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W/Z の物理

軽いヒッグスが無いと確実に結論できれば、そのこと自体に大きな意味がある。 それは超対称性および GUT のシナリオの死を意味するからである。 この場合には、強い相互作用をするヒッグスセクターのシナリオ、 あるいは複合粒子のシナリオが有力となる。 ここで重要なことは、W/Z の縦波成分のみが複合粒子(テクニカラー)なのか、 横波成分も複合粒子なのかという問題である。 この問題に答えるには、ゲージボソンの自己相互作用を徹底的に調べる必要がある。

図-22 に 500 GeV($30 {\rm fb}^{-1}$)で、 W/Z を含むいろいろな反応から得られる異常結合に対する制限を示す。

 
Figure 22:  JLC で期待されるゲージボソンの自己相互作用の異常に対する制限
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\epsfig {file=panf/wz/all.comp.ldkg.eps,width=6cm}
}\end{figure}

JLC では、多くの独立な反応を用いた、いろいろな角度からの 異常結合に対する精密測定が出来ることが分かる。

図-23 では、 将来のいろいろな加速器実験から期待される異常結合に対する制限を比較している。

 
Figure 23:  いろいろな加速器から得られると期待される ゲージボソンの自己相互作用の異常に対する制限の比較
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\epsfig {file=panf/wz/compmachine.eps,width=6cm}
}\end{figure}

ハドロンコライダーでは 異常磁気能率 $\Delta \kappa$ に対する制限が得られにくいこと、 また、偏極電子ビームが重要な役割を果たすことが特徴的である。 ここで得られる制限は LEP-II より1桁以上精度が高く、 標準理論から予想される量子補正と同程度のものである。 従って、さらに統計を上げて W 対生成を精密に測ると、 現在 LEP で行なわれているように、 量子補正を通じて高いエネルギースケールの物理を探ることが可能となる。

これらの精密測定が全て標準理論を支持するものであれば(最悪の場合)、 次になすべきことは標準理論のヒッグスがどこにあるかをはっきりさせることである。 この事態は、現在の LEP の状況と良く似ている。 しかし、その精度は格段に向上する。 JLC では、次節で示すとおり、トップクォークが実際に生成され、 その質量は 500 MeV 以下の精度で測定されている。 一方、W 質量(または $\sin^2\theta_W$)決定の統計精度は LEP-II と比較して 1 桁以上向上し、約 20 MeV で決まる。 図-24にトップ質量の精度とヒッグス質量の関係を示す。

 
Figure 24:  トップとヒッグスの質量平面での制限
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\epsfig {file=panf/wz/mtmh.eps,width=6cm}
}\end{figure}

この図からトップ質量の精密測定が極めて重要であることが分かる。 また、ヒッグス質量に対する制限をヒッグス質量の関数として表すと、 図-25が得られる。

 
Figure 25:  ヒッグスの質量の関数で表したヒッグス質量の予言精度
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\epsfig {file=panf/wz/mhdmh.eps,width=6cm}
}\end{figure}

このデータから次のエネルギーが決まる。


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Keisuke Fujii
5/2/2000