2001年7月16日

JLC-CAL Meeting Memo

日時 ; 7月13日(金) 13:30-17:30
場所 ; 筑波大 D411室
参加者 ; 川越氏(神戸大)、梶野氏(甲南大)、竹下氏、斉藤氏(信州大)、
    金氏、石澤氏、中田氏、藤本氏、関口氏、山田氏、清水氏、近藤氏(筑波大)、
    宮田氏(新潟大)、藤井(KEK)


1)各大学等の活動報告+今年度の方針

  a) 神戸甲南連合
   ・ 引き続き光検出器のスタディを行う。
   ・ 神戸・甲南とも学生の確保が出来なかった。このため今年度はまだ報告するような活動は
    行なえていない。
   ・ 神戸は9月頃から川越氏がスタディを再開する。
   ・ 甲南は未定。機会、面白いテーマがあればやりたいが、現状では人がいない。
   ・ このような事情に鑑み、今年度の活動項目は絞り込む。

     i) 第1優先はEBCCDとする。デバイス、読み出し系とも動いている。
      ファイバーを用いたテストを考えるが、ファイバー測定器を作る場合予算措置が必要。
      ==> EBCCDでテストしなければならないのは、微弱光量に対するS/Nと、ヒットの
        クラスタリング・パターン識別である。ともに数本の光ファイバーから微弱光を入射
        することでテストできる。従ってそれほどの金額にはならないのではないか?

     ii) 61ch-HPD;デバイス、読み出し回路とも持っているが、人手の関係でスタディ項目と
      しての優先順位は下げる。他の大学でやれるところがあればやって欲しい。
      未確定ながらBESS実験でHPDを使うという計画があり、この関係で学生がスタディを
      始める可能性もある。

     iii) High-Gain APD ( for CMS )
      これについては既に信州大でも直付SHmaxに使うべく情報収集を始めている。
      これがいかなるものであるか、若干藤井及び竹下氏が説明した。
      ・ハマホトがCMSのEMCAL読み出し用に作っているAPDで、市販カタログには
       載っていない。サイズは5mm x 5mm
      ・ハマホトではgain=100での使用を推奨しているが、CMS独自のテストでは420Vで
       gain=3000を得ている。但し定常的に得られているのかパイロットデータなのかは不明。
      ・竹下氏がコンタクトしたところ、テストするのであれば出しても良いと思うが
       上司と相談する、と言われた。その後の返事はまだない。

      議論の結果、神戸甲南グループのマンパワーが足りないので、既にコンタクトを
      始めている信州大スタディをする、ということにした。


  b) 信州大
   i) まず竹下氏が現状の概略を説明した。
    ・ハマホトC5460 (d=5mm, gain=30@140V, \5000)
     1cm x 1cm x 20cm のシンチ某に直付けしてテストしたが信号は見えなかった。
     beta線が直接APDに入射するようにあてれば信号が見える。
     この結果とノイズが5mVあることから、ゲインが1500あれば信号が見えるはず。
    ・ Advanced PhotonixのAPDをこれからテストする。
     d=5mmと10mmの二個あり、ともにgain=200@1800V。
    ・前出のハマホトのhigh-gain APDは今入手すべく交渉中。有望だが値段が不明。
      ==>CMSが30万個も使う事から考えて、1個1万円以上するとは思えない。
    ・来年度にビームテストをするつもりでスタディを進める。

   ii) 斉藤氏からSi-直付けシンチストリップ型SHmaxのシミュレーションスタディについて
    報告があった。
    ・川越氏がFNALビームテスト用に作ったGEANTシミュレーションを基にしてスタディ中で、
     現在動作の確認をしている。
    ・電子のエネルギー分解能は28%+4%。定数項が大きいがチューニングの問題であって
     プログラムとしては動いていると思う。
    ・位置分解能は0.5cm@1GeV-->0.1cm@100GeV。これも妥当。
    ・エネルギーデポジットフラクションの結果は不自然。議論の結果PSDとSHmaxの結果を
     足し上げてプロットしていた事が判明。PSDだけで作り直す。
    ・動作確認が終わったら特性のシミュレーションに移る。これについては以下のような
     リクエストがあった。
       光子統計を組み込んで位置分解能を求める。
       シャワーの横プロファイル等を見て、e/pi識別、gamma/pi0識別を試みる。


  c) 筑波大
    i) 石澤氏「Simulation Studies of JLCSIM」;トラペンのコピーが配布された。
     ・学会発表になるスタディである。
     ・リニアリティを求めた。1-250GeVで+-0.3%。特に低エネルギーでずれが大きい。
      ==> ハドロン反応の構造が見えているのか?
        YES。乱数シードを変えても再現するので構造である。
      ==> エネルギーを少し変えて見れば構造かどうかはっきりする。だだし今後の解析に
        影響するレベルでは無いので、そこまでやる必要は無いだろう。
      ==> sampling fractionが3.2%と、以前のGEANT3.14の結果に比べ随分大きい。 
     ・エネルギー分解能を求めた。電子で16.6%+0.6%、pionで43.3%+6.1%。
      pionの定数項が依然大き過ぎるが、他は妥当な値である。
      ==> pionの定数項はシャワーの後方リークか?だとしたら50GeVから250GeVまで
        きれいにリニアなのは不自然ではないか?
        「20%位後方リークがある」という石澤氏のコメントで紛糾したが、その
        シミュレーションをしたバージョンと現在のバージョンが同一かどうか
        断言出来ず、結論は繰り越し。
        GHEISHA自体の問題であれば、石澤氏の守備範囲外である。
     ・ e/pi比は全エネルギー平均で0.988と、ほぼ1になった。
     ・縦シャワープロファイルをフィットして、パラメータをFNALのビームテストと比べた。
     ・EMクラスタリングのアルゴリズムを作っている。横分布の広がりから、3x3に限定した。
      ==> EMクラスタを作るときにその後方のハドロンセルを見ないと、ハドロンシャワーの
        頭だけを切り出してEMクラスタに仕上げてしまう場合がある。


    ii) 中田氏「奥行き方向のシャワーの揺らぎの研究」;トラペンのコピーが配布された。
     ・ 学会発表になるスタディである。
     ・ これまでのスタディではハドロンシャワーの揺らぎを対角化することが出来なかった。
      今回、ハドロン中のEM成分を抽出し、ハドロン成分と分離することを試みた。
     ・ 抽出の条件は狭い範囲(5superlayer)に大きなエネルギー(全エネルギーの20%以上)を落とす事。
      抽出された5superlayersの信号をパラメタフィットした。シャワーの開始位置もフリー
      パラメタとした。これらの条件の最適化はまだしていない。
     ・ EM成分がないのにEM成分を作ってしまう事がある。
     ・ 電子シャワーの開始位置は0.65Xoのばらつきをもつ。妥当であろう。またシャワー形状
      のパラメタは相関を持つガウス分布になった。
     ・ パイオンシャワーの中での電子シャワーの開始位置はexponentialで減衰する。これも
      妥当であろう。またシャワー形状のパラメタは、ガウス分布にはならなかった。
      ==> 全体として有望ではないか。
      ==> 5superlayersは4でも良いのではないか?
      ==> シミュレーションの結果に適用して、チェックしてみるのが良い。


    iii) 藤本氏「ストリップ型シンチレータの光量の一様性の測定」;トラペンのコピーが配布された。
     ・前回はbeta線での測定結果を報告した。今回はより精度を上げるべく、宇宙線とトラッキング
      チェンバーを用いた測定系を構築中である。
     ・宇宙線の頻度は、1ストリップあたり1900/dayと計算される。これからストリップを
      0.5mm x 2cm のメッシュで測定するには、60events/monthの時間が必要である。
     ・全部で9種類のストリップを測定する。1回の測定で3枚測定できる。
     ・既にフレームの発注はしてある。納品され次第作業に入る。
      ==> イベント数の評価に用いた立体角は広いか?
        10cm/60cmなのでほぼ垂直入射のみである。
      ==> 幅方向のメッシュが0.5mmと非常に小さいのは?
        WLSファイバー付近のレスポンスを見るため。

    iv) 関口氏「細分割電磁カロリメータのためのストリップ型シンチレータの応答の
         シミュレーションモデル」;トラペンのコピーが配布された。
     ・シンチレータストリップにWLSファイバーを埋め込んだジオメトリで、シンチの発光から
      PMTへの到達にいたるRay-Traceシミュレーションをデザイン中。まだコーディングは
      始めていない。
      ==> theta方向の生成方法がcos(theta)ではなくthetaで一様にしているのは誤り。
      ==> あらかじめ光子の伝搬距離を決めてしまうやり方の妥当性について議論があった。
        誤りではなかろうという事になった。
      ==> 反射のさせ方については、第1にはシンチ/空気境界面での全反射として良い。
        ペイント面(4辺)のみ乱反射。
      ==> ファイバーに吸収される確率を計算する式について、なぜそうなるのか分からない
        との意見があった。もとの論文を読むべし。
        関口様;原著論文の番号をメールで回してください。

                ==> 藤原郁夫氏「タイル/ファイバーカロリメータの光学的基礎特性」(平成4年)


  d) 新潟大
     ・ アリスタ氏がGEANT4を用いてEM/Hadronのシャワーシミュレーションをしている。
      9月3日までは日本語教室のため新潟を離れることは出来ない。
     ・ 宮田氏は大面積半導体のR&Dをしている。


  e) KEK
    藤井から鉛合金の強度試験の現状報告があった。
     ・ JIS-14B号試験片を製作し、降伏点・ヤング率を測定している。製作サンプルは以下の通り。
     各組成で10個づつ作り、そのうち冒頭4種の3個づつを測定した。
       Ca 0.073% + Sn 0.0%
       Ca 0.060% + Sn 0.29%
       Ca 0.12% + Sn 0.0%
       Ca 0.10% + Sn 0.52%
       Ca 0.10% + Sn 0.7%
       Ca 0.10% + Sn 1.0%
       Sb 4.0%
       純鉛(比較用)
       鋼(比較・較正用)
     ・ 目標は破断強度が大きく、ヤング率が大きく、弾性限界が高いこと。まだ構造体計算をして
      いないので、数値的目標値は持っていない。暫定的に銅(CMSのHCAL)を目標にしている。
     ・ 装置のたわみ(鋼測定で較正)は0.065mm/kNである。以下の測定値はこれで補正済み。
                   ヤング率  降伏点
       Ca 0.073% + Sn 0.0%    9GPa   30MPa
       Ca 0.12%  + Sn 0.0%    11GPa   38MPa
       Ca 0.060% + Sn 0.29%  12GPa   45MPa
       Ca 0.10%  + Sn 0.52%   13GPa   48MPa
     ・ 強くする処理として、熱処理と機械処理を試みた。
       熱処理(280Cでの焼き入れ、焼き鈍し);ヤング率変わらず。降伏点は弱化。
       機械処理(一度引き延ばした試料を再測定);ヤング率は21GPaへ。降伏点は変わらず。
     ・ まだサンプル数が少ないので統計を増やす。また未測定の試料の測定も進める。
     ・ Sb入りのサンプルについては熱処理で強度が上がるという文献データがある。追試する。


2)今年度の活動計画

   今年度の予算金額  	通常予算     700万円
              共同開発研究予算 150万円

A) 神戸甲南連合
  ・EBCCD ................................ 優先的に行なう
   単体での読み出しテスト及びファイバーからの光の読み出しテストを行なう。
  ・61ch-Multipixel HPD ............. 行なわない。他の大学で希望があればやって欲しい。
  ・High-Gain APD ( for CMS ) .... 行なわない。(信州大で行なう。)

  デバイス・読み出し回路はそろっているので、必要予算はファイバー分+α程度。

B) 信州大学
  ・ Si-直付シンチストリップ型シャワーマックスについて、引き続き浜松APD、
   Advanced Photonix APD等のhigh-gain APDのテストを行なう。
  ・ シンチ光量増加のためのクラッド・反射材については、上記浜松high-gain APDがうまく行きそう
   なので必要ないだろう。浜松high-gain APDでも駄目だった時に考える。
  ・ 来年度ビームテストを行なうつもりでスタディを進める。
  ・ 引き続きシミュレーションを進める。

  必要予算は当面APD数種分程度。スタディがうまく行った時はアレイを構築する分の予算が必要。

C) 筑波大学
  i) シンチストリップ型EMCの
   ・ シンチの光量・一様性のベンチテストを進める。機械加工したシンチで行なう。
    キャストしたシンチは行なわない。
   ・ レスポンスのシミュレーションスタディを引き続き進める。
   来年度にビームテストを行なうつもりで進める。
  ii) クラスタリング等の解析アルゴリズムのスタディを引き続き進める。(KEKと連携)
  iii) ハドロンシャワープロファイルのパラメータ化のスタディを引き続き進める。

  必要予算は当面テストベンチ費用+シンチストリップ数種分程度。
  スタディがうまく行った時はEMテストモジュールを構築する分の予算が必要。
     
D) 新潟大学
  i) EMC用の小さく薄いタイル(従来通りの四角で4cmx4cmx1mm厚程度)について
   シンチの光量・一様性のベンチテストを行なう。
   当面機械加工したシンチで行なう。これが軌道に乗った段階でキャストしたシンチについて考える。
  ii) レスポンス・解析のシミュレーションスタディを引き続き進める。

E) KEK
  i) 高強度鉛合金の試作・試験を引き続き進める。
  ii) クラスタリング等の解析アルゴリズムのスタディを行なう。(筑波と連携)
  iii) 従来通りの四角タイルのキャスト製法を検討する。

現時点では大きな予算を必要とするのは鉛試作くらい。スタディが順調に進めば、
ビームテストに向けた試作、量産に取りかかる費用が必要になる。
===> 後半で再検討する。



3)その他
  A) 学会発表と参加者
   発表は石澤氏と中田氏のみ。
   参加確定は金氏と梶野氏のみ。学会でのミーティングは無し。

  B) 来年度から特定[A](代表金氏)がスタートする。
   計画研究はCDF,Belleなど現在進行中のもの。公募研究は次世代加速器実験のための測定器開発。
   年間5000万円x4年を年間60件程度で分ける。8月に募集がある。皆さん応募しましょう。

  C) 次回のミーティング
   9月3日の週に行なう(決定)。場所の第1候補は新潟大(案)。
   各大学は9月3日の週の可不可日リストを下さい。