと説明している。
24ページ:以上のことから、液体キセノン中での我々の測定範囲として、APDゲインが約90以上の領域の比較的狭いものであることがわかった。また、大きなゲインでは、過剰雑音係数 Fが大きくなり分解能を悪くするものと思われる。そこで、ゲインが1から300程度の間での再測定を提案したい。バイアス電圧の領域は20〜320Vである。線源として241Am (α線)を用い、そのピークからゲインとエネルギー分解をバイアス電圧の関数として測定すること、量子効率の評価を行いたい。そのため、feedbackコンデンサーの容量を0.1pFとし、APDとα線源までの距離もできるだけ精度良く測定することを提案したい。
Subatechから、XEMIS2のクライオスタットの図面が送られてきた。それを日本の会社に示し、見積を取ることを手配した。日本、欧州の数社からの見積を比較して製造を進めるとのことである。ユーロ高で日本の会社に有利かもしれない。
次回、7/25(金)午後1時30分, 1号館1階談話室1の予定。
以上。