5th October, 2001

久々の結果三昧。

 

(1) Helix Track Fitterを作る

…予定であったが、時間がないので、JSFに用意されていたTrackFitterを使わせてもらった。(宮本先生作 JSFHelicalTrackを使用)正しく動いてくれているようなので、当面はこのまま使わせてもらうことにする。(おいおい自分で書かねばならないが)

(2) KappaのResidual分布(Ptの関数、cosThetaの関数として)

Kappa = q/Pt として、KappaのResidual分布を見た。Kappaは運動量の逆数なので、KappaのResidualはTrackの半径方向の位置の誤差のようなものである(mv/r = qBより、q/P = r/B、運動量の逆数は半径rに比例)。Multiple ScatteringはON、Two-Track Separationは2mmの場合で、赤がIP constraint OFF 、青がIP constraintをONにしたものであり(※)、いずれも上段が横軸Pt、下段が横軸cosThetaである。Ptの関数としてみた場合、Multiple Scatteringの効果でPtが小さいところでResidual分布の幅が広くなるのが見える。cosThetaで見ると、cosThetaが1に近いところ(TrackがほぼZ軸に平行に走る場合)では、Hit点の数(サンプリング数)が減るため、Residualが大きくなる。また、IP constraintを入れると、若干Residualの幅が狭くなっているように見える。

(※)IP constraintをONにするとは、BeamのInteraction Point (ビーム衝突点)をTrackが必ず通る、という条件を付加すること。Linear Colliderでは、衝突点のr-phi方向の切り口は十分小さいため、Trackのr-phi射影を考える限りInteraction Pointは十分な精度で決まっていると考えてよい。

(IP constraint OFFのPSfileはこちら、ONのPSfileはこちら

 

(2) Sigma KappaのPT依存(Multiple Scattering OFF)

KappaのResidual分布の幅(Sigma Kappa)を、Ptの関数で見た。理想的には、Multiple ScatteringとEnergy Losがなければ、Trackは完全な円を描くことになるので、Sigma Kappaの大きさはPtに依存せず、かつTrack Findingが完璧であれば、Hit点がいくつ消えようがSigma Kappaに差は生じないはずである。しかし結果を見るとTwo-Track Separationの値の違いによる差は見えないものの、Ptの低いところは若干Sigma Kappaが大きくなってしまっている。Geant4側でMultiple ScatteringとEnergy LosをOFFにするのが面倒だったので、GasとSense WireのMaterialを非常に希薄な空気にしたのが原因か、ほかに原因があるのか、つきとめる必要がある。(Geant4の仕様により、完全な真空は作れない。)

また、IP constraintをいれるとPtが低いところでSigma Kappaが大きくなるが、その理由についてはまだちゃんと理解していないので調べておくこと。

IP Constraint OFFのPSfileはこちら、ONのPSfileはこちら

 

(3) Sigma KappaのPT依存(Multiple Scattering ON)

結果は下の通り。今度はMultiple ScatteringとEnergy LosがあるためTrackは完全な円弧にならず、従ってHit点がarmを失うような形で抜け落ちると(CDCの外側もしくは内側のHitが集中的に消えると)、Sigma Kappaの大きさに影響を及ぼすはずである。IP constraintがOFFの左図では、確かにTwo-Track Separation が2mmの場合には、Hitが全て生き残った場合(Two-Track Separation 0mmの場合)に比べSigma Kappaは大きいと見える。(CDCの内側の点が集中的に欠けるため。9/19のDiaryを見よ。)

これに対し、IP constraintを入れると、欠けた内側の点がInteraction Point で補われるため、欠けたarmが回復する。(実際の実験では、いくらなんでもIPの1点だけでarmを回復するのは横暴であるので、内側の検出器(VTXなど)のTrackと繋ぐと、IP constraintを課すのとほぼ同じ効果が得られることが経験的に分かっている。)右図はIP constraintを入れたものであり、Two-Track Separationの値による差はみられないことがわかる。

IP Constraint OFFのPSfileはこちら、ONのPSfileはこちら

もっとも興味があるのは、Two-Track Separation が2mmの場合でも(つまりいくらかHitを失っても)、IP constraintを入れることで、Sigma Kappaの悪化を食い止めることができるか否かである。下図は、IP constraintがOFFの場合とONの場合について、Two-Track Separationが2mmの場合と0mmの場合をplotしたものである。これによると、IP constraint を入れれば、Two-Track Separationが2mmの場合のSigma Kappaは、まったくHitを失わなかった場合と同等の結果になると言える。

PSfileはこちら


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