重点レビュー:液体TPC
1)新外部レビュア:柴村 英道氏(埼玉県立大)をお迎えした。
2)キセノンTPC(田内):
前回までの状況を簡単にレビューした後、最近の進展が報告された。
前回のレビュー提言に基づき、4x4パッドのTPCの構築による
概念実証(第2実験と呼んでいる)の完成を目指している。4チャンネル
版である第一実験で確立したノウハウの拡張で4cmドリフトも狙う。
アノード直前のグリッドも取り付けた。100ミクロン径SUSワイヤの
メッシュでピッチは410ミクロン、開口率50。
低温側にJFET,feed back capacitor/resistor, test pulse 入力
などが実装されたハイブリッドとそのマザーカードが置かれる。PMT
2本が側部からシンチ光を捉える構成。MEGからの情報により新たに
ゲッターポンプを装備したことで純化速度の向上が見込まれる。
3月下旬より新システムでの運転を開始したが、電荷信号を観測
することができない。テスト信号入力での応答も理解できないもの
があり、ガス状態でのコミッション二ングからやり直すことにする。
本来150MΩあるはずのfeed back resistanceなども外部から確認
できなくなっている。NIM-16chプリアンプの発振対策も行っている。
PMTによるシンチ光の確認(ガス)はできており、カソードーグリッド
間のドリフト、グリッドーアノード間の加速時に電場に依存した発光が
あるようだ。
- A)エレクトロニクスにおけるトリビアルな問題(不良、部品故障など)
を解決することはもちろんであるが、エレキ手法の確立に向けてのステップを
着実に固めてもらいたい。
- B)定量的な純度モニターの確立は初期から指摘されていることであるが、
いまだ実現していない。真空ビルドアップ試験の結果は、不純物除去の
レベルアップとは必ずしもいえない(ゲッターの排気は効いている?)
- C)ドリフト空間での発光はガス中でならあり得る電場強度かも知れない。
まずドリフト速度が文献にあるものとconsistentか確認せよ。電子のドリフト
による衝突、励起、発光の過程についても文献を当たること。
- D)今年度のタイムラインが示されていないのは不満である。予算の中で
エンドプレートの予算を認めているが、今年度の計画として必要なのか
現段階では疑問である。
3)アルゴンTPC(丸山):
牧(KEK)、岩手大などの新戦力。
KEK主力は、秋の250Lビームテスト(J-Parc, K1.1)準備に向けて動いている。
0.4x0.76m^2の読み出しプレーンでの検出器を運用する。
(ビーム側有効径は0.4x0.4 m^2)
9x9x9.5cm^3のチェンバーで純度測定を行う。アノード/カソード信号比と
ドリフト時間から不純物濃度を推定。テストチャージはキセノンランプによる
光電子をカソードにて発生。
純化装置について、改良。液化ヘッドがクライオスタットガスに接しない
設計思想である。
大型チェンバーではこれまでに試していない40kV の高電圧印可が必要。
フィードスルーなどの検討が必要。
2相動作用大型のTHGEMによる読み出しプレーンを製作(ETHZ)、COMPASSで実績。
LEMを使った3LによるCERNでのテスト実験ではgain=27でS/N>100。
シンチレーション光(128nm)についても研究を行うため、MEG用PMT改良版を入手、
WLS(TPB)でカバーをしてテストをした。フィルム状とPMTガラスに直接塗布した
ものを作成。宇宙線による信号をいづれからも確認した。QEなどの絶対評価はこれから。
早稲田大学での基礎研究の準備も整いつつある。10x10x5.4 cm^3の一相式、GEM
基礎特性測定容器、シンチレーション光試験セットアップなど。
- A)不純物モニターでカソード・アノード・エレキ系の校正は?
特にポーラリティが違うときは注意が必要。
- B)液体アルゴン温度超のモリキュラーシーブを前段につけて、液化器以前に
不純物を吸着するのはどうか?
- C)光センサーグループでは、紫外領域拡張可能な光源をセットアップしつつあり
WLS付PMTのQE測定に役立つかも知れない。WLSやそのバインダー剤などからの
アウトガスは大丈夫か?
- D)早稲田のGEM研究では、MPGDグループの基礎班での交流が有効かも知れない。是非
参加してもらいたい。2次元アノードなどについても類似の開発研究が進んでいる。